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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第五章 『双華祭』
148/242

 S15 VS Magician of Red★Take3

 DIFOREで待ち時間を潰していた一同は時間より少し早く店を出ていた。

 夕方六時前になると港にはたくさんの冒険者の姿が見られた。どうやら、前日の情報が回りオートマタ戦は冒険者達の間で大きな話題を呼んでいるようだった。

 人込みに揉まれながら必至の思いで魔法陣の紋様まで漕ぎ着けたエルツ達は思い思いにPBを開く。

 ジュダの指南を受け、フロートの使い方や基本的な戦術など、あの赤鼻の道化師と戦う前にやれる事はやってきた筈だった。一同は逸る気持ちを抑えながら、ちょっと緊張感を胸にイベントの開始時間を待つ。


「そろそろだな。なんか緊張するな」

「戦術さえしくじらなければ今回は何となくイケル気すんだけどな」


 エルツとケヴィンがそんな会話を交わしていたその時だった。

 地面に刻まれていた魔法陣を象っていた紋様が、真白な輝きを放ち始める。同時に、魔法陣の中心となる地面から浮き出してくる赤鼻のピエロの姿。


「始まったぞ」


 皆の緊張感が高まる中、冒険者達は皆歓声を上げ始め場が騒然とする。


「行くぜオラオラオラー!!!」


 冒険者の誰かがそう叫ぶと同時に、場から幾つかの光がピエロの身体へと吸い込まれて行く。


「皆用意いいか」


 ケヴィンの言葉に頷く一同。


「それじゃ、それぞれの健闘を祈って」

「いざ、勝負でし!」


 エルツにポンキチが言葉を重ねると同時に、一同がクリックマーカーを振る。

 僅か数秒のラグの後、白光に包まれ消えて行く一同の姿。

 真白な輝きに視界を包まれながら、エルツは頭の中で今回の戦略を振り返っていた。

 前回までの挑戦で、エルツは致命的なミスを一点犯していた。それが、ステータスポイントの振り分けである。物理攻撃型アタッカーとして活動していたエルツのステータスは今まで物理攻撃力と物理防御力に全て割り振られていた。つまり、これまでの二回は魔法戦を戦うに到って、全く無意味なステータスで戦っていたのである。そんな状態ではたとえ攻撃が成功したところで与えるダメージは高が知れている。

 移り変わった大宇宙の景色の中でエルツはPBを開き、自らのステータスの最終チェックをする。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


〆エルツ ステータス


レベル 9

経験値 ------------ 0/100

ヒットポイント ---- 140/140

スキルポイント ---- 34/34


物理攻撃力 -------- 10(+1)

物理防御力 -------- 10(+6)

魔法攻撃力 -------- 23

魔法防御力 -------- 21

敏捷力 ------------ 14


ステータス振り分けポイント----- 0

→ポイントを振り分ける

※再分配まで<0:00/24:00>



〆現在パーティに所属していません


〆装備 


武器 -------- ファイアロッド


頭 ---------- トライアルヘッド

体 ---------- トライアルスーツ

脚 ---------- トライアルトラウザ

足 ---------- トライアルブーツ

アクセサリ ---SPリジェネレイター


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 ステータスの振り分けはまず魔法攻撃力を特化するために、限界まで13Pを振り込み、また敵の魔法攻撃の魔法耐性を上げるために、残りの11Pを全て魔法防御力へと振り込んだ。

 どうやら敵にはこちらの物理攻撃を全て無効化する特殊なシールドが張られているという事前情報を入手したのだ。その代わりに敵は物理攻撃手段も持っていないという事だった。到ってシンプルな発想だが、それならばと完全に魔法関連のステータスにポイントを全て振り込む事にしたのだった。

 バトルフィールドの中央で前傾姿勢を保っているオートマタに向き合うエルツ。ちょうど視界の中ではどこからともなく空中に大きなぜんまいが現れ、オートマタの腰に吸着するところだった。

