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第2話


第2話


老人に言われた通りに道沿いを進んで行くと、建物らしき城壁が見えてきた。

「あれがイニティウムと言う町か?」


どんどん近くに行くにつれて、町の城壁や人がハッキリと見えてくる。町は、入り口に大きな門が有り、存在感を放っていた。

俺は、門を潜り抜けるとそこは数多くの人種が豊かに会話をして活気に満ち溢れていた。


「さぁ! 見て行ってくれ!」

「新鮮な物が揃ってるよ!」

商人達の商売の声が聞こえてくる。

町の中を歩いていると、何やら辺りから注目されている様な気がした。


「それより、冒険者ギルドはどこなんだろう?」

いくら探しても冒険者ギルドは見つから無い。町中を探している内に、路地裏らしき場所に出ていた。

少し薄暗く、ジメジメしている。


「貴方! こちらに来ては頂けませんか?」

後ろを向くと、真っ黒なローブに身を包み、フードを深く被っている怪しい男が立っていた。


「俺か?」

首を傾げながら自分に指を指す。

「そうです! こちらに」

男は大きく頷いている。

男に促されながら俺はついて行く。

ついて行くと。男は路地裏を抜けて、町外れの小さな家に入っていた。

警戒しながらも、家のドアを軽く開ける。


家の中はいたってシンプルだった。

タンスが2つ並べてあり、真ん中には大きなテーブルが1つ置いてある。奥には扉が見えていた。

「どうぞ、お座りください」

「あぁ」

真ん中にあった椅子に男は座り、俺もその向こう側に座った。


「それで話とは?」

「おい、お前!」

男は、奥にある扉に向かってそう叫ぶと、ゆっくりと扉が開いた。

扉の向こうからは、何やら人らしき者が現れた。


その者が近づくにつれて、段々と姿が見えてきた。

「は、初めまして! 」

それは、獣の耳を生やしている少女だった。

可愛い顔に獣の耳を生やしながら、こちらを見つめている。

だが、耳を生やす人間など聞いたことは無い。


「この子は?」

椅子に座ったまま、前にいる少女を指差す。

「知ら無いですか? これは魔族のケットシーと人間のハーフですよ」

「ケットシーと人間のハーフ?」

「そうです! ケットシーの特徴的な耳を生やす人間ですよ。まぁ、普通の人間より身体能力が桁違いですが」

男によると、ケットシーは魔族と言うよりも妖精に近い類だと。近年は、そう言う魔族と人間のハーフが沢山居るらしい。


「この子らを買ってもらう事は出来ませんか?」

「買うだと?」

「そうです! この子は立派な奴隷ですのでご迷惑にはなら無いと………」

ヘルヘイムにも奴隷はいたが。全部が全部、弱いゴブリン達だった。

この少女を買ってもいいが。まだ、家も無く。ましてやお金がない。


兜を被りながら唸っていると、座っていた男が急に立ち出して、少女の肩に手を置きながら話してきた。

「今なら10万バリスですが、どうですか?」

「10万………」

この町の物価の単位はよくわから無いが、俺の持っているお金は1000バリスしかない。


「すまないが、お金が無いんだ」

「そ、それでしたら。8万バリスではどうでしょう?」

何度も男は聞いてくる。


「それより、冒険者ギルドはどこにあるんだ?」

椅子から立ち上がり、家の扉を開けながら男に聞いた。

「ぼ、冒険者の方でしたか!?」

「いや、まだ冒険者では無い」

「駆け出しの冒険者様ですか………それなら、5万バリスでお譲りします!」

外に出ようとする俺の鎧を掴みながら、男は必死に叫んでいた。


「さっきも言ったが、お金が無いんだ」

「それなら、お金が貯まるまで確保して置きますから、気が向きましたらまたお越しください。それと冒険者ギルドは広場を通った先にあります」

俺は、男に挨拶をしてその家を後にした。

家を出るとき、少女が涙を溜めながらこちを向いていたが、アレはどう言う意味だろう?

