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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、奪還する。
63/110

7-3

突然撃ち抜かれた瑛里華は腹部に小さな貫通跡を残しつつ、何が起きたのか分からないといった表情で見渡す。どのタイミングで抜け出したのか…そもそも、なぜあの状態から抜け出せるのか一切分からないままだった。


「どうやらわかってない様ね。教えてあげるわ。」


ゆっくりと降下しつつ、ルナは焔に打ち込まれた氷を溶かし、威力は無いが柔らかな陽射しの如く暖かな光で焔を包み、彼女の体温を上げる。


「風祭首相、しっかりしなさい。これっ‼︎」


ルナは焔に活力薬を飲ませつつ、瑛里華を睨み付け彼女が安定したのを見守ると立ち上がっては瑛里華の前に仁王立ちした。


「簡単な話よ。私の体に光を纏っただけ。その熱で氷は溶け、私は動く事ができる。だからあとは蹲って素肌全てを隠し、貴女の目を欺ける状態にした所で私は体を『粒子化』した。『幻影水霧』の光バージョンよ。咄嗟だったから下着まで脱げたけどね。」


そんな恥ずかしさよりももっと優先すべき事がある。とばかりにルナは瑛里華に滲みより、魔力を蓄える。対し瑛里華は顔を引きつらせつつ


「そんなの…何度もできる訳無いわ…‼︎食らえっ‼︎凍れ‼︎死ね‼︎」


周囲を凍らせ、氷柱を振り落とし、氷壁で押し潰そうとする。だが、当然ルナには効く訳も無く


「『無限光刃インフィニットレイブレード』‼︎無駄よ。貴女が幾ら足掻こうと…私の最速には追いつけないわ‼︎」


『無限光刃』を振りかぶりつつルナは微笑み


王手チェックメイトよ。何処までも届く光の刃で消えなさいっ‼︎」


「ーッぁ…っ‼︎」


断末魔すら残すこと無く御祓瑛里華の体は2つに裂け、なお余りある熱量に燃やされ消え去った。


「…っ…。」


「よくやった…助かったぞ…っオークスの…娘…っ。」


「ええ…っ、風祭首相が耐えてくれたお陰よ…。」


死線を越えた2人は微笑み、抱き合って互いの健闘を讃えた…。


一方、ナツメとセラフィムは傲慢の刻印を狙い何度も魔法を放つ。だが


「…っ‼︎」


「くそっ‼︎でかいくせに動きが早くて狙いが定まらない‼︎」


刻印に何らかの強化魔法も組まれているのであろう。その動きは驚く程俊敏で、その癖一撃が重かった。


「セラフィムさん‼︎危ない‼︎」


「⁈ウォォッ‼︎」


『神腕剛力』を解除しないまま戦っていたセラフィムは、傲慢の放った蹴りを巨大な腕で弾くも、勢いを殺しきれずに吹き飛ぶ。しかし、セラフィムも空中で体を回転させその勢いを流しつつ華麗に着地すると


「ナツメ‼︎合わせろ‼︎『栄光優雅モードサニエル薔薇束縛ローズボンデージ』‼︎」


「ああっ‼︎『風縛圧陣ウインドプレス』‼︎」


セラフィムの放った魔法は傲慢の手足と首に巻き付き、その動きを止める。更に高圧縮された風の塊が傲慢の頭上から降り注ぎ、その体を地面に縫い付けた。


「行くぞ‼︎『薔薇棘剣ローズブレード』‼︎」


「『剣聖憑依』‼︎うぉぉぉぉぉっ‼︎」


2人は左右に刻まれた刻印を肩から指先まで剣で切り裂く。すると明らかにダメージを負った傲慢は呻き、苦しそうにもがく。だが、もがけばもがくほどセラフィムの放った『薔薇束縛』は体に食い込み、その体からどす黒く濁った血を吹き出し始めた。


「手を休めるな‼︎更に続けるぞ‼︎」


それを見たナツメとセラフィムは、傲慢の全身を切り刻み続ける。その度に黒い血が巻き上がり湧き上がる鉄の匂いと腐臭に嫌悪感を示しつつ、思い切り斬りあげる。人の胴体程ある腕が切断され、その勢いで宙に舞った。


「とどめを刺すぞ。ナツメ‼︎」


セラフィムの言葉に頷き、2人で心臓を穿たんと飛び上がり、その切っ先を向ける。だが


「グォォォォォォォォオッ‼︎」


「「⁈」」


突如傲慢があげた咆哮により魔法は解け、2人は受け身を取る事も出来ずに吹き飛ばされた。


「ーッ…‼︎」


「何というタフさだ…‼︎」


「貴様ら…許さぬ…‼︎我が腕を…‼︎我が主人から頂いた刻印を…‼︎許さぬ…許さぬ‼︎‼︎」


がむしゃらに腕を振り、咆哮し、怒りの表情を見せる。そして傲慢は吹き飛んだ自らの腕目掛け走り出し


「ーッ‼︎自分の腕を食い始めただと⁈」


自らの腕を食らい、飲み込む。すると切り口から新たに腕が生えてきて、その感覚を確かめる様に掌を開いたり閉じたりする。そして再生を確認した傲慢はニヤリと笑い


「貴様らに…傲慢故の神罰を…‼︎『魔人憑依メタモルフォーゼ堕天金星モードルシファー』‼︎」


その姿が光に包まれ、体を包む光が眩く弾け飛んだ瞬間、傲慢の体は人間大に収縮し、その背中には3対の白と黒の羽を持つ男となる。


「…さぁ、断罪の時間だ。傲慢ールシフェル・サタニアスの名の下で貴様を裁かん…‼︎」


ルシフェルが手を翳す。すると、2人目掛けて強風が舞い、その風圧で2人の体を切り刻んだ。


「ぐぅ…っ‼︎」


体から血飛沫を上げつつ、2人は数歩引き退る。だが、それ自体に殺傷力のある攻撃ではなく2人は顔に余裕を残しつつルシフェルに対し放つ。


「大層な名前をしておいてこの程度か。」


「貴様より俺の方が余程堕天が似合う。」


だが、それに表情1つ変える事なくルシフェルは言葉を返す。


「手を翳して吹いた風など魔法ですらない。魔法とは…こういうものだ。」


ルシフェルが指を鳴らす。すると、ナツメ達の周囲を雷を纏った竜巻が4本巻き上がり、2人を閉じ込める。その中は完全に風の暴力と言っていいほど吹き荒み、少しでも気を抜けば巻き込まれるほど強力だった。


だが、即座にナツメは『破邪聖域』を発動し、竜巻を消し去る。その反応は正しく、それにより次の攻撃へと移る為のプロセスを組み上げる事に成功する。だが


「我が待つならば、の話だ。」


「ナツメェェ‼︎避けろォォ‼︎」


「なっ…⁈」


ルシフェルの放った光と闇の魔法は螺旋を描きながらナツメの心臓を貫き、その命を奪った。

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