表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、修業する。
50/110

5-11

周りを見渡すと、まず最初に目に映ったのは4人の武術経験者だった。各々が自ら使い慣らしている武器を持ち、ミリアムと妃、龍膳と春詠の2人組に分かれて稽古をしていた。

撃ち合う音が響く中、やはり孫兄妹の武術は歴然としており、相手が近距離を得意とする武器である事をしっかりと理解して距離をとりつつ、中近距離の優位レンジを維持していた。だが、その距離を動かす為にミリアムと龍膳はそれぞれの魔法を活かした立ち回りで距離を詰める。一様に4人は自身の特色を生かした戦闘を行っていた。

それを見たナツメは声をかけるべきではないと思い、他の生徒の所へと向かう。


「ーハッ‼︎」


気合の入った声で打撃を何度も放つ楓。それを凛音が防ぎカウンターとして拳を振るうと、その軌道をなぞりそのまま突き抜ける様に炎が巻き起こる。それを楓が空いている手で受け止めると全てが水となり流れ落ちた。

自身の火力の高さを生かした攻撃を行う凛音と、相剋の特性を生かし防御と攻撃を行う楓。一見楓の方が有利に見える稽古だったが、有り余る火力を凛音は上手く使いこなし、


「あらら…相剋した水ごと燃やしますか…。」


驚く楓をよそに『水を燃やし尽くした』。


「魔法ならではの反撃だな。今のは水分子にある酸素のみを燃やし、強制的に水を分解した。と言う所か。」


凛音が行った事を解説しながら2人に近づくナツメ。その解説が正しかったのか凛音はドヤ顔でナツメを見る。だがナツメはそれを見て呆れること無く素直に評価する。何故なら、先日までの彼女ならばこの様な芸当は出来るわけがない程制御に関しては不得手だった為、この施設に来て以来凄まじい速度で成長していると理解出来るからであった。

そしてそれは、他でもない凛音自身が一番理解していたらしく、体が今一番好調だと述べた。


「恐らく体の修行の時に極限まで集中し続けた結果でしょう。頭では理解していなくても体が覚えてるのですよ。あの時の感覚を。」


楓の言葉に納得したのか、凛音は小刻みに頷くも更にその後を思い出したのか、いきなり顔を赤くし始めた。しかしそれに気付かないナツメは


「そうだな。あの時気絶した凛音を抱き抱えた瞬間わかった。魔力の巡りが良くなっていたな。」


「だ、抱きっ⁈」


「成る程。確かにナツメ先生の様に卓越した魔法使いならば触れただけで理解できますね。」


「ふふふ、触れ…っ」


「だな。それだけで無く俺の部屋で寝ているんだ。一晩中一緒に居たのだから俺で無くてもその魔力の流れの違いは理解出来る。」


「〜っ‼︎」


遂に凛音は恥ずかしさでしゃがみ込んだ。その様子にナツメは目をパチクリとさせており、楓はいつもの無表情に違い顔のまま器用にも表情筋を動かさずに吹き出した。


「クソォッ‼︎貴様の…貴様のうわぁぁぁぁっ‼︎」


まるで仇を取るかの様に叫びぐるぐるパンチを始めた凛音を躱し、よく分かっていないナツメはその場を急ぎ足で離れた。

その後、他の生徒を見渡しつつも声をかけては調子を訪ね周り、各々の成長具合を確認しながら歩いていると気付けば夕方になっており、宗方の一声で本日の鍛錬は終了した。


「これにて心技体全ての修行の第一歩を踏み終えた。此処からはこの施設にで己に足りぬ物を鍛え、首脳会議に参加するが良い。儂からは以上じゃ。」


その言葉に気合の入った返事を返す生徒達。首脳会議までは後2週間程ある為、修行を行うには十分な期間があった。

だが、首脳会議は思わぬ方向を迎える事になるとはこの時誰も想像が出来ず、水面下に広がる敵意を感じるのはまだ先の事だったー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