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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第四章 『アンディファインド』
111/242

 S3 生産システム


■双華の月 雷刻 2■

Real Time 4/25 1:23

 翌日、エルツはスウィフトとリンスと共に街のギルドを訪れていた。昨日はひょんなきっかけから会話の流れが思いも寄らぬ方向へと行ってしまったが、話題となるテーマは他にもあったのだ。そして、それがここへ三人で来た理由でもある。

 そう、今刻の頭にまたバージョンアップがあったのだ。メールの内容には目新しい内容が記されていた。その肝となる内容が生産システムの試験導入である。


「生産システムか」


 エルツは広いギルドのロビーを見渡しながら呟いた。


「試験導入っていう話だけど、やっぱ生産系のシステムは嬉しいよね」とスウィフト。


 シティギルド内はたくさんの冒険者で賑わっていた。おそらくこの冒険者のほとんどが同じ目的でここを訪れているのだろう。鏡のような反射を見せる大理石のロビーを歩きながら正面のカウンターを左手に。今回のバージョンアップでこのシティギルド内に工房ギルドと呼ばれる施設が新しく追加されたらしい。入り口からカウンターを両脇へと折れた黒硝石の壁には、地下へと降りる厳かな階段が設置されていた。


「ここかな」


 地下へと下る薄暗い階段を覆うのはレンガ造りの網目状の壁だった。確かに、工房というと黒硝石の黒塗りの壁よりはこうしたレンガ造りの壁の方が趣がある、とそんな事を考えながらエルツは地下へと向かって階段を下り始めた。通路の両側に取り付けられた黒光りする鉄の手摺てすりに沿ってゆっくりと階段を下り始める一同。


「今回選択出来る合成項目って三種類か。『鍛冶』に『製縫』に『魔工』か。どれ選ぼうかな。エルツはもう決まってるの?」


 PBを開きながらふと呟くスウィフト。


「ん〜、とりあえず一通り触ってみないとわからないな。個人的には魔工って響きにちょっと魅かれるけど。けど、使ってる武具考えると鍛冶も捨て難い」

「生産スキルって何種類も選べるの?」


 リンスのその素朴な疑問にエルツはふと首を傾げた。

 そこのところはどうなのだろう。メールにその記述は無かった気がするが。一般的に生産スキルの取捨選択についてはゲームによってその設定は異なる。基本的にはいくつも生産スキルが選択出来るものが主流な気がするが、中には始めに決定した一種類の生産スキルに絞られるものも存在する。もし、仮に後者だとするなら、ここでの選択はかなり重要になるだろう。

 階段を折り返し、銅製のランプに輝きに照らされた赤みを帯びたレンガの壁を横目に地下を目指す一行。


「一般的にはゲームによってまちまちなんだ。でも、多分いくつも選べる方式だとは思うんだけど、そこらへんも気になるところだな」


 エルツの曖昧な返答に頷くリンス。

 そうして、一同は薄暗い地下へと到着した。ランプの明かりに照らされた薄暗いレンガ造りの空間、そこはちょっとした談話が出来る休憩所のようだった。溢れる冒険者を見渡しながら、辺りを確認するエルツ。

 前方と左右には大きく幅を取った直線の通路が合わせて三本伸びていた。MAPで地形を確認すると、半円上に刳り貫かれた空間から、前方と左右に直線の通路が伸びている。差し詰め、MAPで確認するその地形を形容するならば三又の矛といったところだろうか。

 溢れる冒険者達の邪魔にならないように、三人は階段を出た隅に固まり目標地点を確認し始める。

 

「ええと、階段から見て、左が鍛治ギルド、右が製縫ギルド、中央の通路の奥が魔工ギルドか。どうする、どこから行く?見た感じまた例によって強烈に込んでるみたいだけど空いてるとこから行った方がいいよね」

「どこも込んでるなら、どこから行っても変わらないよ。行きたいところから行こうか。鍛治ギルドから行ってみる?」


 エルツの言葉に頷くスウィフトとリンス。

 そんな時、ふと休憩所の向こう側から歩いてくる冒険者達の何気無い会話が一同の耳に入ってきた。

 

「そうかぁ、鍛治って鉱石発掘しないといけないんだ。ラクトン採掘場まで往復するのちょっとめんどいな」

「確かに、ええと教えてもらったレシピ何だっけ?まずは銅鉱石を製錬するんだよね」


 そんな会話をしながら通り過ぎてゆく二人の冒険者。

 製錬……とは何だろうか。今の会話から初めはその銅鉱石を製錬する作業から始まるという事だろうか。ならば、これから大量の銅鉱石の需要が出る事は必至か。売り切れる前にオークションで今のうちにあるだけ買っておくべきか。

 そんな思索を巡らせる事も、生産の楽しみの一つだ。これからオークションの相場にも大きな変動が出てくるだろう。生産システムとオークションの連動性は非常に高い。これから冒険者間での微妙な駆け引きも生まれてくるはずだ。

 

「楽しみだな」


 そんなエルツの呟きに笑みを零すスウィフトとリンス。そうして、三人は淡いランプに照らされた通路を、奥へと向かって歩き始めた。

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