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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、会談する。
55/110

6-5

会議室に充満した煙はセルベリアの起こす風によって即座に外に出され、新鮮な空気が一同を覆う。すると、ティアナは気怠そうに舌打ちしながら、すぐさま攻撃にスイッチした。狙いは近くにいた龍虎…では無く、真正面にいるルナだった。しかし…


「そんな速さで私を捕まえるなんて1000回生まれ直しても不可能よ‼︎」


何の躊躇いもなく放たれた光の帯は、ティアナの体を最も容易く貫き空中で停止させる。するとティアナはまたしても気怠そうに舌打ちをしつつ、その体を煙化させて元の位置へと戻った。


「ヒヒッ…面倒なのが多いですねぇ…‼︎嫌になりますよほんと…ちょっと寝ててくれませんかねぇ⁈『催眠煙幕グッドナイトスモーク』‼︎」


ゆったりとした煙が周囲に佇み、その煙を少しでも吸った者は即座に昏睡する催眠作用のある煙を作り出す。すると、その煙の正体に気付いた心菜は即座に


「この煙は危険です‼︎あの人以外にはこれを…っ『夢喰ドリームバイト不眠不休オールナイト』‼︎」


煙を吸いかけている一同に対し、眠気の一切が飛ぶ魔法を使う心菜。その効果を理解したティアナは即座に心菜を標的にして狙いに行くも…


「私らを欺ける訳が無いだろう‼︎揺らめけ紫炎、羽ばたけ鳳炎。天高く飛翔する鳳よ、その翼を使い、数多を飛び抜け‼︎『鳳凰昇華フェニックスロード』‼︎」


「その通りだ‼︎迷える魂、見つめる邪眼。鍵の天使は目前へと至り、大鎌振るい魂を刈り取らん‼︎『邪視奪命モードサリエル抜魂束縛ドロップアウトチェーン』‼︎」


焔とセラフィムが同時に魔法を唱え、ティアナへと浴びせる。その魔法を弾こうと思い手を伸ばした瞬間、何かを感じ取ったのか急に体を捻って回避し、苛立った眼差しでセラフィムを睨んだ。


「ふむ。避けるか。触れたら即時昏睡だったのだがな。」


セラフィムは少し悔しがりながら魔法を収める。よく見ると、彼が出した魔法が当たった床は腐り落ち、下の階が丸見えになる程だった。


その回避を見たジェシカは少し考え、ティアナに対し闇魔法を放つ。するとティアナは触れる事を嫌い大きく避けながら明らかに嫌な顔をしていた。すると


「あれは人形ね。凄く精巧だけど今一瞬だけ見えたわ。」


世界最高の人形師にして『人形奏者』と呼ばれるリリーナは指でティアナについている糸を数え始めた。


「相当な手練れね。たった一体動かすのに120本も使ってるわ。しかもこの様子じゃこれ一体じゃない。相手の人形師が動かしている人形全てに使われているわ。」


無表情だったリリーナが少し焦った表情をしつつ彼女は手をブイにしてティアナの方へと走りこむ。すると、それに反応したティアナは逃げようとー「させないわよ。ここは影だらけだもの。」


ティアナの動きをティアナ自身の影が静止していた。即座にリリーナはティアナの頭上にある糸を指で挟み、


「『人形廃棄バイバイドール』…。」


その全てを指で作ったハサミで切り取った。すると、ティアナの体が急にがくんと崩れ落ち全身の穴という穴から血を流し初めて溶け出した。


「ほらね。予想通り…。私偉いから寝る。」


やる気の無い声で会議室に響かせた後、リリーナは本当に寝てしまう。それを見た一同は溜め息がてら再度現状の不味さを実感して悩みだす。


「とはいえ、日本、アメリカ、イギリス、フランスは協力体制だ。後はイタリア、中国、ドイツの意見を聞きたい。」


「ドイツは親日国だ。ハッハッハッ‼︎したがおうでは無いか。」


「zzz…勇者の道なら進む…zzz」


イタリア、ドイツは快く返事をしてくれた。だが


「中国は…俺個人としては物凄く賛同したい。だが、国すぐさま対ロシアで動かねば中国も落ちかねない。」


悩みながらも龍虎は自国を優先し、即座には動けないと言いつつも体勢的には賛同している様だ。


「決まりだな。おい勇者ナツメ。当面の目標はどうなっている。」


苛立ち気味に焔が問う。するとナツメは少し考え


「まずはこの場にいる国内の情勢を整えるべきかと。次に危ういのは日本です。国内に1人いるのでしょう?」


焔に問い返す。すると焔は扇子を開いたり閉じたりしながら困り果てた表情を見せ


「ああ。だが…どこにも見当たらないのだ。場所は分かっている。しかし、そこを探した捜索員は皆口を揃えて『何もなかった』と答えるのだ。」


場所は分かっているのに何も無い。これ程奇妙な事は無かった。ナツメは何かしらの結界の存在を考えるも、すぐさま取りやめる。


「日本の捜索員には結界を探知出来る人間も当然居ただろう。という事は…記憶を操られている可能性がある。」


セラフィムの発言にハッとしたナツメは即座に思考を巡らせ発言する。


「1人、記憶操作に心当たりがあります。もしかすると、そこには雷神もいるかもしれません。」


「ーッ‼︎本当か⁈そうと決まれば…先ずは日本の7神柱を叩く‼︎良いな?」


「待った。全員で行くわけにはいかない。イギリスは待機させていただくぞ。」


「何故だ次元王‼︎」


突如踏みとどまったパシフィスタに食いかかる焔。しかしそれを答えたのはセルベリアだった。


「焔、イギリスの真下にも7神柱は居ます。彼がイギリスを空けると今度はイギリスが危ないでしょう。防衛ラインを維持しつつ、討伐へと向かうべきです。」


「…分かった。では熾天使。貴方を日本へと連れて行く。良いな?」


イギリスの防衛線にイタリアを混ぜ、中国の防衛線にドイツ、空の脅威を想定してフランスとジェシカが行動する形を取り、セラフィムと焔のアメリカ・日本はナツメと共に日本に居る7神柱を叩く動きとなった。


「決まりだな。各国へは余が送り届けよう。テレポートなど使うよりも早いからな。」


パシフィスタが其々の国の為に次元の裂け目を開く。それに頷いた一同は、一度解散し国へと戻る形を取った。

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