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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、覚醒する。
96/110

10-6

一方、遠巻きで見つめるジェシカ達はナツメのあまりにも強い姿に戦慄していた。


「何という…アレがナツメの…‼︎」


「ええ…我が子ながら恐ろしいものです。今この瞬間あの時の言葉を取り消したいものですわ。」


先日ジェシカがナツメに言った独自魔法への手がかりがこの様な形で現れ、その結果が自身が苦戦した7神柱を圧倒するというもので証明された為、その反動を恐怖したジェシカは顔を強張らせる。しかし、その中で太志だけはただ1人違う感想を言い放った。


「俺とジェシカの子だ。この程度で自らを失わないだろう。ナツメにとって一番の危惧はこの力に溺れる事ではない。この力によって努力を止めることだ。」


「太志殿…それは…?」


「今のナツメは向かう所敵なしといった力を付けている。恐らく残りの7神柱と戦うのは簡単であろう。だが、それで味を占め努力を怠り、来る魔王との対峙を迎えて魔王がナツメ以上の強さを誇っていたらどうする?我々にとってナツメの死は敗北だ。」


太志の言葉に静まり返る2人。今はナツメの体では無くこの先を心配すべきと言い放つ太志に対し、反論1つ返すことができなかった。


「そうね…私達の仕事はナツメを心配する事ではなく、あの子が正しい選択をする様導く事ね。」


「その通りだな。…そしてまずはこの場をナツメに任せた以上、彼の雄姿を見て記憶するのが我々の仕事であるな…。」


太志に言われ頷きながら、2人の視線はナツメの姿を追う。その眼差しには親の愛や英雄を見つめる希望を乗せておりー


ーその眼差しを知ってか知らずか、ナツメは一度ニヤリと微笑む。


「アザゼル。一つだけ貴様に聞くべき事がある。貴様らはどうやって俺らの情報をリークしている。」


「ふ…この私が…同志を裏切る事等あり得ない…‼︎」


「そうか。ならばー」


言葉を切り、溜息を吐く。そして目線は再び書へと移り


「天貫く煌めき、天啓の懲罰。運命の神より賜る死は、何人にも逃れる事が出来ぬ運命となる。肉体の死、魂の消滅。如何なる苦痛を与える刃よ、かの者の罪を裁きたまえ。摘み採れ…『滅魂昇華ラストワード』‼︎」


「くそが…っー‼︎」


アザゼルの体を縦に挟む形で現れた巨大な鋏は、彼の最期の悪態ごと真っ二つに切り裂く勢いで閉じられた。

その傷口からは鮮血1つ滴らず、その代わり断面から徐々にその体を蝕む形で体が消滅し始め、やがてその全てが消滅し切った時鋏はその魂を導くが如く霧散していった。


『中々良い出来ですよ。ナツメ。』


「ありがとう。周りを巻き込まないかヒヤヒヤしたよ。」


『私がその様なミスを致すとでも?私が殺すのはあなたが憎む人と私が愛するあなただけですよ。』


「…愛が重たい事で。その点は母上と同じなのか。」


冗談を交えつつナツメはその姿を元に戻し(とは言え元々変化はあまり無いが)ジェシカ達の元へと歩く。すると、ジェシカ達はナツメを見てホッとした表情を見せながら近寄る。


「無事、エジプトの7神柱を倒しました。」


「ああ、よくやってくれた…ナツメ‼︎」


パシフィスタの大きな手がナツメの背中を軽く叩く。それに笑顔で返していると


「ナツメ、よくやりました。立派でしたわ。」


「うむ。ご苦労だった。」


「父上、母上…。ありがとうございます。そして心配をおかけしました。」


2人に頭を下げ礼と詫びを入れる。だが、それに対しジェシカは微笑むだけで済まし、太志は首を振る。


「真に謝るべきは我々では無い。あの子であろう。今はまだ眠っているが…目覚めたら許されるまでイギリスに戻るな。」


「太志殿、それはあまりにも…」


「いえ、パシフィスタさん。構わないです。これは俺の心の弱さ故ですから。」


太志の提案を止めようとしたパシフィスタを止めつつ、ナツメはアメンの方を向く。そちらを見ると、未だスヤスヤと眠るアメンを守るハルトが気付き、周囲に貼っている結界を解いてナツメ達の元へと駆けた。


「お疲れ様です。先生。」


「ああ、助かった。ハルト。お前にも迷惑かけたな。」


「い、いえ。あれ位気にする程でも。」


ナツメの言葉に照れるハルト。だが、すぐにその表情を戻し口を開いた。


「それよりもイギリスの皆が心配です。すぐに戻りましょう。」


「ああ。だが、俺は一度アメンの様子を見てから戻る。ハルトは皆と一緒に戻ってくれ。」


「…わかりました。待ってますよ。」


「ああ。…ではパシフィスタさん。後ほど。」


「分かった。では皆行くぞ…‼︎」


ナツメの目を見て頷いたパシフィスタは、その場に次元の裂け目を作り出す。その中に入りイギリスへと戻った一同を見送った後、ナツメは眠るアメンを抱え寝泊まりしていた宿舎へと戻った。

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