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その後、生徒会活動の報告等が行われた後、全校集会は終了して解散となった。
「ではナツメ先生、まずは職員室に案内しますね。」
全校生徒を見送った後、藤堂に連れられて職員室へと案内される。
その道中で色々校則について教えてもらいながら、二人は昔話に花を咲かせていた。
「あの頃の坊ちゃんは色んな意味で将来が楽しみでしたよ。」
「いやいや、そんな昔の事ですから…。」
と、談笑していると頭上にある看板に書かれた『職員室』のプレートが見えてきて、
『こちらです。道は覚えて頂きましたかな?では後ほど会いましょう。』
と、テレポートでその場を去って行った。
昔話の名残を惜しみつつ、一度深呼吸した後扉を開けると、
ーナツメ先生いらっしゃい!ようこそおいでました!!ー
と書かれた垂れ幕に腰を抜かしてしまった。
「あ、あの、これは…。」
「ナツメ様が赴任されると聞いて即座に作りました。」
そう言ってニコニコと近づいてきた若い女性は
「万国語教師のレイナ・小鳥遊・アイリーンです。以後よろしくお願いします。」
と、いきなり抱擁してきた。
「ちょ、あの⁈」
あまりの事態に慌てふためくナツメ。
その様子に周りの教師は『ああ、いつものあれだよ。』と呆れていた。
「いつも通りの痴女っぷりは良いとして、ナツメ先生が驚いてるので離れなさいよ。レイナ先生。」
次いで出てきた大人びている女性は見覚えがある。
と言うのも、先程紹介してくれた女性だった。
「改めてナツメさ…先生。私は御園英里華と申します。担当は数学で、一応この学園の教頭です。よ、よよよろしくお願いします。」
目を合わすたびに言い淀む姿に苦笑いしつつも、こちらこそと頭を下げる。
レイナに抱き締められたままだが。
「俺はルイ・ペンドラゴン。旧イギリスから逃げ延びれた社会教師さ。ちなみにかの有名なアーサー王の子孫らしいけど何百年も昔だ。分かるはずない。」
更にその後ろから頭を下げてきたのは、いかにも英国紳士なルイだった。
その後も、各科の教師から挨拶をされ、その都度頭を下げたり、握手を交わしたりとしている内にチャイムが鳴った。
「そんな感じで挨拶も終えましたし、早速補助担任という形でクラスを持って欲しいのですが…運の悪い事にレイナ先生のクラスですので、よろしくお願いします。」
「ちょ、えりちゃん運が悪いってどういう「レイナ先生?学園内では公私混同しない様に?」「はい…。」
どうやらプライベートでは仲の良い二人のやり取りを遠巻きで見つつ、レイナと共に職員室を出る。
「いやー、見苦しい所をお見せしました。」
エヘヘと笑いながら自然と腕を組んでくるレイナを他所に、思いの外緊張しているナツメは上の空で返事を返す。
「運が悪いって言われましたけど、そんな事ないですからね?
うちのクラスは才能ある子ばかりなので、教え甲斐がありますよ。」
その言葉に少し表情を崩す。
思えば自分も学生になる歳の頃は思い切り魔法の鍛錬を重ねていたものだ。
まだ7年程前の事だが、昨日の事の様にその日々は記憶されている。
そんな将来有望な生徒達へ自分が教える立場になる…それだけで感慨深いものがあった。
自身の過去と照らし合わせ、ある種恩返しみたいな形となるその最初の一歩に期待しつつ、自分がこれから担当するクラスの扉を開けてみれば…
『燃え盛れ紅蓮の炎‼︎炎王蓮舞‼︎』
中級魔法が飛び交っていた。