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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、幻惑される。
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9-6

パシフィスタが激しく戦闘を行っている中、ジェシカは私怨でレイナを縛り続け、ナツメはアメンが逃げない様に扉の上に座り込み、呻くアメンを眺めていた。そんな自分とのギャップに呆れつつも、パシフィスタはナツメの元へと近づく。


「何か情報を得れたのか?」


「いや、この子が確定の敵では無い事位ですね。」


「ほう…?それは何故だ。」


ナツメはパシフィスタの戦闘中に聞き出した事を伝える。どうやら、このアメンという女はエジプト国王の娘らしく、魔王復興軍に一族を捕縛されそのまま活動を共にしているだけらしい。


「成る程、つまりはしょうがなく敵になっているのか。」


「え…ええ…っだから…このバカを下ろして…っ死ぬ…マジで重い…っ。」


「誰がバカか教えて欲しいが?」


「ふみゅ⁈ た、たすけ…いたいいたいっ⁈ごめんなさいっごめんなさいいいっ‼︎」


どうやら先程からこの流れを繰り返しているらしい。呆気にとられたパシフィスタは溜め息を吐きつつナツメを下ろし、アメンを仰向けにさせた。


「す、すまない賢王…。生き返った…。」


「まぁ…完全な敵でないなら無理に奪う命でもない。」


「それでも扉は上のままなのですね。」


「いや下だから⁈誰がまな板だ‼︎ちゃんとあるわ‼︎つか普通にあるわ‼︎もうやだこの男大嫌い‼︎」


ナツメにバカにされて泣き喚き始めるアメンに呆れつつ、パシフィスタはそっとナツメに耳打ちする。


「…で、これどうするんだ?」


「母上が終わり次第情報を集める為に持ち帰りますか。」


「うむ…で、あれはあれでどうしたいんだ…?」


「…わかりません。」


視線の先には目と鼻以外を封じられたレイナと、疲れたのか座り込んでるジェシカがいた。

それを見て呆れつつジェシカに近づいていくと、何かを悟ったのかパシフィスタは急に足を止めた。


「…おい。ナツメ。嫌な予感がするぞ。」


「…はい?何かありましたか?」


「いや、考えてみろ。ジェシカ殿が影魔法を使って疲弊するか?」


「…確かに。母上の影魔法の殆どは常に放出している魔力なので必要以上に別属性魔法を使わなければ疲れなど無いはず…。」


「…警戒しろナツメ。もしかしたら敵の手に落ちているかもしれない…‼︎」


パシフィスタの警戒に応える形でジェシカがゆらりと立ち上がる。そのまままるで取り憑かれたかの様な動きを見せるジェシカは、ゆっくりとその足取りを確かめつつー


「乗り移るのに時間がかかったわ。流石最強の魔法使いね。」


ニヤリと口角を上げながら2人に向かい影の腕を伸ばした。

その腕を回避する為2人は左右に分かれる。だが、それを予測していたかの如く動きで急激に方向転換した。


「『模倣・暗黒吸収』‼︎ナツメ、絶対に触れるな‼︎捕まれば奴の思うツボだ‼︎」


「わかってます…‼︎『瞬時閃光フラッシュバン』‼︎」


パシフィスタは迫りくる腕を吸収し、ナツメは一瞬の光で影を打ち消した。

そして反撃の為に魔法を唱えようとしてー2人は躊躇した。その瞬間を逃さないジェシカは、更に4本の腕を伸ばし2人を捕まえようとする。


「くそ…っ‼︎上手い事やってやがる。俺らは母上に攻撃できないと踏んでやりやがった。」


「ああ…。つまり本体に攻撃を行わなければならない…‼︎だが、その本体も今やジェシカ殿の腕に守られている…‼︎」


「…。恐らく強力な光源ならばあの影を払えるかもしれません…。」


迫りくる腕をいなしつつ、2人は作戦を練る。しかし、レイナ本体に巻き付いた腕を全て払う程の強力な光源を生み出す魔法を唱える時間をジェシカが与えるはずも無く、2人は苦戦を強いられた。

その時、捕まったままのアメンが2人に対し声をかける。


「…ねぇっ。私ならあの腕払えるんだけど。」


「…何⁈だがお前を信用などできるか。」


「まぁそうなるよね。けど私もこいつらを倒して家族を取り戻したいの…‼︎」


「それを信じれる方法がない。…もし裏切ったなら家族一同市中引き摺り回してもなお怨むぞ。」


「…お願い、信じて。もし裏切ったなら私も家族も末代までも永劫好きにしていいから。」


「裏切ったなら末代はお前だぞ?家族とそれまでの歴史が潰えても構わない覚悟があるなら任せてやる。」


半ば自棄になったナツメの声にアメンは頷き、それを見たパシフィスタは警戒をしつつも鎖を解除する。

完全に解き放たれたアメンは一度体を伸ばし、その身に怪我がない事を確認すると頷きレイナを見つめた。


「ごめんなさいね。私はエジプトの繁栄よりも家族の安寧が大事なの。だからここで手を切るわ。

太陽の加護、陽炎の悪魔。日を司りし何時の姿は、全てを照らす邪悪な輝きとならん。砂漠を照らし、天に逆らう陽光となれ。照らせ‼︎『太陽偏光アドラメレク』‼︎」


アメンが放った魔法は、強大な光を帯びつつレイナの真上に上がり、更に強烈な陽光となって周囲を照らす。そのあまりの輝きに一瞬にして影は消え去りー


「今よ‼︎」


「『模倣イミテーション次元貫砲ディメンションピアス』‼︎」


「『氷結監獄アイスケージ』‼︎」


パシフィスタの放った魔法はレイナの腹部を貫き、ナツメの放った魔法によってその体は氷柱で串刺しにされ動きを封じられた。その瞬間、ジェシカの体がビクンと跳ね上がり、糸の切れた人形の如くその場に倒れこむ。


「母上‼︎無事ですか⁈」


「…ナツ…メ?どうかしましたか…?」


「うむ、無事の様だ。…助かった。エジプトの娘。」


「…こちらこそ。」


ジェシカの無事を確認した3人は、改めてレイナを見る。既に満身創痍となっている彼女の体は、動けぬとはいえ未だに不気味さを放っている。


「…これは死んでるのか…?」


「恐らく。だが、この女何処か嫌な雰囲気を醸し出している。」


「まるで以前戦った傲慢の様に悪魔を憑依させている感じです。」


「…何⁈」


ナツメの言葉にアメンが驚く。どうやら、悪魔を憑依させる事に関して何かを知っているらしい。だが、今は目の前のレイナについてどうするかを決める事が優先と決めたナツメは、次の行動について考え始める。


「どうします?このままアメンが居れば敵地まで行けると思います。しかし、母上の容態も気になります。…どうします?」


「一度引くべきであろう。幸い生き残りも居ない。すぐ様彼女の家族が殺される事はないであろう。」


「私も同感です。今の状態では奴らを討てません。一度戻りましょう。」


パシフィスタとアメンの言葉を聞き、ナツメは頷く。そのまま串刺しのレイナに背を向け4人は一度ホテルへと向かった。



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