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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
勇者、狩猟する。
27/110

3-9

結局その日の午後以降2人は戦意を削がれた形となり襲撃する事なくまったりと過ごした。とはいえ、生徒に合わなかったわけではなく先程の件以降血眼になってナツメを探す鈴蘭とその鈴蘭がナツメと間違いを起こさないかとこれまた血眼になって鈴蘭を追いかける桜とその2人を懲らしめようとこちらも血眼になりながら追跡する楓の御堂3姉妹改め血眼3姉妹から逃げる為に他の生徒に匿って貰う本末転倒な状況に何度かなった。


「改めて女子って怖いと感じたよ。」


「…それを女子の前で言うと余計敵を作りますよ。」


現在、ハルトと共に隠れているナツメが溜め息がてら弱音を漏らすと、苦笑しながらハルトは返事した。


「しかしまさかナツメ先生にこんな弱点があったなんて。次から戦闘時には御堂さん達を連れてくる事にしますね。」


「多分戦闘が始まらないぞそれ。」


実際ナツメとの戦闘は起きず、身内争いを始めた3姉妹の事だ。またこちらを放っておいて争い出すに違いない。そして、それを聞いたハルトは納得したのか、同情の念を込めて


「人気者は辛いですね。」


と笑いかけてくるのであった。その目はとても暖かく、人生で仲間を失って以来にナツメは泣きそうになった。

暫くするとナツメ捜索を諦めたのか、御堂3姉妹は拠点にしているだろう方角へ戻っていく。それを見てナツメもハルトに礼を言って別の場所へと行動を始めた。

しかし、今日はとことんついてないらしい。3人とは別方向へ歩き出した筈なのに、何故か十字路でばったりと会ってしまう。すると、スイッチが入ったのか鈴蘭は戦闘態勢に入り


「かくごぉぉぉぉぉ‼︎」


いきなり殴りかかってきた。その鬼気迫る表情に気圧されつつも拳を避けると、バランスを崩した鈴蘭が転けそうになる。しょうがないのでそれを受け止め、安否を確認していると


「あ、あ、あ、あ…すすす鈴姉様何ナツメ先生とだだだだきあっ…キェェェェ‼︎」


これまた桜も殴りかかって来たので拳を受け止めて止める。

そして2人を抱きとめた形になった所で楓が現れ


「…ああ。結局2人とも手篭めにされたのですね。」


「まて、おかしいから‼︎」


お楽しみにと言わんばかりにニコニコ手を振り始める。すると、楓はわかってますとばかりにナツメを諌め


「英雄色を好む位理解してますとも。この2人は何もしなければ可愛いですから。」


「わかってないし何かしでかしてるから素直に可愛いと言えない‼︎」


まさか楓までボケをかましてくるとは。別の方向で底知れない3姉妹に改めて寒気がした。

その後、全て冗談だと謝る楓に呆れつつ一度改まってから再び対峙する。先程まで私欲に溢れていた鈴蘭と桜も真面目な顔付きになり、いよいよ戦闘開始かと思われた矢先。


「私達も参加しますよ。」


ナツメの四方を囲む形でルナ、時丸、春詠がやってきた。

いよいよ6対1で昨日とは違うメンツで戦えると思われたが、鈴蘭がルナを制しまずは御堂3姉妹のみです戦いたいと申し出る。思えば、桜を除く御堂の2人はナツメと実戦を交えた事はない為、ナツメと自分の差を推し量りたいらしい。その提案にルナは承諾しかねていたものの、鈴蘭の強い意志を折る事は出来ずに認める、らナツメにとっても、これは御堂家攻略のヒントになるかもしれないと見てそれを認め、3対1の戦闘が開始された。


まず始めに動いたのは桜だった。先手必勝とばかりに駆け出した桜は、ナツメの足元に火の魔法を放つ。それをジャンプして避けると、今度は楓が動き


「水剋火『裏水リスイ間欠水翔カンケツスイショウ』‼︎」


桜の生み出した炎を飲み込みながら間欠泉の如く吹き上がった水がナツメを襲う。それをナツメは風魔法で防ぎながら、風圧でできた足場を作る。それをみた鈴蘭が


「木生火『表火ヒョウカ炎蛇呪縛エンダジュバク』‼︎」


風圧の足場からうねる様に炎が上がり、ナツメの体を締め付けんとする炎の鞭が現れた。すかさずナツメはその場を離れ、炎を先程楓が作った間欠泉に誘導する。すると、炎の鞭と間欠泉は音を立てて蒸発し始め、水蒸気をばら撒いて消えていった。


「やりますね、流石です。」


「こちらから魔法を打たなくても桜を軸に攻めてくるか…やるな。」


五行思想魔法はどちらかというと後出しジャンケンみたいなもので、相手の魔法に対して強い属性を出す事によって相手の魔法を殺し、自分の魔法を活かす形となる。なので、こちらから使わなければ基本生きてはこない魔法になるのだが、適正だけはナツメよりも多い桜が先手を取る事により、相手の魔法を誘発したり桜の魔法を使って五行思想魔法を活かす事が出来る。御堂3姉妹ならではのコンビネーションであった。


「これは中々厄介な相手だぞ。」


「そんなに厄介ならば厄払いを込めて倒されてみませんか?」


ナツメの悪態に言葉を掛けて返す楓。それを聞いて苦笑するばかりだった。

とは言え、特に打開策が見つからないままやられる程ナツメも甘くはない。五行思想の弱点である彼女らが対処できない範囲での威力で攻撃に移る事にした。


「今度はこちらから…‼︎煌めく女帝、紅炎すら消し去る暴風。天災すら凌駕する一声は、誰彼も跪く風格とならん。この地に顕現せよ、かの暴虐よ‼︎『女帝息吹エンプレスブレス』‼︎」


ナツメの背後に巨大な女性の幻影が現れる。次の瞬間、彼女がフッと息を吹きかけると辺り一面台風が突如現れたかの如く風が吹き荒れ、圧縮された風により道や壁が切り裂かれる。唐突過ぎる風の暴力にルナ達は飛ばされ、御堂3姉妹も土魔法で必死に床にくっついているのが限度だった。しかし、これで終わりではない。『女性が再び息を吸い込み始めた』。それを見るや3姉妹は冷や汗を垂らしながら何かを話す。そして、意を決したのか手を繋いで女性を見上げた。


それを知ってか知らずか女性は再び息を吹きかける。先程以上に強い風が辺りを打ち砕き始めた。

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