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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、幻惑される。
82/110

9-2

真っ暗な穴の中を落下していくナツメ。とりあえず、落下速度を軽減する為に風魔法を使い、緩やかに地底へと降り立った。


着地するとそこには炎で灯された一本道があり、その壁面を見ると古代エジプト時代に描かれたであろう壁画があった。


とりあえず警戒しながらも道なりに進み、その道が何処へと繋がっているのか見定めようとする。しかし、その道のりは思った以上に長く、広場に着いたのは1時間後だった。


「この広場はなんだ…?」


一面が砂の壁で出来た広場に出たナツメが最初に見たのは、縦に飾られた巨大な棺だった。

通常横になっているそれは、まるでこの道を通ってきた罪深き人々を見下すかの如く威圧感のある双眸が描かれた棺で、その瞳に射抜かれたナツメは思わずたじろいだ。


「何という大きさだ…。まるで7神柱のー」


『ルシフェルの様だ…でしょうか?』


「ッ⁈ 誰だ⁈」


突然響いた声の方向を振り向くと、そこには正に妖艶といった言葉が似合う女性が立っていた。その女性はゆっくりとナツメに近づきながら微笑みを絶やさず、ナツメもその姿に目を奪われてしまう。


「その警戒心の強さ…分かるわ…貴方、ナツメ・レイニーデイでしょう?」


「こんな場所に送られたら誰でも警戒するとは思うが。で、あんたの名前はなんだ。」


「アメン・リアナトホテプよ。こう見えて古代から続く家系の一族なの。」


「よろしくはしないがな。どうせ敵であろう。」


「御名答。けど今は何もしないわ。それより何故敵だと気付いたの?」


アメンの言葉に鼻で笑いながらナツメはその違和感の正体を突き付けた。


「簡単な話だ。俺を救世主と呼ぶのは魔王軍のみだった。連盟は俺を勇者と呼ぶものでな。」


「あの男しくったのね…使えないわ。」


ナツメの言葉に親指の爪を噛む仕草を見せ、明らかな悪態を吐く。しかし、表情をすぐ様戻し、アメンはナツメへと近づいた。


「理由はわかったけど。貴方の力ならこの場を逃れる事も出来たのでは?」


「まぁあの高さを浮き上がる位造作も無いが。それより敵地を調べたくてね。」


「あら、意外と研究熱心なのね。けど残念、ここはそんな大それた場所では無いわ。」


アメンの言葉に対しやれやれといった表情でナツメは肩をすくめる。それを見たアメンは、クスクスと笑いつつ背を向ける。


「それじゃ、用が済んだのなら帰りなさい。本拠地ではなくても敵地なのは事実なのだから。」


「ご忠告痛み入るよ。では帰らせて貰う。が、道がわからなくてな。」


「そのまま上に上がれば酒場の地下よ。」


「度々申し訳ない。ではー。」

アメンの言葉を信じるふりをしつつ、ナツメは魔力を貯めー目の前にある巨大な棺を撃ち抜いた。するとー


「⁈」


「やはり隠し通路があるか。まぁそれだけ確認しておきたくてな。」


「貴様ーッ⁈」


思わず魔力を手に集め放とうとするアメン。しかし、それを受ける前にナツメは飛翔し、天井にある砂に手を当てる。


「それじゃあ次回また会おう。『爆炎業火バックドラフト』‼︎」


「にがさ…熱っ⁈」


ナツメの魔法により融解温度まで燃やされた砂は溶け落ち、ジュッと溶ける音を立てながら地下の広場をマグマで埋め尽くし始める。その勢いはどんどん広がり、やがて頭上には大きな穴、足下にはマグマ溜まりを作ったままナツメは地上へと浮き上がる。


そのまま、直ぐにジェシカとパシフィスタへと連絡を交わす。すると、両方ともどうやら取り込み中らしく、直ぐには返事が無かった。

結局、偽名を使い借りたホテルへと移動をし、ナツメは1人ジェシカ達の帰りを待った。

1時間後。砂だらけになった2人がナツメを見てお前もかとなり、3人は事の詳細を話し始めた。


「どうやら相手の方が一枚上手らしい。手回しが早いな。」


「ええ、その様ね。こちらの欲しい情報を餌に釣り上げたなんて凄く狡猾だわ。」


「…恐らく、敵の拠点がこのカイロなのでしょう。地下には巨大な広場がありましたし。その中にある棺を壊したら通路がありましたので、俺らの辿りついた地点は繋がっているかと。」


「…となると敵の本拠地は恐らくその中の何処かか、その付近にある建物か、中央ね。多分あれは魔法陣か何かよ。」


ジェシカの推測に頷くふたり。しかし、一つ疑問があった。そこでナツメは空中に地図を描き出し、3人が釣られた地点を繋ぐ。


「綺麗な直線ですね。魔法陣にこの様な形は無いかと。」


「ふむ…つまりは何かの一部なのか?」


「…もしかして、正方形かしら?」


ジェシカはナツメの書いた地図上に、各点からの距離が等しい地点を描く。そしてそこには酒場があり…


「この4点の酒場には合言葉についての情報があるわ。つまり、ここが部外者を捕まえるポイントなのよ。」


「成る程‼︎…しかし、だからと言ってそれが何かまでは…。」


「…わからないわ。残念だけど。何かヒントがあれば良いわね。」


再び項垂れる一同。結局、この日はそれ以上にめぼしい事がわからず、翌日に再度情報を集める事にした。

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