暗黒騎士の俺には、さっぱりわからない。

お金が貯まったら、奴隷を買うのもいいだろう。


「ここが広場か?」

気がつくと、いつの間にか広場に着いていた。

目印に大きな噴水が存在感を放っていた。

辺りには草木や花が綺麗に咲いている。

時々聞こえてくる鳥の囀りと噴水の音がその場の雰囲気を大きく変えていた。


「あの、冒険者ギルドはどちらでしょう?」

噴水の前で楽器を緩やかに演奏していた吟遊詩人に話しかける。

「冒険者の方ですか?」

「いえ、冒険者ギルドで登録をしたいのです」

「駆け出しの冒険者様ですか! なら、1つ演奏をさせてもらっても、いいでしょうか?」

目をキラキラと輝かせている。


俺がコクリと頷くと、吟遊詩人は持っていた楽器で演奏を始めた。

「この世界、2人の神々がいたそうな〜 2人の神々はゲームをした。そう、迷宮を作り上げた〜 光の神は言った、迷宮を制覇した者には願いを叶えてやろうと。そこで冒険者は夢を目指す、願いを叶えるために………冒険者よ、祝福あれ」

楽器のリズムに合わせて詩を口ずさむ。詩と楽器のリズムがあっていて何とも言えない感じだ。


「ふぅ、どうでしたか?」

演奏が終わり。汗を掻きながら楽器をしまい込んでいる。周りで聞いていた民衆が拍手を送っていた。

「初めて、こう言う詩を聞きました」

「知らなかったのですか? これは、初めに冒険者になられた方が口ずさんでいた詩らしいです」

首を傾げながら、吟遊詩人は語っていく。


「では、ギルドはこの先真っ直ぐ行った所にあります」

「ありがとう、いい詩でした」

片手を上げて歩きながら、吟遊詩人に話した。

「貴方に冒険者の祝福を!」

後ろから優しい声で楽器を取り出しリズムを合わせながら、吟遊詩人は言ってきた。

俺は、吟遊詩人の言っていた通りに。噴水の道を真っ直ぐ進み、冒険者ギルドに向かって行った。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「ここか?」

そこには見るからに周りより大きい建物が立っていた。

よく見ると、看板に冒険者ギルドと書いてある。


「よし!」

力強く冒険者ギルドの扉を開ける。

ギルドに入ると、外とは違う感じがする。

ギルドの中は賑やかな声と陽気な楽器演奏が聞こえていた。様々な武装で身体を覆う冒険者達が扇情的な格好をした受付が持ってくる品々を手に取り口に含みながら、冒険の話で和気藹々と盛り上がっていた。


