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第1話

第1話


俺は、彼方の世界を繋ぐ地獄の扉を固く閉めた。ここから魔族が来ることはもう無いだろう。

俺を含めた魔族は、地獄の世界。ヘルヘイムから地上に上がって来る。

理由はそれぞれだ、人間を殺したい者。人間を支配したい者。人間を弄ぶ者。

色々な魔族がいる。


ヘルヘイムでは、力が全てを決める。

弱者はすぐさま切り捨てられる。

完璧なる弱肉強食の世界。

それを嫌になって魔族達は、地上の世界にやって来る。


「しかし、ここはどこなんだ?」

辺りを見渡すが。一面、緑の草木が生い茂っていた。地上に出た事は分かる。

ヘルヘイムだと、草木が真っ赤に染まっていて、魔族が頭から串刺しにされているはずだから。


途方に暮れながら、一歩一歩を確実に進んでいた。もう直ぐで太陽が沈みそうだ。


「今日は、ここら辺で野宿をした方が良さげだな」

近くには池があり、ちょこんと切り株が出ていた。野宿をするのに最適な場所だ。

全身の真っ赤に染まった鎧を池の水で洗い落とす。魔族の血は禍々しい臭いと脂で普通の鎧ならば直ぐ錆びてしまう。


だが、俺の鎧は別だ。俺の鎧には、最高級の鉱石、黒曜石が沢山使われている。

ヘルヘイムでも稀少な鉱石で、年に数キロほどしか取れないとされている。黒曜石を使った鎧は、一生錆びず、傷や壊れる事は無いと、鍛冶屋は言っていた。


大事な鎧を綺麗に磨き、装備する。

鎧を着ないとなぜか落ち着かなくなる。多分、暗黒騎士だからだろう。


「炎よここに顕現せよ」

落ちている薪を集めて、それに向かって魔法を唱えた。

唱えると、瞬時に炎が上がり薪を燃やし始めた。暖かい炎が、鎧を包み込む。


「明日は、どこに向かえば良いんだろう」

焚き木の横で寝転びながらそう考えていた。

地上の事は一切知らない。それでも冒険者の事は知っている。夢と希望と仲間を見つける職業だ。俺もそんな冒険者になりたいな。


「ふぁぁ、眠い」

段々と眠くなり、重い瞼を閉じた。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


眩しい光が鎧から、瞼を通して瞳を刺激する。手で影をつくってから、ゆっくりと目を開けた。

朝を祝福する様に鳥の囀りが鳴り響く。

ヘルヘイムでは、ありえない光景だ。


「ふぅ、水を浴びるのは久しぶりだ」

俺は、兜を脱ぎ。水で顔を洗う。

暖かな風と太陽の光を受けながら、頬を透明に煌めく水が流れ落ちる。


顔を手の甲で拭い、兜を被り直す。

置いていた鞘を腰に括り付け、道沿いを進んで行く。途中、動物らしき物がいたので近くに行くと、美味しそうな兎が草むらから、耳だけをちょこんと出していた。


「すまんな」

俺は草むらに静かに近づき、腰の剣を取り出し無音で突き刺す。音も出さずに兎はグタッと倒れて、動かなくなった。


近くに切り株があったので、そこに座り込み魔法で炎をつける。先程殺した兎の皮を剣で剥ぎ、骨を持って肉を、炎で炙った。

炎に兎の肉から脂が垂れ落ちる。


「ぐぅぅ……」

俺の腹が我慢できずに鳴り響いた。

魔族と戦っている時から、一切食事を取っていなかった。地上に出て初めての食事だ。


兜を外し、肉を持って豪快に齧り付く。口の中で肉がとろける。噛めば噛むほど甘い脂が溢れ出て来る。黙々とかぶりついていると、あっという間に肉は無くなっていた。


「こんなに美味いのか!?」

口の中には、ほのかに甘みが残っていた。こんな肉を食べたのは初めてだ。

ヘルヘイムの兎は、表皮が赤黒く。肉は硬く、禍々しい臭いがする。味は、干からびた草を食べている感じだ。


腹を満たし、少し身体が楽になった。

俺は、兜を被り直して剣を腰の鞘にしまい込み、道沿いを進み始めた。


途中、美しく透き通る様な川を渡り。薄暗い森を通ったが、人間の種族には一度も出会わなかった。


「はぁ、はぁ。ここは、本当に地上なのか?」

太陽を見ると、もう直ぐで沈みそうだ。何回、野宿をするんだと考えていると、真っ直ぐの方向に何やら炎の黒煙が天に上がっていた。


「休むだけなら、あんなに煙は出ないはずだ」

俺は、腰にある剣を確かめる。もしかしたら必要になるかもしれない。

煙が上がっている所まで地面を全速で蹴り進んで行く。鎧が風を纏いながら金属音を鳴り響かせる。


目的の場所までは、約1分ぐらいで着いた。5キロくらいだったのでこれが普通だろう。

鎧に付いた砂埃を払い、正面向くとその光景に呆然とした。馬車の馬と思われる物が無残な姿になって。それを、何者かが集団で囲っている。



「あ、あの! ほ、冒険者の方ですか!?」

背後を振り向くと。そこには、少し軽い怪我を負っている、老人の人間族が立っていた。


