S6 魔工ギルド
残る最後のギルド、魔工ギルド。
深い青味を帯びた薄暗い室内。様々な魔導具に囲まれたその空間には、先の二箇所のギルドに比べると異質の雰囲気が漂っていた。中央に設置された巨大な魔導機械から噴出される虹色の輝きを帯びたシャボン玉のような泡が空間に漂い、浮かび弾けては真っ白な粒子を拡散させていた。
そんな幻想的な光景に目を奪われている冒険者も少なくないようだったが、混雑を見せるギルド内でのんびりただ寛ぐというのも迷惑な話だろうと、エルツ達はPBを開き魔工についての生産情報を確認し始める。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
魔工ギルド-MENU-
▼魔工生産とは?
▼生産情報 オススメ★
▼素材売買
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●魔工生産とは?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ARCADIAに現存する生産スキルの中でも最も特殊な技術である。魔工生産では魔法杖・装飾品など魔法力の込められた特殊な製品を作り出す事が出来る。ファイアロッドや兎石の首飾りなど、魔法を司る冒険者に推奨。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●生産情報 オススメ★
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【PLAYER INFORMATION】
PLAYER Elz
魔工 S.Lv0
▼オススメ生産レシピ
【整形】ブロンズリング <<< 青銅の欠片 ★S.Lv0
【宝飾】兎石の指輪 <<< ブロンズリング+兎石 ★S.Lv1
▼上位生産レシピ
【整形】青銅の止め具 <<< 青銅の欠片×2 ★S.Lv2
【整形】青銅の首飾り <<< 青銅 ★S.Lv2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●素材売買
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
▼素材リスト(計5品)
ブロンズリング 購:150ELK 売:50ELK
青銅の首飾り 購:250ELK 売:75ELK
アタックシールI 購:100ELK 売:25ELK
ディフェンスシールI 購:100ELK 売:25ELK
マジックシールI 購:100ELK 売:25ELK
●購入する
●売却する
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
その生産レシピを見て、項垂れるエルツ。やはり、ここでも予想通りの結果だった。
「何だよこのレシピ。青銅が絡む生産ばっかりじゃんか」
「青銅って、ああ。あの鍛冶で作るやつか」
スウィフトの問いに無言で頷くエルツ。
謎に包まれていた青銅。入手方法が判明したからまだ良いものの、その供給は圧倒的に少ないだろう。魔工生産の初期段階に青銅が多く必要になるというならば、魔工スキルを上げようと企んでいた冒険者は早くも手詰まりである。
幸いブロンズリングがギルドで販売されているから、兎石とブロンズリングのレシピは生産可能かもしれないが、兎石という宝石の入手方法<ウーピィのレアドロップ>を考えると、魔工スキルの前途多難さがよく窺がえる。間違いなくこの魔工生産に関しては荊の道だろう。
大きく背凭れに身体を凭れ掛からせだれるエルツに、スウィフトとリンスが視線で今後の方針を仰ぐ。
「とにもかくにも、これじゃどうしようもないよなぁ。今やるとしたら製縫でウーピィ狩りに参戦するしかないよ。素材確保するために、率先して自ら狩りに出向くしかない」
エルツの言葉にスウィフトがリンスに視線を投げた。
「どうする?」
その返答に躊躇うリンス。そう、彼女はウーピィ狩りを今まで一度も行った事が無いのである。動物愛護の精神とでも言うべきか、確かにあの外見のモンスターを狩るには躊躇いを覚える冒険者も多いだろうが、生産というシステムにおいてウーピィの素材が組み込まれている以上、ここで狩りを拒否する事は生産システムを否定する事に等しい。生産過程において素材は全て購入するという方法もあるにはあるが、今後遥か上位の生産が導入される頃には素材を全て購入するなど難しい話になってくる。時には自分で素材採集に乗り出す事が必要になってくるであろうその状況を想定するならば、この辺りでそろそろ耐性をつけておくべきかもしれない。
「やってみようよリンス」
スウィフトの言葉に戸惑いながらも頷くリンス。
確かに、頭の中のシミュレーションと実践では成果に違いが出る事も多い。実際にやってみないとわからない事も多い。
とはいえ、今回の場合に関しては頭の中でのシミュレーションはおそらく概ね正しいだろうが、それでも何もしないよりはマシだ。稼動初期の段階で少しでもS.Lvを上げていた方が後々有利になる事には変わりはない。
「それじゃ、行ってみますか」
目指すは、西エイビス平原。願わくば、少しでも良い成果が生まれる事を祈って。
そうして、一行はPBを閉じ、最後のギルドを後にするのだった。