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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、会談する。
53/110

6-3

謎の現象に苛まれたナツメはその内容を明かす為にジェシカを尋ねる。しかし、ジェシカはパシフィスタ達と共に作戦会議中で居ないとの事なので仕方なく諦め、太志の元へと足を進める。だが、太志も見当たらずクリミナに尋ねるとどうやらハルトと共に昔ナツメが居た山へ篭りきりになっているらしい。仕方がないのでナツメは生徒の中でも独自魔法を手足の様に使いこなすルナの部屋へと向かった。


「ルナ、居るか?」


数回ノックした後、中の返事を待つ。急に開けて着替え中だと大変な為、ナツメが待機していると


「ナツメ先生どうされました?」


風呂上がりで寝巻き代わりに白いネグリジェを身にまとったルナが扉を開けた。

それを見て呆れたナツメは


「聞きたい事があるのだが先にその格好を何とかしてくれ…。無防備すぎる。桜といい勝負だぞ。」


桜と同レベルに扱われたルナはショックで口をあんぐりと開いたまま固まり、ぎこちない動きで部屋の中へと戻り着替え始めた。

数分後、異常に落ち込んだルナを尻目にナツメはルナの部屋へと入り、近くのソファへと腰掛ける。


「ルナ、聞きたい事がある。」


「…先ほどもその様に言ってましたが何でしょうか。」


見るからにショックを隠しきれない表情のままルナが問い直すと、ナツメは真剣な眼差しで見つめ返す。それを見たルナは表情を戻し、真面目な顔になった。


「ルナ、お前は独自魔法を組み上げた時声を聞いたか?」


「声…ですか?んー…私の場合はないですね…。必死に模索して光に手を伸ばした瞬間使える様になりましたし。」


ルナが言うにはナツメと同じ様に意識が途絶えた後、光が見えてそれを掴んだら使える様になったと言う。それを聞いて益々謎が深まったナツメは首を傾げるも、ルナは何か閃いた様な表情をして


「もしあするとその声の主がナツメ先生が導き出したい答えなのかもしれませんよ。私の場合が光で光魔法を生み出したので…。」


一理あった。その者が求める独自魔法に沿った魔法が顕現し、試練を与えてクリア出来れば手に入る。

可能性の域を超えない憶測ではあるが、確かめる価値のある内容だった。


「助かった。ありがとうルナ。また今度ぬいぐるみを買ってやる。」


思い立ったナツメはルナの部屋を急いで後にし、もう1人思い当たる人物へとテレパシーを送る。その主はナツメの声を聞くや否や即座に返事を返してきた。


数分後。ナツメは心菜の部屋へと来ていた。


「ようこそ。待ってましたよ。」


ナツメがノックをしようと手を伸ばした瞬間、扉が開いて心菜が迎え入れた。そのタイミングの良さに驚きつつも、ナツメが中に入ると貸し部屋とは思えない程丁寧に施された彼女の部屋に驚きつつ、中に入ると部屋の装飾以上に気になる押入れの膨らみ具合を聞こうとしたが、有無を言わさぬ心菜の表情を見て諦めた。


