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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第三章 『変わり行く世界』
101/242

 S31 旅は道連れ


■双華の月 土刻 24■

Real Time 4/23 23:36

 翌日、早朝から狩りを再開した三人。

 慣れとは恐ろしいものだ。始めはMush Hopperの頭部を狙うなど至難の業のように思えたが、今となってはなんと大きな的に見える事か。獲物の動きを先読みし、ジャンプし着地したその瞬間を狙う。着地時を狙えば、頭部の高さは固定されるし、あとは横の動きに合わせ弓を射るだけだ。どうしても、角度的に頭部を狙う事が難しい場合は、STRING'S SHOTを使えばいい。

 眼前でアップル目掛けて襲い掛かろうとするMush Hopper。


「ここだ……!」


 エルツの掛け声と共に、止めの矢が突き刺さる。

 粒子化を始めるMush Hopperを気長に見ている時間は無い。倒したら、すぐに次の獲物に向かって移動を始める。陽気な笑い声を上げながら先頭を駆けるパピィ。

 いち早く、獲物に辿り着いたパピィは所定位置も確認せずに即座に弓を構える。


「パーピパピ パーピパピ あれ、ちょっと奥さん斉藤さんじゃないですか」


 キノコに向かってそう語り掛けるパピィ。

 当然だが、理解不能である。


「その具材、今日はキノコパーティーですか?ずるい!わーたーしーもーまーぜーてー!」

「いいから、はよ撃てって!」


 エルツが突っ込むと同時に放たれる矢。

 怒り狂ったMush Hopperに向かって手を翳すパピィ。


「おお、斉藤さん大激怒」

「お前はあのキノコの何を以って斉藤さんと言うか」


 その言葉に目を潤ませてエルツを見つめるパピィ。


「ひどい、わたしを騙したのね。あなた斉藤さんのなんなのよ!」


 訳のわからん事を抜かすパピィの首根っこを強引に掴み、所定位置まで連れ戻すエルツ。


「全く世話の焼ける……」


 だが、そんなやりとりとは裏腹に狩りはすこぶる順調だった。

 結局、お昼を挟んで三時半頃にはなんと全員がLv8に到達しているという信じられないこの事態。だが、このメンバーでの経験値効率を考えればそれも不思議ではない。パピィとアップルは実は午前中の狩りでLv8に到達していたのだが、それでもエルツのLvが上がるまで付き合ってくれた。理由を聞くと、「おもろいから」とパピィは一言ただそう告げた。

 二人に多大なる感謝をしながら、エルツ達はキャンプ場へと戻り、そして別れを告げる。


「じゃあ、ちょっと早いけどログアウトしよぅかな」


 そう呟くパピィを微笑ましく見つめるエルツとアップル。


「パピィ隊長、今日は本当にありがとうございました」

「うむ、ごくろう。それじゃバイビー!またね」


 そう言ってパピィはパーソナルブックを開くと、手を振りながら粒子化を始めた。

 消えていくその姿を最後まで見送るとアップルもエルツに一礼した。


「それじゃ、僕もここで、またアポゥ」

「あ、うん。おつかれさま」


 また会おうをアポゥと掛けたのだろうか。

 そうして、アップルはにこやかな笑みを残してその場を立ち去った。


――あれ、そう言えば二人とフレンド登録できなかったな――


 その事実にちょっとした寂しさを覚えるエルツ。まあ、でも申請しても断られる可能性もあるし、それにまさか会う人会う人、皆フレンド登録するわけにもいかないしな。

 でも、本当に今までに出会った事のない楽しい人達だった。若干、二人とも何考えてるか分からなかったけれども。

 Lv8になった今、次の獲物は西エイビス平原のワイルドファングに限られる。トロイの森でソロでキノコ狩りをするという選択肢もあるにはあるが、リスクも大きいようだし、ここは素直にスティアルーフへ戻るのが吉だろう。

 そうして、その日エルツはまた一人で、約四時間半という行程を掛けてスティアルーフへと帰還するのだった。行きも帰りも一人旅。その事実はちょっとした寂しさをエルツに感じさせたが、仕方ない事だ。

 日が暮れ始めた草原を一人歩くエルツの姿。


――やっぱり旅は道連れだよな――


 暮れていく日を前に、改めてエルツはそう実感するのだった。

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