S15 Artistic Player
■双華の月 炎刻 12■
>> Real Time 4/21 11:23
温かな陽射しに目を覚ます。三日目の朝を迎えて、エルツは静かに身を起こした。
昨日の談笑は夢だったのか、ふとパーソナルブックを開くと、そこには昨日の軌跡がしっかりと残されていた。
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White Garden BBS
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ソート 更新順/投稿順/投稿者名順/レス数
ALL 新しい方三名追加です/Yumiru(01/双華/炎/11 18:25)
→エルツです、宜しくお願いします/Elz(01/双華/炎/11 18:31)
→スウィフトです、よろしくお願いします/Swift(01/双華/炎/11 18:33)
→リンスです。皆さんよろしくお願いします/Lins(01/双華/炎/11 18:33)
→ふは! よろしく!/Sneepy(01/双華/炎/11 18:37)
→団長としてYumiruをルーキー勧誘隊長に任命する/Donatello(01/双華/炎/11 18:40)
→誰が団長だって?/Sin(01/双華/炎/11 18:55)
→ごめんなさい_(@ω@)_/Donatello(01/双華/炎/11 18:58)
→Sinに顔文字で返せるのお前くらいだな/Orga(01/双華/炎/11 19:13)
→早くこっちの大陸皆連れて来なよ/Sneepy(01/双華/炎/11 19:19)
→はーい、了解しました☆/Yumiru(01/双華/炎/11 19:25)
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昨晩の楽しい夕食の席を思い出しながら身支度を済ませエルツは部屋を出た。
ロビーには皆の姿が、そこで一同は合流する。
「今日からは暫く皆さんLv上げですね」とユミル。
「Lv3になったら試練の洞窟ってとこ行けばいいんだよね。Lv3までどのくらいかかるかなぁ」
エルツは自らのステータス画面を見ながら呟いた。
「そうですね。多分皆さんまだ慣れてないと思いますし、二週間くらいはかかると思いますよ。私がそのくらいかかったので」
「二週間!?」
スウィフトが驚きを隠せない様子で言った。
「そっか、結構かかるんだね」とエルツ。
「皆さんがLv上がったら、私が試練の洞窟まで案内しますので、それまで私はこの村で勧誘でもしてようかな」そう言ってユミルは微笑んだ。
ユミルはふとチョッパーに視線をやると、にこやかにエルツ達に一つ願いを申し出た。
「あの、すみません。私ここで勧誘してるので、チョッパーの事お願いしてもいいですか? 一緒にLv上げ連れてってもらえると嬉しいんですけど」
「勿論」
快諾するエルツ達に、ユミルは笑顔で礼をした。
不安そうに姉を見つめるチョッパーの肩にそっとリンスが手をのせる。
「それじゃ、また後で」
ユミルと別れたエルツ達はいつものように、また岩蟹のスポットへ。
地道なLv上げ作業の始まりだった。
晴れた青空の元、熱心に岩蟹と格闘するエルツ達の姿。
戦っては休み、休んでは戦い、気づけば日も真上に昇り、エルツ達はその陽射しから逃れるように崖下の日陰に身を隠していた。
「ユミル、勧誘捗ってるかな」
エルツの言葉にチョッパーは首から提げた可愛らしい水筒の中身を口に含んだ。どうやらユミルに貰ったアイテムのようだった。
「水筒って便利だよね。どこで売ってるんだろ。エルムの道具屋には無かったからもっと先なのかな」
「熱い、汗だらだらだ。そろそろ昼にする?」とスウィフト。
「そうだね」
スウィフトの言葉にエルツ達は腰を上げた。
外気に比べて少し冷んやりとした穴道を抜けて、村に入る。一行が目指すはレミングスの酒場。女神像の前を右に、曲がるべく、進路の先に女神像を捉えたその時だった。
「何だあの人だかり」
女神像前に一列に並んだその群集に気づいたエルツは声を上げた。
群集の前にはゆっくりと二人の冒険者が歩いて素通りをして行く。どうも群集はその視線をその二人の冒険者に集めているようだった。
「なんだなんだ」
その二人の冒険者はゆっくりとエルツ達の方へとやってきた。
近づくにつれ、顕になってくる二人の姿。その装備からして二人が只者ならぬ気配を発している事にエルツは気づいた。
無言で通り過ぎる二人。だが、片割れの男と一瞬エルツは視線を交えていた。
過ぎ去った二人の姿にエルツは振り返り、そして通り過ぎてゆく彼等の後ろ姿を追う。
トンネルを抜けながら、もう片割れの女が男に問う。
「どうしたの」
「いや、久々に新鮮な眼差しだと思ってね」
それを聞いて女はふっと笑う。
「今更、人目が気になるあなたじゃないでしょ。それとも何かあのプレイヤーに感じるものがあったの?」
「さぁ、ただ懐かしくてね」
「懐かしい?」
男はそう言ってふと微笑する。かつての自分もまた同じ眼をしていた。そんな頃合をふと思い出したからなのか、だがそれ以上の興味も感慨も無い。男にとって過去は何の意味も持ち合わせていない。だからこそそんな感情をふと抱いた事が男にとっては新鮮だった。
白く続く海岸線の彼方に消え行く二人の姿。その後を追う、無数の視線にそれから二人が振り返る事は無かった。
立ち止まってその二人の姿を追っていたエルツ達は再び前を向く。
「何だったんだろうあの人達?」
スウィフトの言葉に、エルツは暫くその場に立ち尽くしていた。
それから一行は女神像の元へ向って歩き出すと、群集の中から元気良く跳ねる一人の影が一行の元へ向って飛び跳ねてきた。
「見た見た今の!? 皆の横通ってったでしょ!」
「何が?」
当惑するエルツ達にユミルは興奮を隠し切れない様子だった。
「何って、Master GuardianのCrafisとMeltiaだよ!!」
「誰それ、有名なの?」とスウィフト。
「有名なんてもんじゃないよ、この世界のトップコミュニティの団員だよ!」
興奮するユミルの話をエルツは冷静に分析していた。
この世界に無数に存在すると言われるコミュニティ、その中でもトップに君臨すると言われているのが、そのMaster Gurdianというコミュニティなのだろう。そのコミュニティに所属している団員が先程通ったあの二人だと、そういう事か。
道端に残されたこの人だかりと先程の気配を思い出し、エルツは一人呟いた。
「やっぱり只者じゃなかったか」
隣ではスウィフトが「なんだサインでも貰っとけば良かったな」と暢気な発言をしていた。
Artistic Player[Artistic Player]、それはこの世界の誰もが憧れる地位である。どの世界においても頂点を極めた者達のその姿は並の冒険者にとっては、眩しくそして、それは一つの芸術性を秘めている。エルツにとってもそんな彼等の存在は、最も敬意を払う対象であり、目指すべき目標であった。彼等が見ている光景にはどんな世界が広がっているのか。
「追いついてみせるさ、当然、時間はかかるだろうけどね」
それは、また一つこの世界でエルツの夢が広がったそんな一瞬だった。