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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、奪還する。
68/110

7-8

円覚寺からの帰り道は敵の察知を気にすることがない為、空港までテレポートで戻る。ちなみに置いてきた車は焔が適当に呼び寄せた使用人達によって元の場所へと戻された。

帰路も同じ様に青森から北海道、北海道から東京へと戻り、風祭宅へと到着した。

玄関を開けると使用人が一同を迎え入れ、すぐ様焔の両親の元へと案内された。


「おかえりなさい、皆さん。焔、お疲れ様。」


「ただいま戻りました。」


全身傷だらけの4人と、疲労困憊のルナ以外の生徒達を迎えた風祭夫婦はすぐ様一同を座らせ、水萌に回復魔法が使える者を手配させる。


「とにかく今は休みなさい。傷を癒してからでも報告は聞けます。」


風雅はそう言うと一同を昨日泊まっていた部屋へと送り届ける。

その流れで焔もナツメを連れて部屋に戻ろうとする。しかし、ルナがそれを止めた。


「今日は私が傍に居ては駄目ですか?」


「…しかしナツメは私の部屋で…」


「お願いしますっ‼︎なんだか今離れるとナツメ先生が消えてしまいそうな気がして…。」


ルナの必死な懇願に困り果てる焔。というのも、焔も同じ事を考えており、そのルナの姿勢を強く否定する事は出来なかった。


「…それなら、仕方ない。お前も私の部屋に来い。」


「そうくるとは…いえ、ありがたくお邪魔します。」


一瞬ルナが不機嫌そうな顔をしたのを見逃しつつ、焔はルナとナツメを連れて自室へ向かった。

ちなみにナツメは到着した瞬間安心と疲労により既に深く眠りについている。途中までは使用人が運んでくれたものの、部屋の中へはルナと焔が肩を貸しあって運びベッドへと寝かせた。


「…よく眠ってますね。凄く優しくて可愛らしい寝顔です。」


「それ男に言うと失礼だと思うが…否定は出来ないな。」


すやすやと寝息を立てて眠るナツメを、2人は幸せそうな顔で見つめながら自身も眠気が来たのか、ベッドに顎をついて地べたで寝てしまう。暫くして、医療班が到着し焔の部屋をノックして入った際には、闘いの激しさを物語る生傷の数々と幸せそうな3人の寝顔のギャップに微笑みながら回復魔法を唱えていた。


その頃、眠りについたナツメ達の代わりに各国の首脳陣と連絡を取るセラフィムは、回復魔法を受けながらも喜び賞賛するパシフィスタ達と次の行動について考えるセルベリアと興奮と苛立ちを隠す気のないジェシカの対応に追われため息をついていた。


「本当はこれ風祭首相の仕事なんだがな…。」


肩を落としつつ喚くジェシカに追われて苦笑を漏らすセラフィム。まさか世界最強と謳われた女性がこんなにも親バカだったとは…。いや、ここまで親バカだからこそ彼の体に埋め込まれた偶然の秘術があるのかもしれない。


『くぅ…こちらがこんな状況でなければ即座に私が駆けつけていたのに…‼︎』


「それはそれで心強いですが…。所で今そちらはどの様な状態です?」


『こちらは今まさに接触しようとしている所だ。先遣隊が海底に潜り、奴の寝床を暴きにかかっている。』


「了解です。こちらからも彼の容体が良くなり次第戦力を送ります。」


『助かる。とりあえずナツメが早めに来てくれると狂戦士達が落ち着く。』


どうやらあちらはあちらで困り果ててるらしい。その状態に苦笑しつつセラフィムは


「それならゆったりと休めてから送り出しますよ。」


と冗談で返した。

その後、テレパシーを止め自身も体を休める為横になる。

目を閉じ、頭の中で思い出したのは先程のナツメの姿だった。自身が堕天しても勝てない相手に対し文字通り死を乗り越えて戦う彼の姿はまさに勇者そのものだった。


「…俺もまだまだ青いんだな。」


虚空に呟くその姿はまるで圧倒的な敗北感を味わった戦士の様だった。だが、その顔はすっきりとしており、何かに新たな気持ちで臨むかの様な表情をしていた。


「…という事らしい。我々も頑張らなければな。」


一方、セラフィムから報告を受けたパシフィスタはイギリスに残った生徒達に知らせる。すると、それを聞いた生徒達は皆一様に目を輝かせたり慌てたりと反応しており、それでも最後には命の犠牲なく勝利した報告を聞いて安心した様子を見せていた。また、パシフィスタは生徒達の心配心を煽らない様にする為にナツメの勝利に至るまでの行程を説明せずに有耶無耶にして伝えた事もあり、ナツメの活躍を讃える声などで辺りは騒然としていた。

だが、事実を知るパシフィスタ、ジェシカは表面では微笑みを保ちつつも互いのテレパシーでは


『罪な男だな。勇者とは。』


『まぁ私が太志を除けば世界で一番愛している男ですから。しかしこの娘どもは私のナツメをあたかも自らの男の様に好んでるのがムカつきますね。だいたいあの子は私の物であり私の愛のみを受けるべく生まれた存在であって…』


『…ジェシカ殿。流石に我でも引くぞ。』


と、ナツメという存在が如何程に大きいのか理解した上でジェシカの危ない愛を否定していた。


そしてその晩。一同が目を覚ました日本と待機組のいるイギリスでは戦勝祝いの席が持たれた。無論お酒は病み上がりのメンツと戦を控えているメンツは適度にしか飲まなかったが、両国で行われた小規模ながらナツメ達の健闘を讃えては賞賛を繰り返すといった、本人達からすると気恥ずかしい反面戦闘が1つ終わったという安堵感でたくさんになっていた。

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