 ぜんまいが巻かれ終われば、それは戦闘開始の合図となる。エルツは緊張感に包まれながらファイアロッドを静かに掲げる。


「Fire Ball……Float!」


 エルツの宣言と共に、空中に発生した火球のフロートが成功する。


――まずは、開幕直後に一撃を叩き込む――


 開始直後に叩き込むならば、少しでも発動時間を短縮した方がヒットさせやすい。

 それならば、ぜんまいが巻かれている間にフロートしてはどうかとここへ来る前にDIFOREで皆で戦略を練っていたのだった。

 ぜんまいが巻かれ終わるまでは、オートマタは全てのダメージを無効化する。巻かれ終わった直後からが勝負だ。

 そして、今ゆるやかに巻かれ終わったぜんまいがオートマタの腰から離れ空中に光の粒子となり四散して行く。


――勝負だ!――


 エルツはオートマタと視線を合わせたその瞬間、ロックして飛び先の方向を固定していた火球にロッドを振り下ろす。

 燃え盛る火球は一直線にオートマタの身体を捉え一瞬、的の身体が静止する。


「当たった!」


 喜ぶのも束の間、今度はオートマタに背を向けて一直線に走り逃げるエルツ。

 射程である八メートルラインの外まで、一目散に逃げたエルツはそこで振り向き、静かに敵の動きを観察し始める。視界の中では赤鼻の道化は二個目の火球の生成に取り組んでいるところだった。

 エルツはその生成を見つめながら自らもまた火球の生成を始める。


「Fire Ball……Float」


 現れた火球を身体周りに浮遊させながら、八メートルラインをうろつき敵の攻撃を誘導し始めるエルツ。オートマタは真っ赤なキャップを前後に揺さぶりながら、射程に入ったエルツ目掛けて火球を解き放つ。

 だが、解き放たれた火球を前にしてもエルツは冷静だった。火球の速度は時速100km程。今までと違って近射程で相対している訳ではなく、八メートルという間合いを保っている今、それを見てからかわす事はそう難しい作業ではない。それでも、油断してかわせる速度でもないが、心地よい緊張感に包まれながらエルツは一個目の火球を冷静に捌いた。

 赤鼻のオートマタはそんなエルツの様子に微塵も動揺する様子は見せずに、身体を反転させ二個目の火球を解き放つ。だが、この火球に対してもエルツは冷静に対処する。


――これなら全然対処できる――


 エルツは二個目の火球をかわすや否や、迷う事なくオートマタ目掛けて飛び込み、再びフロートしていた火球をオートマタ目掛けて正確に叩き込む。再び静止したオートマタの姿を確認すると距離を取るエルツ。

 今回は上手くいくかも、そんな雑念を必至に振り払いながら、エルツはその作業を繰り返し始める。

 あとは時間との問題だ。フロート出来る火球が一個である以上、ジュダの報告通りなら最低五回はこの作業を繰り返さなければならない事になる。一つ一つの作業を正確に、決してミスは許されない。


「絶対に倒す……!」


 それからも赤鼻の攻撃を巧みにかわしながら的確に火球を撃ちこんで行くエルツ。


「これでもくらえ!」


 そして、五度目のクリーンヒットを奪ったその時、赤鼻の動きについに変化が現れた。よろよろとよろけながら膝を着くオートマタ。それからオートマタは膝を着いたまま、まるでエルツに敬意を払うかのようにゆっくりと礼をすると、その身体が光に包まれ始めた。


「倒したのか……」


 その様子に思わず、エルツもまた倒れ消え行くオートマタに向けて辞儀をしていた。

 それは、たとえ人工的に作られた道化ではありながらも、素晴らしい戦い振りを見せてくれた相手に対する敬意の表れだった。

 粒子となってオートマタが消えた後、そこには一枚のカードが残されていた。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


〆カード名

ピエロキャップ


〆分類

防具−頭


〆説明

オートマタが装備していたピエロの帽子。装備したら何かいい事起きるかな?


〆装備効果

????????


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 エルツはそのカードを静かに受け取ると、今の戦いを振り返り、そしてだんだんと込み上げてくる喜びを素直に噛みしめ始める。

 転送され移ろいで行く周囲の景色を眺めながら、エルツは勝利の余韻に静かに浸っていた。


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