S4 カスタマイズクロース
PM4:35、マイルームへと戻ったエルツはベッドに横になりPBを開いていた。
約束の時間まであと一時間と少し。そろそろ着替えて用意しておいた方がいいだろう。もし着付けが面倒だったら、今から着替えなければ間に合わないとそう思ったのだ。
「まぁ、でも男物の着付けが面倒って事はまずないよな」
そんな事を呟きながらエルツは浴衣をクリックし装備する。何て事はない。通常装備と同様にただPB上でクリックして装備するだけだった。
肌を覆う濃紺の麻着、腰に巻かれるは少し青みを帯びた白色の角帯。面倒な着付けも無く、ボタン一つで装備を変更出来るのはこの世界の良いところだ。少し大目に時間を見たが、その必要も無かったかもしれない。エルツは洗面台で自らの姿を確認すると、再びベッドへと座り込みPBを開いた。
「随分、時間が余ったな。さて、どうするか」
自らの装備を確認していたその時、エルツは見慣れない表示にふと気づく。
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〆エルツ ステータス
レベル 9
経験値 ------------ 0/100
ヒットポイント ---- 140/140
スキルポイント ---- 34/34
物理攻撃力 -------- 23
物理防御力 -------- 21(+3)
魔法攻撃力 -------- 10
魔法防御力 -------- 10
敏捷力 ------------ 14
ステータス振り分けP----- 0
→ポイントを振り分ける
※再分配まで<0:00/24:00>
〆現在パーティに所属していません
〆装備
武器 -------- なし
頭 ---------- なし
体 ---------- 浴衣★ 【カスタマイズ】
脚 ---------- 浴衣★ 【カスタマイズ】
足 ---------- 草履
アクセサリ ---なし
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装備品として表示された浴衣には星マークが付いていた。そしてその右にはカスタマイズという見慣れない文字。
「なんだろ? このカスタマイズって」
クリックすると画面が遷移する。
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§カスタマイズ§
■浴衣
▼カラー I II III IV V Free
▼デザイン I II III IV V Free
■角帯
▼カラー I II III IV V Free
▼デザイン I II III IV V Free
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現れた内容に目を通すエルツ。
「へぇ、この色とかデザインを変更出来るんだこの装備」
どうやらこの装備は浴衣と角帯の色とデザインをI〜Vのパターンの中から自由に選択出来るようだった。単純に考えてこれで五×五の二十五通りのパターンが生まれる事になる。色合いのバリエーションのIから順に赤・紺・緑・白・黒を基調としているようだった。デザインはIから順に、無地、縦縞、横縞、パッチワーク柄、波模様の五種類のようだった。
「このFreeっていうのはもしかして」
そう言いながらエルツが浴衣カラーのFreeを選択すると、そこにはカラーパレットと浴衣の全体図が画面に現れた。
「なるほど、これで自由に浴衣に色付け出来るんだ。じゃあこっちのデザインのFreeっていうのも」
そうしてクリックして現れたのは浴衣を下地に引いたグラフィックツールのようなものだった。どうやらこのツールを使って自由に浴衣のデザインをする事が出来るらしい。
「すごいなコレ。でも絵描けないから自分には全く無意味だけど」
エルツは画面をいじりながら自らの装備を確認し始める。
デフォルトで設定されていたデザインの中から白を基調とした白黒のパッチワーク柄を選び、洗面台の前で唸る。
「う〜む、白黒のパッチワーク柄って帯って何色で合わせりゃいいんだ。 皆と会うのに無意味に冒険する必要もないか。無難にデフォルトの無地の紺に白帯で行くか」
そんな事を呟きながら、ふと鏡の前でPBと格闘するエルツ。
気がつけば約束の時間まであと十五分を切っていたという事を、この時エルツは知る由も無かった。