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ファルと百貨店の出会い方2

ごめんなさい、少し空いてしまいました。

不定期で投稿といえど、間が空くほど焦ってしまいがちです。

もう少し安定して執筆できればと思うこの頃です。

「嫌味な胸よね~~…………」


「試着させておいて随分な言葉だね紗奈」


 ランジェリー売り場からそそくさと移動して二軒目のお店での一幕。今回は宗太も初めから店内に同行し、ファリシアルに見合う洋服を選んではあてがってみた。

 ファリシアル本人としては動きやすそうであればなんでも良いと言っていたのだが、紗奈が色々こだわって大量の服を抱えて一緒に試着室に入っていった。結局、宗太の意見は取り合ってもらえないらしい。それに試着室越しに聞こえる衣擦れの音がどうにも気になって宗太はもじもじしている。そして更ににカーテン越しに聞こえる冒頭のセリフで頭の中が妄想で全開だ。ランジェリーショップの時といい、今回といい。天野宗太と言う健全な男子高校生には刺激が強すぎたか試着室から離れて待つことになった。


「紗奈……時間かかりそうだから僕は他所で待たせてもらうよ。」


「ならさっきの買い物の袋こっちで預かるわね。着替えるついでに下着も替えちゃうわね。」


 そう言って手だけ出す紗奈に袋を持たせて宗太は売り場を離れた。こうなると手持ち無沙汰だが、ふと思いついてこの百貨店特有の各フロアにいるフロアアドバイザーという女性にとある店がある場所を尋ねた。今回の買い物に合わせて、いわゆるサプライズをしようと考えていた。

 目的の場所に案内されて店内に入った宗太はその物量と種類にここなら良いものが見つかりそうだと確信した。

 しかし、買い物は至極個人的なものだから自身のお小遣いから出そうと思っていたのだが、「意外と高いんだな……」などと呟きながら財布の中身とにらめっこしているところに背後から声をかけられた。


「プレゼント用ですか? よろしければご相談にのりますが」


 不意にかけられた声に驚きつつ振り向くと女性スタッフが爽やかな笑顔で迎えてくれた。営業スマイルとわかっていてもついついこちらも笑顔で答えてしまう。確かに一人で悩むより専門家に相談して一緒に選んだほうが確実だろう。そう思い自分の予算とファリシアルの特徴を教えながら商品の品定めする。ファリシアルの特徴を知った店員さんは興に乗ったのか、あーでもないこーでもないと宗太以上にノリノリである。いっそのことその方に来てもらって一緒に選んでみてはどうかと言い出す始末だ。さすがにそれでは本末転倒だと断るが、確かに気に入ってもらえないと凹みそうなので紗奈に電話して来てもらおうか悩んでいるとタイミングよくスマホが鳴った。


「お兄ちゃん、こっちは終わったけど何か用事中?」


「あぁ、もうしばらくしたら終わるから、フードコートで待ち合わせでいいかな?」


「オッケー、じゃああまり遅くならないようにしてね。」


 思わず言ってしまった言葉により来てもらう案は流れてしまった。傍らにいる女性スタッフに苦笑いしつつも「彼女さんですか?」と聞かれ、全力で否定した。そろそろ本決めにかからないと二人を待たせてしまう。そう思って女性スタッフと最終候補まで残った商品を選んでいると、ふと視界の端に映った姿に二度見した。ショップの外の通路にいたポニーテール姿の少女はニヤニヤしながらこちらを見ている。言わずもがな紗奈である。

 なんでここに居るのがわかったのか。と言う疑問もだが、せっかくのサプライズ計画がこの段階で全部流れてしまった。


「まぁまぁ、お兄ちゃんにしてみれば悪くない発想じゃない? その発想に免じて私からも予算を投じてみようかと思うんだけど」


 宗太の何とも言えない表情を読み取ったのか、ファリシアルを近くのベンチに荷物番として待たせて宗太の傍で小声で提案してきた。女性スタッフがまたもや、「彼女さんですか?」などとのたまうので今度は兄妹で全力で否定した。

