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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第五章 『双華祭』
167/242

 S34 【考察】VS Magician of Yellow

 光刻十九日目。長かった光夜祭もそろそろ終焉へと近づいてきていた。

 光刻の幕引きは二十五日目、つまり翌刻の初日午前0時をもって迎える。冒険者達は皆それぞれの幕引きの形を迎えるために目一杯祭刻を楽しむのだ。

 エルツはというと、相変わらずMagician of Yellowがあの時見せた行動のその検証作業を行うためにエルツはあれから幾度となくバトルフィールドへと入り浸っていた。

 その結果として、Magician of Yellowが攻勢に転じるその条件をエルツは突き止める事に成功したのだが、結局それを突き止めたところで劣勢を覆す事は出来ず苦汁を飲まされる毎日だった。

 検証結果としては敵はこちらがサンダーボルトを発生させていない状態、つまりフロート無しの状態で背を向けると攻勢に転じサンダーボルトの射程圏内まで詰め寄り雷球を放ってくる。この攻勢に転じた時の敵の動きはあのMagician of Brownの動きと非常に酷似している。

 だが、こちらが正面を向く、又はサンダーボルトの発動体勢に入ると敵は再び距離を取り、あの不自由な二択を迫る。

 結局、この検証結果を踏まえても敵も隙と呼べる穴が全く見当たらず攻略は困難を極めていた。


「何か一つ……何か有力な足掛かりがあればな」


 日中はマイルームでCITY BBSを開き毎日攻略情報を検索するも、Magician of Yellowの具体的な攻略情報は見当たらない。攻略掲示板では様々な議論が交わされているようだったが、その分析は非常に甘くあの不自由な二択を理論立てて分析している冒険者は少ないようだった。だが、結局は理論立てて敵の行動を分析したところで、攻略法が編み出せない以上は全くの無意味である。

 残された期間は今日を含めあと六日。その期間のうちになんとか敵を攻略しなければクリア報酬を手に入れる事は出来ない。


「五属性が使えるワンダーロッドか。絶対欲しいよな」


 五属性が一つの杖で扱える、その情報が本当ならばそれは脅威の性能だ。五属性の杖をそれぞれ一本一本交換して魔法を使用する事と、一つの杖で五属性の魔法を操れる事とではその意味合いは大きく異なる。通常、武器や防具の装備変更には実行してから十秒間のタイムラグがある。つまり、五属性の杖を一本一本変更した場合、そのラグの間は全く魔法が使用出来ないのだ。だが、ワンダーロッドならそんなラグを気にする事なく自由に五属性魔法を操る事が出来る。これはあくまで推測だが、一つの属性魔法を使用し再詠唱時間の待機時間に他属性の魔法を使用してその穴を埋めるといった使い方も出来るかもしれない。もしそうだとするならば、その魔法の循環効率は計り知れないものがある。


「ああ欲しいな。絶対欲しい。絶対クリアしよう。ここまで来たんだから」


 自分に言い聞かせるようにただそう言葉を吐くエルツ。

 ここで引き下がっては何のためにこの祭刻期間の多くの時間をオートマタ戦に懸けてきたのか。エルツにとってはここが正念場だった。

 合成の片手間に攻略掲示板を何気なく見流しながら溜息をつくエルツ。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 City BBS

▼攻略掲示板


ALL ●【魔法】サンダーボルトについて/Lumi(00/洸玉/雷/1 15:16)

  →Re:【魔法】サンダーボルトについて/Eric(00/洸玉/雷/1 17:23)

   →Re:【魔法】サンダーボルトについて/Malco(00/洸玉/雷/2 19:03)

    →Re:【魔法】サンダーボルトについて/Lumi(00/洸玉/雷/2 20:17)




 □投稿者 Lumi 【魔法】サンダーボルトについて


 魔法サンダーボルトについての情報板です。

 わたしが知っている限りの情報を以下に挙げさせて頂きます。


 ●直線軌道(射程3m)

 ●滞空時間(発射:10秒 フロート&ロック:30秒)

 ●フロート&ロックによって魔法エネルギーの設置が可能

 ●フロート可能数の上限を超えてフロートした場合、

  始めに発生させた魔法エネルギーから順に詠唱キャンセルがかかる

 ●発生させた魔法エネルギー同士は半径三メートル以内の距離に近づくと電流が発生


 わたしが知っている限りでは以上です。

 皆さん補足をよろしくお願いします。 


 □投稿者 Eric Re:【魔法】サンダーボルトについて


 リンクについての補足ですが、電流が発生するのは他人が発生させた魔法エネルギーとの間にも適用されます。つまり他人がフロートした雷球に対して自らのサンダーボルトをリンクさせる事が可能という事です。


 □投稿者 Malco Re:【魔法】サンダーボルトについて


 フロートの上限数についてはLv10から2個となります。一応書いて無かったので。


 □投稿者 Lumi Re:【魔法】サンダーボルトについて


 >Ericさん


 書き込みありがとうございました。

 他人の雷球に対してリンクさせられるなんて知りませんでした。

 貴重な情報ありがとうございました!


 >Malcoさん

 補足感謝いたします!


 皆様ほかにも補足がありましたらどんどんよろしくお願いします!


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 虚ろな視線をページに向けながらふと呟きを漏らす。


「へぇ、サンダーボルトって他人のフロートした魔法エネルギーともリンクするんだ」


 何気ない自らの一言に思考が停止する。

 窓から吹き込む潮風に髪をなびくその一瞬の間。


「ちょっと待てよ……今すごい事言わなかったか自分」


 思いも掛けないその事実に顔を上げるエルツ。


「これって……めちゃめちゃ重要な情報じゃないか。何で今までこんな情報見逃してたんだ」


 他人のフロートした魔法エネルギーともサンダーボルトはリンク現象を引き起こす。

 もしこれが本当なら、エルツが取れる戦略にも再考の余地がある。何故ならMagician of Yellowがフロートしたエネルギーに対してサンダーボルトをリンクさせる事が出来るからだ。


「もしかしたらこれであの不自由な二択が打開出来るかも」


 それは希望の表れなのか。窓を通して差し込む陽光を受けて輝きを帯びるその表情。

 突然開けた希望に一瞬胸の高揚を覚えたエルツだったが、暫くの考察を踏んで再びエルツは肩を落とす事になる。


「よくよく考えてみれば敵は不自由な二択の時に動かないんだから、フロートした点に対していくらリンクの動点を取ってみたところで有効なラインなんてどこにも存在しないか。結局は相手を射程圏内に捉えるために踏み込まないといけないわけだけど、それじゃ敵のリンク攻撃の餌食になるだけだしな」


 光明だと見えたその道は錯覚だったのか。

 悩めるエルツはその日も一人悶々とした日中を過ごすのだった。


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