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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、会談する。
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6-6

焔と共に次元の裂け目を超えると目の前に広がったのは…


「…こ、ここは…?」


「ーッ⁈次元王‼︎出てこいッ‼︎なんでよりによってッ‼︎」


恐ろしい程少女趣味で飾られた焔の部屋だった。

見るからにあたり一面ピンクかつレースやフリルがついた家具やカーテンなど可愛らしい部屋が広がり


「…焔さんってギャップ凄いですね…。」


「そ、そんな目で私を見るのはやめろぉぉぉぉっ‼︎」


会議組の生徒達とナツメに暖かい目で見られた焔は恥ずかしさのあまりのたうち回り始めた。

暫くして息を荒げ顔を赤くしながらも全員を風祭邸にある応接室へと移動する。すると、そこには日本国元首相にして風祭家28代頭首・風祭風雅カザマツリフウガと、その嫁・風祭水萌カザマツリミナモが待っていた。


「只今戻りました。頭首、母上。」


「うむ。ご苦労だった焔首相。」


軽い挨拶を交わしナツメ達を風雅た水萌に向かい合う様座らせ、自分は両面を左右に見れる横の席へと着座した。


「君がかの勇者ナツメ殿か。その節はお世話になった。心から感謝する。」


「いえ、あの後風祭首相の手助けが無ければ俺は寝床すら無かったので。こちらこそお世話になりました。」


実は、焔とナツメは何度か面識があり、その流れでナツメが日本に住む為の住居や書類を作ったのが焔であった。


「構わぬよ。それもこれも焔が好意で行っているものだ。私達に礼を言う必要はあるまい。」


「いえ、しかし…。」


「ナツメさん。本当の事なのです。実際私達は書類を制作する直前に知らされたので…。昔から向こう見ずで動く子なのよ。」


「は、母様…‼︎」


水萌のカミングアウトに慌てる焔。すると、それに追い打ちをかける様に風雅が口を開き


「お陰で今年26になる癖に未だ婚儀の話はおろか浮いた話すらない…。はぁ。」


「頭首⁈その話は今必要では…っ‼︎」


焦りに焦る焔。そして更に追い打ちをかける様に水萌が


「そういえば焔。貴女憧れている人が居たわね。その人なんてどうかしら?」


それが決定打だったのだろう。水萌の言葉の後焔はちらりとナツメを見た瞬間、顔を一気に赤くして完全に固まった。その視線に気がつかなかったナツメは苦笑して


「まぁまぁ。そんな事言ったら俺も未婚ですし、焔首相は才色を兼ねた可愛らしい方です。すぐに素敵な方が見つかると思いますよ。」


「かっかか…あわっ…あわわっ…。」


フォローをするつもりで発言した彼の言葉によりに追い打ちをかけられた焔は、魂が抜けた様に口から煙を出していた。それを見た風祭夫婦は微笑ましい姿を見るかの様に笑い、一方で焔の好意に気付いたルナはコメカミに青筋をたてたまま顔を引きつらせていた。


「さて、娘を弄るのはこれ位にして。

本題に移ろうか。勇者殿。」


一頻り堪能した風雅は座り直し、言葉を強める。それに対し焔を含めた一同も態度を改め、真面目な表情に戻った。


「私から説明しよう。頭首、首脳会議だが…。」


焔は事の詳細を風雅に伝える。ロシアは既に魔王復興軍7神柱・『怠惰』のティアナによって陥落している事、そのティアナは人形だった事、各国の対応について話し、日本が取るべき行動についても説明し始めた。その後、セラフィムが口を開き日本の反応の場所について質問する。すると風雅は一度ため息を吐いた後口を開き


「日本にあった反応はここ東京から北。青森県にある白神山地の付近だ。」


風雅は地図を広げ指を指す。そこは、自然が生い茂り世界遺産として遥か昔に登録された土地だった。それを聞いたナツメは即座に出発しようと席を立つ。だが、それを水萌が止めた。


「ここから青森県までのテレポートは無く、北海道を経由してからでないと不可能です。その手続きには1日かかるので…。本日はここにお泊り下さい。」


「…かしこまりました。時間は惜しいですが急がば回れという事ですね。」


再び席に座ったナツメは水萌の言葉に甘えて彼女が呼んだメイドとのやり取りを見つめる。すると、メイドは困り果てた顔をしながら水萌と話しており、それでも何かを企んでいるかの様な水萌には勝てず渋々頷いてはまず生徒達を案内し始めた。


