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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第四章 『アンディファインド』
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 S8 三角関係

 琥珀蘭の咲く小園からスティアルーフへと舞い戻ってきたエルツ達はそこで別れた。街へ戻ってきた頃、上空では黒雲が雨を滴らせ街を濡らし始めていた。エルツは一度B&Bにて残っていた生産を終えてから、その夜コミュニティルームへと向う。コミュニティルームには最近見なかった顔ぶれが一同に集まっていた。ビリヤード台の周りには背丈と似た長さのキューを抱えてはしゃぐ子供達の姿。

 

「マッセ行くぞチャッピー!!」

「チョッパーだよ!!」


 ビリヤード台にちょこんと座りながらそう叫ぶウィルにチョッパーが叫び返す。

 

「お前らラシャ傷つけるなよ」


 ソファーからのそんな忠告を無視して、室内に思い切りラシャを叩く音が響き渡るのを確認してからエルツはソファーへと移動する。ソファーにはリーベルトにフランク、それからケヴィンにユミル。そして、そこにはドナテロとスニーピィの姿もあった。


「あれ、ドナテロさんにスニーピィさん!戻ってきたんですか!?」

「相変わらず元気そうだな。お前ちゃんとログアウトしてんのか?」


 驚くエルツに二人はそんな皮肉で返す。そんな光景に一同は笑みを漏らしながらソファーでの語らいにエルツを招き入れた。話題はどうやらやはり生産の話で持ち切りのようだった。


「ついに待望の生産追加されたね。やっぱ生産あるのと無いのじゃ全然違うよ。素材価値も変わるしね。今まで売るだけだったけど、これで素材が活きてくるし」

「生産追加されたのは嬉しいんすけど、皆殺到し過ぎてまともに生産できないすよ。今日二時間ウーピィ追い駆け回しましたけど、結局綿毛三枚しか入手出来なかったっすもん」


 スニーピィの言葉に苦笑いしながらそう返すケヴィン。

 

「二時間で三枚ならいい方じゃない?うちは魔工だから朝一でオークション行った後、一日中ウーピィ狩りしてたけど、今日一日で兎石二枚しか出なかったし。オークションで結構買い込んだからスキルは魔工0.18上がったけどね」

「魔工0.18ってお前すごいな」


 ドナテロの問い返しにVサインを見せるスニーピィ。

 

「ドナテロだって鍛治、今日0.23上げたんでしょ?」

「0.23すか!?え、どうやったらそんなに上げられるんすか?」


 確かにケヴィンが驚くのも無理はない。銅鉱石はただでさえ不足してるっていうのに、一日で0.23なんて有り得ない数値だ。

 

「朝一でギルドの販売に駆け込めば、銅鉱石10個前後は手に入る。あとは採掘場行って気合で取る」

「朝一って事はギルドが開くの9:00ですよね」


 なるほど、そんな手があったのか。確かに朝一の駆け込みは非常に有効な手だ。在庫が切れる前に出来るだけ買うというのは当たり前のようで思いつかなかった。

 製縫を上げるならば、製縫ギルドで確かウーピィの綿毛が売っていたし、明日試してみるか。


「それにしても、もうちょっと運用考えて欲しいな。折角の生産システムなのに、これじゃ触れない人も多いと思いますよ、きっと」


 リーベルトに続けてフランクが続ける。

 

「在庫量もう少し増やすとか、サーバーの増設とか対策とってくれるとありがたいんですけど」


 その言葉にスニーピィが微笑する。

 

「まぁ、確かにそれはあるけど。なんて言ってもまだオープンβの段階だしね。運営側もきっと試行錯誤なんだろうさ。今回だって試験導入って話だしさ」


 その言葉に唸りながら「そうか」と頷くリーベルトとフランク。

 

「でも、確かにオープンβでこれだけ殺到してるのに、正式サービス稼動したらどうなるんだろ?」


 素朴なスニーピィの疑問に皆が頭を捻る。

 

