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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、帰省する。
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勇者、帰省する。

ナツメが彼の両親に連絡をしてから1週間後。

旅行の準備を済ませた一同は学園の近くにある藤堂学園駅から東京都にある国際空港までテレポートする。

昔ならば電車等で移動しないといけなかった距離も今では公共機関による特殊なテレポートが可能で、移動は楽に行える。また、国を超えた長距離間のテレポートは公共機関によるもの以外は、国ごとに貼られた脱国者の密入国を防ぐ結界によって防がれている為、基本的には法的手続きを済ませてからでないと渡航出来ない形となっている。そしてその手続きはどれだけお偉い人間でも緊急性が無い限り即時渡航は行えない。

その為、いくら国賓級のナツメであっても手続きに1週間かかった。


「済まない。結構時間を食ってしまったな。」


「いえ、通常ならもっとかかっていた事ですから。」


ナツメが謝ると、何度も渡航経験のあるルナは手を振りながら返す。実はナツメ自身渡航経験は豊富ではあるものの、当時の渡航は緊急性の塊でしか無い為いつも即時転送だった。対してルナは両親の手伝いという事で出る事が多かった為、渡航にどれ位かかるか理解している。


「それよりもお土産とか何も要らなかったのですか?久々に会うのでしょう。」


ルナが『東京○なな』を見つめながらチラチラとナツメを見ている。この様子だとお土産と言うより自分が食べたいらしい。


「いや、お土産なんか持って行った時には大変だから…。誰も買わなくて良いぞ。」


何か困った様子でナツメは断り、誰にも買わない様に念を推す。

それを聞いたルナは明らかにしょんぼりとして


「わかりました…先生がそう言うなら諦めます。」


と、とぼとぼ歩き出した。

そのまま、転送時間になり一同は転送待機場所に着く。飛行機が飛んでいた時代にあったファースト/ビジネス/エコノミーの違いは無いものの渡航する人物の重要度に応じて転送順番が変わる。

今回の場合流石に国賓ではある為ナツメ達は早めに転送できた。


「ようこそ、新イギリス空都です。」


数秒の転送の後、空港職員が迎えてくれる。ナツメは職員に対し軽く挨拶を交わした後空港を出る。それに続く様に各々は空港に出て行く。すると、それに合わせて荷物係が荷物を持ってきて、後ろで待機する形に。

しばらくすると、テレポートで移動できる現代にわざわざリムジンを走らせる贅沢な人間が現れたのでナツメは溜め息がてら生徒を見て


「迎えが来たぞ。移動する準備をしておけ。」


顔を引きつらせながら言い放つ。すると、状況を理解できない生徒達はキョロキョロと探し始めるが、目の前に止まったリムジンを見て


「…えっ、これ?」


と、思わず口をポカンと開けてしまう。

目の前に止まったリムジンは車体が車3台繋げたかの様に長く、明らかに使用感としては最悪の乗り物になっている。そしてその後部座席と言うべきか中部座席と言うべきかももはやわからない扉が開き


「ようこそ皆様。私がナツメの母で、こちらが父です。」


中からナツメの両親にして大戦時ナツメ達を除き最も魔王軍を殲滅した魔法使いとその懐刀、ジェシカ・レイニーデイと柊大志ヒイラギタイシが現れた。


「ご無沙汰してます母上、父上。この子達が話していた…」


ナツメが説明しようとした矢先、ジェシカはそれを手で制し


「いえ、それは移動しながら聞きましょう。そろそろ彼らが来ます。」


何かを察知したらしいジェシカは全員をリムジンに乗せ、運転手に発進させる。すると、その数分後にその場はマスコミに埋め尽くされ、口々に遅かっただの逃げられただの悪態をついていた。


「彼らは私達の魔力を特定して転送してくる為基本テレポートするとバレるのです。」


溜め息を吐きながらジェシカは言う。どうやら、ナツメが魔王軍を討伐して以来毎日の様にマスコミに追われるらしく、そのやり取りが面倒な為あえて魔力を使わない車で移動しているらしい。

それを聞いたナツメは何となく申し訳なくなり謝ろうとするも、ジェシカはそれを慌てて制し


「我が子の頑張りを褒めない親など居ませんよ。」


と、嬉しそうに微笑んでいた。

その様子を見てルナは先程から驚いた表情をしていたのでナツメが問うと


「いえ、先生の両親と聞いていたのでもう少しお年を召されてるかと…見るからに私達と変わらない美しさなので驚いてるだけです。」


と、女性らしい驚きを見せた。すると、ジェシカはそれを聞いて


「元々私は普通の人間ではないもの。寿命で死ぬには後800年は必要よ。」


と、普通に言うものだから生徒達は更に驚く。

聞く所によると、ナツメの母は魔法文化が発達する以前から魔法を使い密かに繁栄していたエルフ族らしく、その中でも特に魔法力の高いハイエンシェントエルフに属されるらしい。その為、見た目も200年生きた今でも変わらず10代位の美貌を保っており老けを知らないと言う。

その事実に生徒が驚いているとナツメが呆れた表情をしながら


「と言う設定で生きている厨二病の魔法使いだ。見た目が若いのは霧雨と同じ『時間魔法』によるものだ。適正は無いけどな。」


ジェシカの話を正しく説明する。それを聞いた生徒達はズッコケるも、ジェシカのみ恨めしそうな顔をしながらナツメに対し


「もう‼︎あんまり現世らしい事ばかり言ってるとナツメちゃんを漆黒の焔でめってしますよ‼︎」


少しずつ頬を膨らまして涙目で訴えだした。それを見て太志がジェシカを宥めながら


「ジェシカ、あまり興奮すると封印された右目が疼いてしまうのであろう。落ち着きなされ。」


と、ジェシカを手慣れた様子で宥め始めた。するとジェシカは真面目な表情に戻り


「あ、危うい所でした。ナツメの生徒の前で暴走すると太志でも止められませんからね…大事故を巻き起こす前に止めてくれてありがとうございます太志。」


冷や汗を拭うかの動作をしながら太志に礼を言った。その流れに呆気に取られていた生徒達はぱちくりと目を丸くしながらナツメを見つめるものだからナツメは溜め息を吐きつつ


「と言う感じの母上だから。」


疲れた表情で聞こえない様に言った。

その後、生徒達を紹介しつつナツメの昔話をし始めるジェシカを止め(桜やルナ達は残念そうにしていた。)気づけばレイニーデイ邸についていた。


「我が城にようこそ。皆さん我が家だと思って寛いで下さいね。」





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