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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、先生になる。
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1-4

扉の先には巨大な蓮の花を咲かせたかの様な炎が幾十にも上がり、辺り一面を燃やし尽くしている。

その中心には、二人の生徒が物凄い剣幕で睨み合っていた。


「貴様また私の事を燃やすしか能のない馬鹿と言ったな⁈お爺様にも言われた事ないのに…貴様は何度も‼︎」


恐らくこの炎を生み出したであろう少女が吠えると、更に炎は熱を増す。

それに対し、もう片方は


「ああ言ったよ。何度でも言ってあげるさ。炎以外取り柄のない脳筋‼︎馬鹿‼︎胸無し‼︎」


周囲の熱さを物ともせず、自身の周囲を風の防御で固めている少女が吠えると、強烈なダウンバーストが発生した。


「胸は関係ないでしょ⁈てか貴様が無駄にあるだけだわ‼︎」


「胸に行く栄養も燃やしてるからないんでしょ⁈気づけないの⁈馬鹿なの⁈」


そんな二人を止めようとレイナが踏み出し


「炎堂さん、ミリアムさん、落ち着い…「「がおおおおーー‼︎」」ひぃぃぃ⁈」


二人の咆哮に怯えナツメの陰に隠れた。

その様子に苦笑していると、喧嘩を止めなければいけないと後ろからレイナに背中を押され、巨大な炎の花に近づけさせられる。


「喧嘩を止めれば良いんですね?レイナ先生。」


一応確認を取る為にレイナの方へ振り返ると、涙目になった彼女が無言で頷いているので、軽く溜息をついてナツメは炎を視る。


「(中級と言えどかなりの力…確かに、才能はある子だな。)二人共、喧嘩は駄目だ。抑えなさい。」


二人の潜在能力に感心しつつ、喧嘩をやめる様まずは口で説得をしてみる。しかし、当然ヒートアップしている二人には届かず、一向に睨み合いを続けていた。


「(となると実力行使しかないよなぁ…。まぁこれくらいでいいか。)」


二人を傷つけない様に細心の注意を払いながら空中で指を何度か動かす。

すると、先程まで燃え盛っていた炎の花は徐々に勢いを失い、その中心に吹いていた強烈な風も穏やかな風に変わっていった。


その様子に中心の二人だけではなく周囲の生徒やレイナまでもが目を見開き、ナツメの元へと視線が集まっていった。


「さ、喧嘩はおしまいにしてホームルームを始めたいんだけど…いいかな?」


と、笑顔を送ってレイナと共に教壇の上に上がろうとする。

しかし、生徒はと言うと件の勇者がまさかこのクラスの補助担任となるなんて思っても居なかったらしく、先程まで喧嘩していた二人までもが互いの目を見て何度もぱちくりと瞬きを繰り返す様だった。


「あの…皆着席して下さいね…ぐすっ。」


未だに涙目のレイナが言うと、皆姿勢正しく機械の様な動きで自分の席に座り、ナツメを凝視する。


「てなわけで今日からこの1-Dの補助担任になったナツメ・レイニーデイです。よろしく。」


その瞬間クラス全員が歓声をあげ、ナツメの元に詰め寄った。


「やべぇ、本物の勇者様だ‼︎」「ちょ、皆おちつ…わきゃ⁈「このクラスにきたの⁈なんで⁈」「いや、それは…「さっきのあれだよね?魔法制御だよね⁈」「やばい、普通にSだと思ってたのに‼︎」「うわー、いながのがあちゃんに連絡すっぺ‼︎」「勇者様好きな人誰⁉︎私?キャー‼︎」「いや、まって⁈」「時代キターーーー‼︎」…


「届け彼方に、思いの果てを…『千里声セルフエコー』皆おちつけぇぇぇ‼︎」


どうやらレイナが魔法で強化した声量で叫んだらしい。

ナツメを含むその場の全員の耳がキーンとなった。


「こほん、ナツメ先生は、『私の』補助です。このクラスの魔法学の貢献をして頂けるので、皆さん魔法で行き詰まったら何でも相談して良いですからね。」


と、ナツメの腕にしがみつき、ムスッと頬を膨らましながら自分の生徒に告げた。


「それではまず出席を取りますね。名前を呼ばれたら…」


と言った感じにホームルームが始まった。

初めこそ驚いたものの、ナツメが最初に感じ取ったのは、このクラス全員が高い潜在能力を秘めているという事だった。

その中でも高い能力を秘めているのは、先程対立していた二人で、名前を見ると理由も納得するものだった。


炎堂凛音エンドウリンネとミリアム・J・オリンピア。共にナツメと部隊を組んだ仲間の血縁者であった。


「(炎堂凛音の方は15歳という若さで炎爺と同じ位の力を出している…が、魔力制御はからきし。ミリアム・J・オリンピアはシルフィ姉さん程力は無いが魔力制御の繊細さは姉さん以上…面白い人材じゃないか。)」


そんな二人を期待を込めて見つめていると、当の本人達は先程までの喧嘩を咎められてると勘違いしたのか、二人揃って手を合わせてごめんねと何度も謝るジェスチャーをしていた。

そのあまりの息の良さに思わず噴き出してしまうと、隣からレイナが


「ナツメ先生〜?何かあったんですか?」


と、若干拗ねた様に言われたので、慌ててその場を取り繕った。


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