「正式サービス稼動したらきっと供給筐体量も無制限になるでしょうし。大体、全国単位で展開して人が集まってきた時に、あの始まりの島でそんな大人数捌けるのかな」

「間違いなくパンクするな」


 リーベルトの疑問にケヴィンが頷く。

 

「となるとやっぱり筐体の供給量を調節して少しずつ人員増加させるんですかね。となると、後発になればなるほど不利か。そんなんで後の人ゲーム参入してくるのか」


 リーベルトの疑問は尤もだった。しかしながら、さすがにそこら辺の対応措置はD.C社も考えているだろう。どう対応するのか、見物といったところか。

 

「それにしてもオープンβになってやっぱ随分人増えましたよね」

「うん、増えたねぇ。クローズドαの開始時なんて250名でしょ。オープンαで1000名。で、オープンβで5000名か」


 スニーピィの言葉にドナテロが香煙草を吹かしながら苦笑する。

 

「てか、人明らかに増やし過ぎなんだよ。モニター採り過ぎだろ」

「でも人が多いからパーティは組み易いですよね」


 リーベルトの言葉にドナテロが香煙草の煙をそっと吹く。

 

「まあ、確かにそれはあるな。が、弊害の方が多過ぎる」


 なるほど、今日は興味深い話が色々と聞けた。

 そうしてエルツが頷いていたその時だった。


「なんだエルツ、お前今日は借りてきた猫みたいにやけに静かだな。便秘か?」

「誰が便秘だ。この世界に大体排出行為ないじゃないですか」


 エルツの返しに笑いを漏らす一同。


「いや、興味深い話だったから口挟むよりは聞いてる方がいいなと思って」

「お前そういうとこあるよな。ちゃんと会話参加しろよ」


 ケヴィンの言葉に面目無いと頭をかくエルツ。


「まぁ、こっちにもさっきから口閉ざした石像が一体いるけどな」


 ケヴィンの言葉に目をパチパチと泳がせるユミル。


「え、私?」

「そう、お前。どうした?誰かに見惚れてたのか」


 冗談めいたケヴィンの言葉に、ユミルが大きなリアクションを返す。


「ちょっとケヴィンさん何言ってるんですか!そんなわけないでしょ!」


 紅潮を見せるユミルの頬。


「え、お前何赤くなってんだよ。ひょっとしてマジ?」


 ますます紅潮していくユミルの頬に皆の視線が集まる。


「え、誰だよ。今更オレ達の誰かって事はないだろうし。ひょっとしてコイツ?」


 そうして、ケヴィンの指がエルツを示すとユミルは硬直した。


「ち、違いますよ!本当に何言ってるんですか!違いますからね、エルツさん。本当に気にしないで下さい!」


 必死に慌てて否定するユミル。こうもはっきり否定されるのはそれはそれで何とも言えない気持ちになるものだが、この場にはフランクも居るし、下手に関係がこじれるよりは否定された方が気分は楽だった。


「何だよ、違うのか。だったら三角関係面白いと思ったのに」


 ケヴィンの言葉にむっとした表情を見せるユミル。


「ちょっと、いい加減な事ほんとに言わないで下さいよ」


 そう言ってフランクに視線を振るユミル。

 フランクは冗談めいた空気に笑みを零していた。


「大体三角関係って、循環してないだろ。その理論で行くと、エルツがフランクに惚れてる事になるぞ」

「ドナテロさん、話変な風に広げないで下さいよ」


 苦笑いを浮かべながらドナテロを制止するフランク。


「僕はフランク好きですけどね」

「おい」


 エルツの言葉に、スニーピィがすかさず突っ込む。一瞬ぎょっとした表情を見せたフランクを見てリーベルトがくっくっくと失笑を漏らす。

 そんな他愛も無い会話を楽しむ一同。生産要素も追加され、暫くドナテロやスニーピィもまた街周りでの活動が主となるだろう。また、コミュニティのメンバー皆とこうした談笑が楽しめると思うと、エルツは何だか嬉しくなった。

 予定通りに動くならば、明日も琥珀の園に赴く事になる。明日は晴れるといいな、そんな願いを込めながら、エルツはその場に身を置いていた。



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