「あの、メイドさん困ってましたが大丈夫です?」


「ええ、少し部屋割りについて相談されただけですよ。ささ、セラフィム様。セラフィム様用の部屋は別でご用意しましたので。」


「ありがたい。お二方、後程作戦会議でも。」


「ええ、喜んで。」


セラフィムはメイドに連れられるまま部屋を去り際に風祭夫婦に対し晩酌の誘いを行うと、2人は快諾し見送った。その後、風祭夫婦、焔、ナツメのみとなった部屋で水萌は微笑みながらナツメと焔に近づき


「実はね、お部屋がもう無いの。あまり大人数を止める家では無いから…。」


「あー…それでしたら俺は自宅に…。」


ナツメの発言に水萌は強く首を振り、ナツメを止めさせる。その勢いに若干押されたナツメは冷や汗をかくも、それを気にせず水萌は


「なので、本日は焔と一緒に夜を過ごして頂けませんかね?」


「ぶっ⁈は、母様⁈何をー「焔は黙ってて」⁈」


顔を真っ赤にした焔を目で威圧し、水萌は続ける。


「いい、ナツメさん。今後の事も考えて話し合いとかしやすい方が良いでしょう?「へっ⁈」あわよくば…じゃない。2人が力を合わせれば絶対成功するの。分かりますよね?「は、はぁ…。」だから今日は2人で過ごすべきなのです。間違いを期待…じゃなくて、間違いが起きない様に‼︎ね⁈「あ、あの」いや、私達的には違う間違いなら大歓迎だけど「ちょ、母様⁈」それでも、今日は絶対2人は共に過ごすべきなのです。異論は認めません‼︎」


水萌の見た目とは裏腹な凄まじい威圧を受け目をパチクリさせながら頷くしかないナツメ。結局、ナツメは焔の部屋で寝る事になった。


再び焔の部屋に入ると2人はため息を吐きつつ黙り込む。ちなみに部屋には逃げられない様に監視役のメイドが付けられた。そのまま沈黙を続けるも、流石に立ち尽くした形は打破しないとと思ったナツメは


「風祭首相、あの…」


「焔で良い。今は確かに首相だが、2人の時は別に昔の呼び方で構わん。」


「そうか、助かる。では焔、聞きたいのだが…」


焔と呼ばれた瞬間、彼女は頬を染め一瞬嬉しそうな顔をする。しかし首を振りすぐ表情を戻す。


「聞きたい事はなんだ、ナツメ。」


「ああ。俺は一体どこで寝れば良いんだ?」


見渡すとベッドと机、それに書類が積まれた本棚位しか無く、床には可愛らしいぬいぐるみやクッションがあるのみだった。


「差し支えないなら床でー『ドンッ』…。」


焔の言葉に反応するかの様に扉が向こう側から叩かれる。それに対し顔を赤くした焔は


「私のベッドでナツメが寝ろ。私が床で…『ドンッ‼︎』…。」


再び聞こえる扉を叩く音に半泣きになった焔はやけくそ気味に


「ああああもう‼︎私と一緒にベッドで寝ろ‼︎これで良いのか‼︎『ドンドンッ‼︎』…。」


言い方が悪いとばかりに叩かれる扉。すると焔は屈辱とばかりに涙目になりながら


「わ、私と一緒にベッドで寝てくれないか…?」


今度は正解とばかりに扉は静かだった。それにため息を吐いた焔を見て苦笑しつつ


「お互い大変なんだな…。」


「ううぅ…。ナツメ、絶対今のは忘れろ…。」


どう見ても年下にしか見えない位に落ち込みながら焔は涙を拭った。その後、2人は特に会話をすること無く座りながら本を読みつつ、夕食の時間になった為2人は部屋を出た。その合間も話す事無く気まずい感じを出しながら食堂に着くと


「むっ…ナツメ先生、どこに泊まるのですか?」


クンクンと鼻を聞かせたルナがジッとナツメと焔を見つめる。お前は犬かと内心突っ込みつつ、隠す必要も無いのでナツメは


「ん、焔と寝るぞ。」


「⁈⁈⁈なんですって…⁈」


あまりの驚きに顎をあんぐりと開け、わなわなと震えながら焔を見る。すると、頬を染めつつ焔は


「…仕方無いだろう。2人で過ごせと言われたのだ…。」


「〜ッ‼︎」


それを聞いたルナはハムスター以上に頬を膨らまし、涙を浮かべながらナツメの足を踏みつけ、3回転位しそうな勢いで振り返って席に着いた。それに苦笑いをするしか無いナツメを尻目に、焔は


「…ナツメってやはりモテるのだな…。」


小さく、誰にも聞こえない様に拗ねた。

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