 資金援助に対しては悪くない提案だが、宗太は自分自身で贈ってあげたいと言う気持ちが先行し、紗奈の提案を丁重にお断りさせてもらった。そして紗奈からも「言うわね~」などと冷やかしももらった。

 しかし、紗奈がここへ来たのは結果的に良かったのかもしれない。新しい服に着替えたであろうファリシアルの服の特徴を聞きつつ中断していた最後の品定めを紗奈にも一緒にしてもらった。

 

「随分慎重に選んでいたようだけど、もう大丈夫なのかな?それと……私のこの格好変じゃないだろうか?」


 合流した宗太に自身無さげに言葉をかけてくる。見るもの全てが珍しいファリシアルにとっては待つ時間であろうと大した気にもならないだろうが、自分の初めてしたであろう格好には自信が持てなかったのであろう。座っていたベンチから降りて先ほど紗奈と選んだ服を翻して宗太に聞いてきた。

 真っ白なフリルオフショルダーワンピースに薄いベージュのレースカーディガン、足元は花柄のサンダルと銀髪美少女の容姿と相まってこれだけでも周りの男達のハートは鷲掴みだろう。見惚れそうになるのをぐっと堪え横に来た紗奈が「この服ならさっきのとぴったりでしょ」と言ってくる。確かに似合いそうだと宗太も確信を持てた。

 しかし、その服から見えるはずの体の模様はと聞いたら、「気になるときはカモフラージュできるから大丈夫」だそうだ。


「ファル、昨日は紗奈を助けてくれてありがとう。お礼、というには釣り合わないかもしれないし気にいるかもわからない。でもその服にとても似合うと思うから貰って欲しい」


 何事かときょとんとしているファリシアルに手渡す。それを受け取り驚きながらもファリシアルはしばらく見とれていると『被って』見せてくれた。


「に……似合っているかな?」


 ファルは照れながら両肩幅くらいまであるつばの麦わら帽子を被り、片手ずつでつばとワンピースの裾をつまみながらくるりと回りながら聞いてきた。宗太は元より同性である紗奈も見惚れて声を失っていた。「ダメだったかな?」と言うファルの声で宗太達は正気に戻り、最高ですととっさの評価でも満足げに頷いてくれた。

 

 楽しげに周りの色んな店を覗きながら宗太と紗奈の前を歩くファリシアル。一応目的地は伝えてあるのでそう容易くははぐれることはないと思うが、どちらともなく目を離さないようにしておいている。よほど気に入った様子で帽子の位置の調整を小まめにしている。ファリシアル本人が言うには宗太達より年上らしいが、あの姿を見るととてもそうは見えない。「どちらかと言うと妹って感じよね」との感想を述べる紗奈。

 そんな紗奈の頭に宗太はぶっきらぼうに帽子をのせる。実は紗奈がファリシアルのところへ戻っている間に女性スタッフに頼んでもう一つ見繕っておいたのだ。短時間かつ女性スタッフの見立てで紗奈にカンカン帽が似合いそうだと勧めてもらった。

 突然頭の上に乗せられた帽子を手にとって何事かと尋ねられたが宗太としても気恥ずかしいのが多くは語らなかった。


「ファルの世話の前渡しだよ。これからもよろしく頼んだ」


 突然のプレゼントと先を歩く宗太を交互に見ながら立ち尽くす紗奈は普段は見せないような優しい笑みを湛えながらトレードマークのポニーテールをほどいて宗太を呼び止める。


「お兄ちゃん、ありがとう。」


 そう言いながら宗太の前できちんとかぶって見せた。普段は憎まれ口を叩き合う間柄だが決して兄妹仲は悪くない方だとお互いに思う。むしろ宗太は叩かれっぱなしな気がしなくもないが、それも紗奈故の表現だと思っておいた。

 そんな紗奈が素直にお礼を言うのは珍しいのか、宗太も照れながら素直に貰っておいた。


「気にしなくていいよ。それと似合ってる」


「えへへ、でねお兄ちゃん」


「ん、どうした?」


「ファルはどこ行っちゃった?」


 …………マジか。

お買い物編はもう少し続きますのでお付き合いのほどよろしくお願いします。


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