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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、教育する。
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勇者、教育する。

ナツメ達がイギリスから帰国し、藤堂が学園に戻ってから一週間後。

学園は再びその門を開き、今までと何ら変化の無い学園生活が始まった。その日の朝。


『これより、全校集会を行います。生徒、教員各員は第一体育館に集合して下さい。』


規則的なチャイムの後、校内放送がかかる。それに合わせて各クラスの生徒は担任の引率の元第一体育館に向かった。本日は休校開けという事もあり、藤堂による現状説明と新任教師の紹介があるらしい。


『…という事が起きております。ですので、生徒の皆さんもー。』


現在魔王復興軍が活動を活性化させている事を聞いた生徒達はどよめき、そしてその顔に不安と焦燥を浮かべていた。だが、既に日本には居ないこと、それを討伐したのが特別クラスと日本・アメリカの首相だと聞くと大きな歓声が湧き、ナツメを含む特別クラスの全員に大きな拍手が送られた。


『ー今回の件で特別クラスには風祭焔首相より国民栄誉賞が贈呈されております。特別クラス代表、ルナ・オークス。前へ。』


「はい。」


名前を呼ばれたルナは壇上へと登壇し、藤堂の手より国民栄誉賞の証書と記念品が贈呈される。それを受け取り、一礼をした後にルナは壇上のマイクの元へと足を進めて、深呼吸をした後に口を開く。


『この度、国民栄誉賞なる名誉な賞をいただけた事を深く感謝しています。私は、アメリカからの留学生ではありますが、この学園にいる生徒として、この国を守る事に全力を尽くしました。その結果、国の脅威を討つことができ、私達の勝利といった形で幕を降ろせました。しかし、これは偏に私達の力だけではなく、敵の頭を討伐したナツメ先生や殿を務めたクラスメイト達。そして、それをサポートしてくれた上にイギリスの防衛線を張った待機組のクラスメイト達のお陰でもあります。

そしてこれは、私達が特別だからとは思いません。この場にいる誰もが修練し、魔法への探究心を常に持ち続けながら勉学に励めば誰でも行える事です。

幸い、勇者を育成する魔法学園の中でも我が校は現役の勇者や世界に名を轟かせる先生方が在籍しております。この様にどの学校よりも優れた環境でその才能を開花させ、次の世代の勇者として、賢者として、歴史に名を刻む努力を忘れなければ、私達は皆誰もが来たる魔王への抑止力となり得るでしょう。

その身に宿す探究心を忘れず、常に高い志と強い正義の心でこの災悪に打ち勝ちましょう。』


一頻りスピーチをしたルナは頭を下げ、降壇する。その内容に圧倒された生徒達は、ルナの降壇を見送った後に遅れて大歓声をあげた。その光景に藤堂は微笑み、ナツメもルナのスピーチを聞きいる様にして拍手を送っていた。


その後、藤堂は短い言葉で締め、新任教師の紹介へと移る。


『それでは本日より赴任された先生の紹介を行います。名前の呼ばれた先生は登壇して下さい。』



進行役の生徒の段取りの元、名前を呼ばれた教師が次々と登壇する。すると


『ー日本史教師・宗方刀奈先生。』


「ほい。」


余りの驚きに特別クラスの生徒とナツメはズッコケ、他の生徒からは可愛いと言った黄色い歓声が湧き始めた。というか刀奈は教員免許あるのかすら不明だが


「鬼道の生き残りで尚且つ転生した人材ならばその目で見てきた歴史を語るのですよ。これ程力強いものはない。」


降壇し、いつの間にか隣に来ていた藤堂はナツメに微笑みかけつつも、耳打ちしてきた。だが、それは大きなどよめきと共に消え去る。


『魔法学教師・風祭風雅先生。』


ナツメの予測通り現れた風神・風雅はナツメと特別クラスに軽く微笑みかけた後、厳格な表情に戻した。その後、教師陣は降壇し最後に藤堂が締めの挨拶を行った所で全校集会は終了した。


その後、生徒達を教室まで送った後ナツメが職員室に戻ると、刀奈、風雅を除く新任教師達は緊張した面持ちで職員室内を右往左往していた。


「やはり風雅さんが藤堂先生と共に魔法学を教える形になるのですね。」


ナツメの声に気が付いた風雅はにっこりと微笑み、


「ああ、雷神から直接頼まれたものでな。この老体でどれ程力添えできるかはわからんが…よろしく頼むよ。」


「老体なんてそんな。今尚その風格は衰えを見せていませんよ。」


「なんじゃナツメ。そこの風神と知り合いだったのか。」


「これは刀奈殿。ご無沙汰しております。」


「あれ、刀奈ちゃん風雅さんと知り合いだったの?」


「知り合いも何も此奴も雷神と共に鍛錬を積みに来た事があるのじゃ。30年程前だがのぅ。」


刀奈と風雅の意外な関係を知ったナツメは驚き、それを見て風雅達はニコニコとしていた。だが、3人の和気藹々とした会話をまるでスターの会合の如く渇望の眼差しで見ていた他の教師達は、その作業を止めただただ見つめているばかりだった。それをあまりよく思わなかったのか、刀奈がいきなりある1人の教師に指を指す。


「お主。何故妾達を見つめる。何か用か?」


「い、いえっ‼︎その、御三方の関係が気になったりしたもので…。」


確かに、方や勇者、方や前首相、そしてもう方やロリである。2人は良いとして刀奈の存在は異様だった。さらに、刀奈は世界に名を轟かせた2人に対し何の敬意も払う事なく話している。しかも、ナツメに対しては何故肩に乗せぬと怒っている始末である。疑問に感じ得ずには居られなかった。その疑問に対しナツメが微笑みながら口を開く。


「刀奈ちゃんは俺や風祭さんの師匠でもあるからね。これだけ可愛らしいけど強さは俺らと大差ないと思う位に強い存在だ。」


「私は既に衰え勝ち得ぬがな。」


「と言うより風神雷神は神を名乗る癖に妾に勝てた事がないのぅ。勇者は妾のお気に入りじゃから手を出さぬがの。」


「こっちとしては一度本気を見てみたいけどね。」


「は、はぁ…。」


3人の会話に呆気にとられる教師。だが、彼の中ではこの3人には逆らうべきではないというヒエラルキーが芽生えたらしく、早々に職員室から立ち去った。それを見た刀奈はニッと笑いながら少量の悪意を振りまき


「つまらぬ。妾に食いかかる位の器量はないのか。保守的すぎるのぅ。」


「刀奈殿が血気盛ん過ぎるのでは…。」

「刀奈ちゃんはお転婆だからなぁ…。」


「お主ら‼︎妾でも怒る事はあるぞ⁈」


ナツメと風雅の言葉に頬を膨らます刀奈。だが、それを見た2人は微笑みながら授業があるからと職員室を後にしたので、それを追いかける様に刀奈が駆け出した。

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