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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第五章 『双華祭』
163/242

 S30 VS Magician of Green★Take10

 相対するのはこれで何度目になるだろうか。エルツの記憶が正しければこれで十回目になる。

 加速する宇宙空間の中で始動し始めるオートマタの姿を見つめながらエルツはジュダが呟いたあの対直線という言葉を未だに考え続けていた。

 

――対直線……そこに一体何が隠されてるんだ?――


 前傾姿勢から起き上がりオートマタと視線を合わせるエルツ。

 解き放たれたオートマタはその途端にエルツから大きく距離を取るように走り始める。その光景は今までに幾度と無く目にしている。こうなったオートマタを追っても無意味であるという事をエルツは先の戦いから理解していた。追えば追うほど縦横無尽に走り回るその足運びはそうそう捉えられるものではない。加えて敵の敏捷力はこちらより高い数値が割り振られているらしく、よって逃げ走るスピードはこちらより上なのだ。その事を理解した上でエルツはただ逃げ回る敵のその姿をじっと見守る他無かった。

 そして、十分な距離を取ったオートマタはエルツに見守られる中、次の行動に出る。緑色に輝くロッドを振り上げたオートマタの姿。振り下ろされたロッドが孤の動きを描いたその瞬間、エルツは咄嗟に身体を大きく左へ流す。同時に身体の右側を掠めて行く突風。目に見えないその真空の刃の存在に気を取られている間はない。油断していれば次の攻撃は免れない。


「Air Cutter……目に見えない真空の刃か。本当に厄介な魔法作ったもんだよな」


 そう呟きながら次々と繰り出される真空の刃をかわして行くエルツ。

 何故、目に見えない刃をエルツは避ける事が出来るのか。その鍵はオートマタがロッドを振り下ろした際に発生する緑色の軌跡にある。ロッドの先端に付けられた属性鉱石は揺さぶられた際に光の残像を生むのだ。その軌跡を見る事で、視覚的に捉える事の出来ない真空の刃の形を想像する事が出来る。縦に振り下ろした軌跡ならば縦方向の真空刃が、横に振られた軌跡ならば横薙ぎの真空刃が軌跡を確認した直後には放たれる事になる。


「このまま避けててもらちが明かないか。かといっても接近する事も出来ない」


 ならばこちらも遠距離から真空刃を撃って対抗するか。

 敵の攻撃を掻い潜りながら、エルツは身体を左へと流しロッドを振り印言を唱える。


「Air Cutter!」


 緑色の軌跡と共に放たれた真空刃に対し、オートマタはひらりと右に身体を流し攻撃を回避する。


――ダメだ、遠距離から撃ってもああやって避けられる――


 やはり為す術が無いように思われるこの戦闘において、エルツは必死に思索を巡らせる。

 何か方法があるはずなんだ。攻略の方法が。四方八方を塞がれたように思えるこの状況においても、何か一つの鍵に気づく事が出来ればそれが勝機へと繋がるはず。先のオートマタ戦についてもそうして勝利を収めてきたじゃないか。


「こうなったら破れかぶれだ。あたって砕けるか」


 明らかに愚策と分かっていてもこのまま為す術なくやられるのは癪だ。

 そうしてエルツが敵の真空刃を避けて身体を右に流し無謀な突撃を試みようとしたその時だった。

 今まで幾度となく見てきた敵の動きの中に何か違和感を覚えたエルツ。その原因を走り回りながら探りエルツはその違和感の中心となっている言葉の存在に気づいた。


――対直線――


 そう、それは対直線というその言葉。幾度となく目の当たりにしてきた敵の無機質な動きの中にも一定の法則があるとジュダは言った。その法則とは一体何なのか。


「そうだ……対直線だ」


 真空刃を避けてエルツが身体を右に流した時、魔法陣の端でその様子を窺がっていたオートマタは左へと身を流した。エルツが逆に左へ身体を流した時、オートマタは右へと身体を流す。これが何を指し示しているのか。

 頭の中で瞬間的に上空から捉えたこの立ち位置の構図をイメージする。すると両者の相対する構図に一つの関係性が浮かび上がってくる。両者の立ち位置は常に魔法陣の中心点を通る直線上に存在するのだ。その直線状の最大値に値する距離、つまりその直線上でエアカッターの射程距離である最長十メートルとした最大距離にオートマタは位置取っているのだった。従ってエルツが止まっていれば、その直線状の最大距離まで離れた位置にオートマタは止まる。


――そうか……そういう事か――


 頭の中に咄嗟に閃いたその一つの答えに、そこから自分の今までの行動を分析していくエルツ。それで敵の攻撃を左にかわした時は、敵は右へ。身をかわしながら攻撃を繰り出した時はその攻撃が避けられたのか。

 自らの行動を分析しながら、それをこれから取るべき立ち回りへと繋げて行くエルツ。敵がこちらの動きに対応しているならば、その性質を逆手に取ってやるまでだ。

 エルツはふとその場で立ち止まると、ロッドを振り翳し構える。オートマタはそんなエルツの様子に疑う事なく立ち止まると、停止位置から真空刃を仕掛けてくる。当然エルツがそれをかわせば敵もエルツの動きに反応して逆位置へ身を流す事になる。


――それならばだ――


 敵の避ける方向が分かっているならば攻撃を当てる方法はある。

 エルツは敵の真空刃をかわすと構えていたロッドを敵の一歩右手へ向って振り下ろす。そして、同時にエルツは左へと身体を流す。

 するとどうだろう、予測した通りオートマタは放たれた真空刃の方向へ向って自らステップインを見せる。


「よし、やった!」


 思わず声を上げて喜ぶエルツの視線の先で、真空刃の直撃を受けたオートマタは一瞬動きを止めまたすぐに攻撃を始める。

 だが、一度勝機を掴んだらエルツはそれを決して逃さない。冷静に着実に敵の攻撃をかわしながら、それをパターン化しダメージを重ねていく。

 一つのキーワードから導き出した確かな答え。


「これで最後だ」


 放たれた真空の刃が敵の姿を捉える。そして今オートマタはエルツの前に膝をつきそして敬意を礼で示す。

 姑息な戦い方だと始めは感じたが今冷静にその戦いを振り返ってみればこのオートマタもまた礼を尽くすべき相手だった。

 光の粒子となり消えて行くオートマタの姿にエルツは瞳を閉じ静かに瞑想する。これで倒したオートマタは四体となった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


〆カード名

ピエロスーツ


〆分類

防具−体


〆説明

オートマタが装備していたピエロのスーツ。装備したら何かいい事起きるかな?


〆装備効果

????????


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 このカードを入手した事で、エルツは一つの目標を達成していた。

 それは『ピエロキャップ』『ピエロスーツ』『ピエロスロップス』『ピエロブーツ』の頭・体・脚・足の四種の防具をコンプリートする事に成功したのだ。

 だがイベントクリアの何の示唆も見られない現状から戦いはまだ終わりではない。

 

――おそらくは次の戦いが最後になる――


 残す最終戦に備えてエルツは今確かな決意を胸にバトルフィールドを後にするのだった。


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