「これは一体………」

「助けてください! お礼は! なんでもしますから!」

老人は、俺の鎧を掴みながら必死に訴えかけていた。


「それより、あの集団は?」

「アレはゴブリン! 憎き小鬼の魔族です」

「ゴブリンだと………」

「でも、リーダーはいない様ですから、冒険者1人でも大丈夫なはずです」


俺は驚いていた。

馬を襲っている奴らが、あのゴブリンだと老人は言うのだ。

俺が知っているゴブリンとは身体つきも全然違う。臭いも、周囲に放つ殺気も、まるで石ころ並みに感じる。

ヘルヘイムのゴブリンは、身長は俺の肩らへんまであり。身体は真っ赤に染まっていて。身体中から筋肉の筋が浮かんで見える。それでも、俺の相手では無いんだが。


地面に頭を付けながら老人は頼んできた。

「お願いします冒険者様!」

「奴らを殺せば良いんだな?」

「良いんですか!?」

「構わん………」


地面に頭を付けている老人の肩に手を置いた後。俺は、ゴブリンの元に剣を構えながら向かって行く。近くに行くにつれ、辺りの地面が血で染まっていた。


俺に気づいたのか、ゴブリン達は奇声を上げて近づいてきた。

「ニィンゲェンカァ? コロォセェ!」

「フンッ」


真っ先に突っ込んだきたゴブリンに向かって剣を振る。首が飛ぶのではなく。俺の剣を受けたゴブリンは、跡形もなく身体がバラバラになっていた。物凄い音と、血飛沫の音が木霊する。


「シャアラァァァア!?」

他の見ていたゴブリン達が驚いた様子で、後ろに後ずさりをしている。俺は、すかさず地面を蹴り進んで、高速でゴブリンに剣を叩き込む。

剣を受けた部分から肉が砕け出し、肉片となって辺りに吹き飛んだ。


真っ赤に染まった血を剣から払い落とし鞘に静かにしまい込む。

周りにはゴブリンと思われる肉片が散らばっていた。


静かに老人の元へ戻る。

「終わりましたよ」

「えっ? もう終わったんですか?」

老人は、驚いた表情で困惑していた。


老人を、ゴブリンの死体が落ちている所まで連れて行った。

「こ、これは………」

「この通り、皆んな殺しましたよ?」

「お前さん。白金(プラチナ)の冒険者なのか?」

白金(プラチナ)?」


立派な髭に手を付けながら、老人は唸る様に俺の鎧を眺めていた。

「そう思えば。お主、冒険者の証はどうした?」

「冒険者の証ですか?」

「そう、冒険者の証だ。持っていないのか?」

騎士は迷いもなく、首を横に振りながら、

「持ってないです」

「はぁ、やはりそうか。なら、この先にあるイニティウムと言う町に行くといい」

右の方向を指しながら老人は言ってきた。


「イニティウムですか?」

「そう、イニティウムだ。その町の中に冒険者ギルドがあるから、そこに行けば冒険者の証が貰えるぞ」


騎士は少し考えた後、一回頷いて。

「分かりました。では、そこには行きたいと思います」

「あぁ、それと。先程はありがとうな」

老人はそう言いながら、何やら俺の手に固く丸い金属を渡してきた。


「これは?」

「少ないが、1,000バリスだ」

「1,000バリス?」

「お金じゃよ、お金。気持ち程度だけどな」

どうやら、地上だとお金の単位も違うらしい。

ヘルヘイムは、お金の単位は1アビスだった。

今、俺が持っているのは全部ヘルヘイムのお金。単位が違うのなら、地上では使え無いと言うことか。


「ありがとう」

「いやいや」

必要そうなので、老人からお金を受け取る。

「では、これで……」

「待て」

老人は片手に小さなナイフを持ちながら、ゴブリンの死体を切っていた。


俺が老人に近づくと、老人はゴブリンから取ったと思われる紅い玉を投げてきた。

それを受け取り、不思議そうに眺めていると、老人が説明してきた。

「それは、魔族から取れる魔血晶(まけっしょう)。ギルドに持ち帰るとバリスに変えてくれる」

「魔血晶?」

「これも知ら無いのか? 魔血晶とは、魔族から取れる血晶。強い魔族になるほど多く取れる。凄いエネルギーがあるらしく、都市だと重宝される」

「あぁ、ありがとう」


「またな」

「…………お、おお。気をつけるんだぞ」

黙々と老人はゴブリンの肉片から魔血晶を取り出し、俺に渡してきた。

それを受け取り、異空間にしまい込んだ。

驚いた表情をしていた老人を置いて、俺は片手を上げながら町に向かって歩き出した。


バナナアザラシです。


今月はこれで更新が終わりかもしれませんが、あと1回更新するかもしれませんで。

不定期ですいません。


ダークナイトの名前を、まだ決めて無いのが少し辛いです。

誤字、脱字があればよろしくお願いします!


読んでいただきありがとうございました!

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