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闘技場の出口を過ぎ、少し歩くとナツメと藤堂が待っていた。そこは、学校の訓練所とは比べ物にならない…と言うより比べようがない程の設備が揃った訓練所だった。
「てかまるで一つの街の様なレベルで建物があるのですが…。」
鈴蘭の疑問に藤堂はその通りと頷く。どうやらここは元々大戦時に使われていた避難シェルターであり、生活に困らない様常に地上から物資が輸送されていたらしい。
しかし、終戦以降不要となり残されたままとなっていたので、そのまま実戦に近い形で戦う為の訓練所に改造したとの事である。
「まぁリーグ戦などではこんな物ないが。この方が楽しめるだろう。」
不敵な笑みを浮かべながらナツメは言う。 その様子にある程度勘の良い数人は冷や汗を流し、残りは首を傾げていた。
「では私から説明しようか。その前にまずは試験突破おめでとう。これより君達は正式に特別クラスの一員だ。」
先程までの命をかけた行程はどうやらただの試験だったらしい。ますますこの先の内容が怖くなる一言だった。
「これより行うのは学生のレベルを軽く越えた授業だ。気を引き締めていく様に。
では最初の内容を発表しよう。今から『5日間』私とナツメ君に倒されない事だ。」
『ーっ⁈』
藤堂の口からとんでもない事が言い渡される。雷神藤堂と勇者ナツメから5日も逃げ切れと言われて可能な人間など世界で数えても指の数程居るか居ないかである。それを今から行えと言われ、当然生徒達は苦笑いをする。
「俺から言えるのは一つだけだ。殺しはしないが気を抜いたら一発で病院だと思え。以上。」
「まぁ可能ならば私達を倒しても構わん。生徒の成長に命をかけれるのならば教師として最高だからな。では何もなければ始めるぞ。」
そう言うと、藤堂はいつものにこやかな表情を崩し真剣な眼差しになる。その瞬間その場を貫いた殺意に怯えた生徒達は散り散りに散開し、それが授業開始の合図となった。
「ではこれより1限目の授業。耐久模擬を行う。」
ナツメが静かに授業開始を告げると、訓練所を覆う巨大な雲が現れ、広範囲に藤堂の『建御雷神』が降り注いだ。