扉の前で呆然と立ち尽くしていると、別の所にいた受付が声をかけてきた。

「ようこそ! イニティウム冒険者ギルドへ! クエストですか? 食事ですか?」

「冒険者になりたいんですが?」

「駆け出しの冒険者でしたか!? 失礼ました。防具が余りに凄くて………」

ペコペコと受付はお辞儀をして謝ってくる。何故かその様子を見て、他の冒険者がこちらを睨んできていた。


「で、登録はどうすればいい?」

「こちらにお願いします」

受付について行くと、1つのカウンターの前に立っていた。


「それでは、名前を言ってください」

受付はカウンターの後ろにある椅子に座り、手には紙と鳥の羽根で出来たペンを握っている。

「名前は暗黒騎士(ダークナイト)だ」

「……………………はい? もう一度良いですか?」

暗黒騎士(ダークナイト)だ」

「………………ぷふぅ!」

受付は、首を傾げた後に口を押さえながら大きく笑っていた。


「えっと、暗黒騎士(ダークナイト)なんですか?」

「そうです」

真面目な顔で受付に答える。

「まぁ、冗談はこれくらいにして。本当の名前は?」

「いや、本当の名前が暗黒騎士(ダークナイト)だ」

受付は首を傾げながら。言葉が合っていないのかとブツブツ言っていた。

「では、ナイトさんではどうでしょう?」

「まぁ、構わん」

俺がそう言って頷くと、受付の表情が緩んで微笑んでいた。


「それでは、ナイトさんにはこの瓶を砕いてもらいます」

受付は、そう言うと。カウンターの棚から青い物が入っている小さな瓶を取り出して、俺の前に置いてきた。

「これですか?」

「そうです。力強く砕いてください!」

「ふっ!」

拳に力を集めて瓶に向かって振りかぶる。瓶に拳が当たった瞬間に凄まじい衝撃音が響き。ギルドの騒がしい雰囲気を壊してしまった。


辺りの冒険者が俺に向かって視線を飛ばしてくる。

どうやら注目されているらしい。

「やりましたよ?」

受付の方を見ると、少し表情が崩れて青ざめていた。

「えっとですね………」

受付は、瓶から垂れる青い液体を薄い銅のネックレスで受け止めていた。


「よし、出来ました」

そう言って。先程垂らしていたネックレスを渡してきた。

「これは?」

「冒険者の証です。貴方の冒険者としての証です」

それを受け取り、鎧の上から首にかける。

すると、受付が持っていた紙が青く光っていた。


「えっ!?」

受付は、紙を何度も見ては瞬きをして、目を擦っている。

「どうしたんですか?」


「貴方、魔力と筋力の数値が見えず。体力に関しては、そこの行が消えてるんですけど………」

そう言って、手に持っている紙を見せてきた。

確かにそこには、魔力と筋力の数値に靄がかかっていて。体力の書いてある場所が不自然に消えていた。


「こんなの初めて。今まで、数値が見えない人はいなかったのに。数値がカンストしている人はいたけど………」

未だに驚いた表情をして、紙を見ていた。

「でも、登録は完了です!」

いきなり表情を変えて、パッと手を合わせながら俺に言ってきた。

「そうですか」

兜の下で少し頬が緩んでいる。

俺も遂に冒険者になれるんだ。


「ですが、クエストは明日から受けれるようになります。受ける前にはもう一度だけここに来てください」

「分かった。それと、安い宿は知らないか?」

野宿は何度もしているから流石に普通のベットで睡眠を取りたい。

「それなら、駆け出しの冒険者にオススメの宿屋スムヌスが良いですよ! その冒険者の証を見せると割引してもらえますし」

そう言って、棚から一枚の紙を渡して来た。

それを見ると、宿屋の位置が載っている町の案内地図だった。


「ありがとう。では、また明日」

「お気をつけて! 明日待ってますから〜」

受付に挨拶をして、ギルドを後にする。


早速地図を見て宿屋の方向へ向かって行く。地図によると、宿屋はギルドからはそう遠くはない。歩いて、大体5分くらいだろう。


俺は5分歩いて、宿屋に着いた。

宿屋には、宿屋スムヌスと大きく書いてある看板が店の上から掛けてあった。

「すいません」

そう言いながら、少し重い扉を開ける。

「あ! お客様ですか!」

ガサゴソと店の奥から物音が聞こえて、二十代くらいの女性がやって来た。


「お泊まりですか? それとも食事ですか?」

「泊まりです。一応冒険者です」

そう言いながら、首に掛けている銅のネックレスを見せる。

「駆け出しの冒険者様ですか! では一泊500バリスになります」

「500バリスですか」

俺は、老人からもらっていたお金を出した。


「では、二階の2番目の部屋になります」

紙にサラサラと何かを書いて、鍵を渡して来た。

「ありがとう」

俺は、女性から鍵を受け取り、二階の部屋へ向かった。


「ここか」

受け取った鍵で部屋の扉を開く。

部屋はいたって普通で、ふかふかのベットが1つ置いてあるだけの部屋だった。


俺は、部屋に入って。腰に付けていた剣を外す。ガシャと重たそうな金属音が鳴る。

「ふぁぁぁぁぁぁぁ」

兜を外すと、凄い眠気が襲って来た。

俺は、そのままベットに横になると、段々と意識が遠くなって来た。


「明日は…………初めてのクエストか………」

いよいよ、冒険者らしい事が出来ると考えながら眠りに落ちた。


バナナアザラシです。


今月は最後かな?

もしかしたら30日くらいに更新するかもです。


今回は戦闘が無く申し訳ありません。

次の3話はあるか無いか微妙です。

これからどうなって行くのか彼も私もわかりません。


後、活動報告でも言いましたが。誤字、脱字があれば報告をよろしくお願いします。メンタルを生贄に直しに行きます。


読んでいただきありがとうございました!

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