「所で要件とは何でしょうか?まさか並み居るヒロインキャラを押し分けて私ルートに…⁈いやまさか…ですよね‼︎」


「すまん、何を言ってるのか分からないが恐らく違う。」


心菜が興奮した面持ちで目を輝かせるもそれを否定しつつナツメは先程の現象について話し始めた。そして


「心菜が超越魔法を使える様になった時、この様な異変は起きたか?」


系統診断される前から超越魔法を使っていた心菜だからこそ聞ける事であった。それに対し心菜は首を振り


「いえ、私の場合はありませんでした。私の場合、ある日突然使える様になりましたね。」


否定した上で前兆など無かったと告げる。


「超越魔法は基本魔法から見て枠外にあるとは言え、文献にもあるレベルで使い手やそれらの魔法は存在してますから。」


文献にもその様な事は書かれて居なかったと言う。それを聞いたナツメは少し安心した表情で感謝の言葉を残し、部屋を出ようとする。すると、心菜は


「用事はそれだけだったのですね。ちょっと残念です。」


少し拗ねた様に口を尖らせる。それを見たナツメは苦笑しつつ困った表情を見せると


「私もたまには先生の攻略ルートに入りたい時があります。駄目ですかね…?」


頬を染めつつ心菜は思い詰めた表情で手を握ってきた。その仕草は普段からしおらしい彼女を更に際立たせており、一瞬どきりとさせるも


「ルナ達にも言っているがその気はない。そう言うのは卒業してからにしてくれ。」


と、即座に断った。すると心菜はぷくっと膨れ


「それじゃあルナ先輩に先を越されるから言ってるんですー…。」


と、珍しく駄々を捏ねた。普段真面目な分2人きりだと甘えたがりになる点では日本版ルナを見ている気分がして面白くなったナツメは吹き出すと心菜も恥ずかしさを紛らわすためかつられて笑い出す。

一頻り笑った後いつも通りの心菜に戻ると、彼女は笑顔でナツメを見送るとそのままベッドに飛び込み、1人悶々とするのであった。


その後、ナツメはいつも通り下着姿で扉の前で待ち伏せしていた桜を楓に引き取って貰いつつ部屋に籠る。

2人の意見を聞いた上で考えに浸るのであった。


それから2日後。

朝食の折に呼び出された一同は応接室に集まり、ジェシカとパシフィスタ、セルベリアとセラフィムから作戦会議の内容を知らされた。


「余とフランス女帝、そしてアメリカ大統領はジェシカや勇者達と共に魔王復興軍の動きを牽制する為に動くべきだと判断した。元々そのつもりでは有ったが、此度の件は既に看過できる範囲を超え始めておる。だが、既に彼らに取り込まれた国があった場合最悪その場での戦闘も起こりうる。お主達はそれでも大丈夫か?」


パシフィスタは静かに、だが首脳会議のその場が戦場…或いは墓場になる可能性があると言い放った。それを聞いた生徒達は生唾を飲み込み、それでも力強く返事を返した。それを聞いたパシフィスタは大きく頷き、生徒達を二手に分ける。


「首脳会議に全員行き、何かあった場合即座に連絡を取れる人間を会議組、待機組に分けようと思う。そして会議組には即座に対応できる人間が必要である。そうなると…勇者ナツメ、オークス嬢、鈴蘭嬢、楓嬢、時丸殿、夢見嬢が適任だと思うのだがどうだろうか。」


パシフィスタの選抜したメンバーは狭い会議室の中でも効果的に動ける人間の選抜だった。ナツメもそれには頷き、生徒達も納得する。だが、セルベリアは一つ不安点を提示する。


「御堂家のお二人方は魔法を潰しきれなかった場合手がありません。もし相手が広さを気にせず放つ相手だった場合、2人は間違いなく苦しいでしょう。」


セルベリアの発言にジェシカ、セラフィムも賛同する。それに対し鈴蘭は発言しようと前に出るも、楓に抑えられ


「鈴姉様の腕ならば雷神藤堂先生の魔法ですら相生させれます。しかし、私では確かに力不足です。

もし、相手が広範囲に渡り魔法を放つ可能性があるならば、代役として私は凛音さんを推薦します。」


楓の申し出に驚く凛音。しかし、生徒達の誰よりも広範囲かつ高火力を出せる凛音を推薦する事に対し誰も異論は唱えられず結果代役を認める形となった。予想以上の大役に冷や汗をかく凛音。それを見たジェシカは小さく微笑み


「大丈夫。私達も最前線で戦います。被害がどれだけ大きくなりそうでもセルベリア様が抑え、パシフィスタが逃がし、セラフィムが守ります。貴女の思う存分を出しきりなさい。若き獅子よ。」


凛音の頭を軽く撫で、落ち着かせるように話しかけた。その優しい手つきに心を落ち着かせた凛音はその目に力強く炎を宿し、笑顔を見せる。

それが彼女の答えと悟ったパシフィスタは了解とばかりに次元の裂け目を開き


「それでは余と共にこの中に入り、会議室へと向かう。準備は良いな?」


その言葉に頷いた会議組は次元の裂け目の中に飛び込んだ。

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