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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第五章 『双華祭』
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 S23 VS Magician of Brown★Take9

 港は相変わらず冒険者に溢れていたが、初日から数日の盛況ぶりに比べるとその勢いは少し衰えて見えた。エルツの仲間達と同様にオートマタイベントに対して飽きを見せてきたプレイヤーがこの頃になると少なからず出てきたのだろう。


「くっそ、このイベント難しいな」

「あの赤ピエロの火球どうやって避けるんだろ?」


 隣ではまだおそらく挑戦したてである冒険者達がそんな言葉を交わしていた。

 そんな会話を耳に入れながらPBを開き申し込みを済ませたエルツは、ホワイトアウトして行く世界の中で瞳を閉じただ世界の変遷を待つ。


――今日こそは勝機を見出したい――


 変遷した世界の中で待つ茶鼻のオートマタ。

 頭を垂れて静止したその姿からは想像も出来ない程、アグレッシブな動きを見せる今回の相手に対抗するにはとりあえず数をこなしてその中から勝機を探るしか方法はないだろう。今までの前二体のオートマタとの戦闘のように必ず攻略法は存在する筈だ。

 ぜんまいが視界に現れるとエルツはストーンロッドを片手に精神統一を行う。今回の敵が極端なまでに接近戦を望んでくるのには訳がある。それはストーンロッドの使用魔法であるストーンブリッツのその射程距離が三メートルと非常に短い事が起因となっているのだ。この制限のために互いにダメージを狙うにはこの三メートルという有効射程の中に入る必要がある。

 視界の中で起き上がった茶鼻のオートマタ。まずは挨拶代わりにとエルツは三メートルの至近距離に飛び込みストーンブリッツを叩き込む。振り下ろしたエルツのロッドから飛び出した直径十五センチメートル程の石弾がオートマタの肢体を捉えるのを確認すると、エルツはすかさず距離を取って離れる。先制攻撃は成功した。ここまでは問題なく順調な滑り出しだった。問題はここからだ。

 エルツが距離を取った頃、視界の中でオートマタはロッドを振り上げ二つの石弾を身体周りでフロートさせていた。この光景は赤鼻のオートマタと非常に似ている。だが、この茶鼻のオートマタが本領を発揮するのはまさにここからなのだ。

 二つの石弾をフロートさせたオートマタはエルツの姿を視認すると、一直線にエルツ目掛けて走り出す。エルツは正面から迫ってくるその機械人形のぎこちない走りを前に、ただただ右へ左へと逃げ惑う。だが足場の限られた魔法陣の中で、オートマタは冷静にエルツを追い詰めると有効射程の中へと進入し、そして走りながらエルツ目掛けてストーンブリッツを発射する。そして、この攻撃こそがプレイヤーを悩ませる恐怖の凶弾となる。

 走り込みながら放たれたその石弾をかわす事が限りなく困難なのである。仮に運良く避けられたとしても、その後に控えた二発目の石弾を確実に喰らってしまう。

 必至に身体を仰け反らせて石弾を回避しようとするエルツだったが、回避する事が出来ず二発の石弾の直撃を受け蹲る。肩と腹部に受けた重い衝撃、痛みは無いがそれはエルツの行動を縛るには充分過ぎるものだった。

 そんな身体を奮い立たせるようにして再び距離を取るエルツ。


――やられてばかりじゃダメだ! 何とか反撃しないと――


 そうして、エルツは再び石弾を二つ纏って走り込んでくる茶鼻のオートマタに向けてロッドを振り下ろす。放たれたその石弾は確実にオートマタの身体を捉えダメージを与えている筈だった。だが、オートマタは全く怯まず突進を続ける。


「くそ……効いてるのか本当に!?」


 至近距離に近づいたオートマタは再び走り込みながらエルツ目掛けて石弾を発射する。その攻撃を避け切れずにまたも直撃を受けるエルツ。ダメージによって傷んだ身体を必死に奮い立たせながら、距離を取り相手の突進に対して構えるエルツ。


――どうしたらいい……一体どうしたら?――


 気がつけば赤点滅を始めるエルツの身体。あと一撃を貰えば、エルツは地に伏せる事になる。目の前に迫り来るオートマタを前にただただ敵のターゲットを攪乱しようと右へ左へと揺さぶり逃げ惑う。だが、そんな浅慮も虚しく魔法陣の端へと追いつめられたエルツは茶鼻の放った凶弾によって崩れ落ちるのだった。

 港へと戻ったエルツは浮かない顔で一人沈んでいた。

 全く勝機の見出せない相手を前にした苦悩。だが、必ず攻略法はある。そう信じるしかなかった。


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