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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、先生になる。
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1-7

暫くすると、2限目の始業を知らせるチャイムが鳴る。

2限目は同じ学年の別クラスを担当する事になっていたので、ナツメは再び訓練所へと足を運んだ。


時間割としては毎日全クラスの魔法学があり、日によって授業時間丸々休みになる時間が変わっている。

それ自体には特に問題ないのだが、教える側となると、同じ事を日に何回も繰り返す事となり、テストの事などを考えるとどのクラスもある程度の必修ラインを設けなければならないので、下手にどこかを贔屓できるものではなかった。


そんな訳で現在Aクラスの魔法学を見ているのだが


「(突出して凄い子は居ないけど皆高レベルで魔法を制御する為の集中力を持ってるな。)」


クラス内で最もSクラスに近い数名を除き、現状初級魔法しか使えない為Aクラスの殆どの生徒は、ナツメが空中に描いた立方体の中で魔法を使って膨らます風船を枠に合わせて膨らまさせる事で、魔法制御力と完成するまでの早さや持続時間による魔力を見分ける事にした。


どの生徒も見事風船を割る事なく、枠のギリギリで留めている。

簡単なテストとはいえ、普通は割ってしまったり、うまく形どれず不格好な風船が出来上がるのに対し、空間把握や魔法制御に長けていた。

思いの外綺麗な出来に感心していると、一人の生徒がいきなり


「ちなみにナツメ先生が行うとどうなります?」


と、無垢な笑顔で聞いてきた。

その質問に他の生徒も感化され、結局はナツメ自身もテストを行う事に。


「いいけど…1つだと早すぎてわかんないだろうからちょっとまってね。」


と、言うとおもむろに立方体を幾つも作り出し、それを並べて空中に巨大な円を作る。

その様子を生徒は期待した眼差しを送りながら、静かに待機している。


「(この鍛錬をやるなんていつ振りだろう。)では見ててね。はいっ!」


次の瞬間、ポンッと軽い音が何度も連続で続く。

その音に驚きつつも生徒が見た光景は更に驚きのものであり、目の前の円では一気に膨らんでは縮む風船が、まるで順序を守っているかのように時計回りでその行程を行っていた。


どの風船も割れる事なく全て「枠通り」に膨らんでおり、一度膨らんだ後コンマ5秒後には縮んで隣の風船が膨らんでいる。

それを連続して行うと言うのは、例えるなら一発も外してはいけない弾丸を毎度眉間に当て続ける位の精度で、魔力を与えては抜いている形となる。

更に驚きなのが、これらの行程を操る魔力源は2つしか存在していない事である。

つまり、『最初に使った魔力』を『次に当てる風船の魔力』を送りつつ、『更に次にある風船を膨らます為の魔力』として残し続けている。

魔力を動かすというのは、移動中もロスを最小限に抑えつつ、目的の座標へと運ばないといけない為、かなりの集中力と魔法制御力が必要な反面新たに魔力源を作るよりも遥かに早く、そして燃費が良い形となる。

しかしながら並大抵の実力では、ロスを抑えるどころか動かす事もままならない状態なので、その点は流石と言うべきである。


無論、その様子を生で見せられた生徒は歓声を上げる事すら忘れ、呆気に取られていた。


「こんな感じだけどどうかな?」


「は、はひ…。」


呆気に取られ過ぎて、気軽に質問した生徒は腰を抜かしていた。

その様子に苦笑いしつつ、生徒を軽く見る。


基礎的な所で言えばこの子たちはDクラスの比にならない程凄い。

しかし、根源的な魔法の才能はDクラスの方が良い。

おおよそ今の自分が行った様な入試形式だったのだろうと頭の隅に考えつつも、ナツメ自身少し困っていた。


と言うのも、自身の魔法の系統が決まっていれば、その方向を極めることで少なくとも人以上の使い手にはなる。

しかし、その系統が無く基礎のみしか無いと合う系統を探さなければいけない。


一見基礎の方が難しい様に感じるが、この系統。実は凄い時間がかかる。

例えば、凛音やミリアムの様に家柄で系統指定をされている人間は特に苦労も無く系統を決めてしまえる。

最も、家柄に合わなければ破門もあるが、それはそれで決める系統は自ずと出やすくなる。


しかし、そういった家柄による拘束が無い場合まずはその人の適正を調べ、その系統の魔法を開花。そこから、系統別の基礎修行となり初めて『系統初級魔法』を覚える事が出来る。

そして、その適正を調べるには『適正診断士』なる国家魔法使いに依頼しないといけない上、その後系統別修行を行うには『魔法系統証明書』を国に発行してもらう必要がある。

普通ならそのプロセスを通過する為に最低1ヶ月はかかる為、魔法学園に入学してから最初の1ヶ月は基礎初級魔法の鍛錬しか行えない。

その間に適正系統を持ってる人間は適正系統の修行を行える為、その差はかなり大きなものとなるのであった。


「(となるとかなりのロスが出る。仕方ない、俺から依頼するしかないかな。)」


通常の機関を通すと時間はかなりかかる為、家柄で系統を決めてる家などは個人の繋がりで適正診断士を呼ぶ事が多い。

それらも、普通ならば由緒ある家系でしか普通は出来ないのだが、そこは世界を救った勇者。ナツメにかかれば明日にでも来てくれるだろう。


「おし、じゃあ明日辺りに適正診断してない人は診断するから、体調整えておいてね。そんな感じで今日はここまでかな。」


一応藤堂にも許可を得ないといけない為、早めに授業を切り上げ訓練所を後にした。



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