2-8
ルナの号令の下、まずはミリアムが魔力探知を始める。
一概に魔力探知と言っても、人それぞれやり方が違う。例えば、ミリアムの場合だと大気中に浮いている魔力源を元に探知を行う。このやり方は誰もが真似できるわけでは無く、魔力制御が人一倍得意で無いとできない。と、言うのも大気にある魔力源というのは目的の相手は勿論の事、他人の魔法に対しても感知できてしまう為、特定が難しい。目的の相手を特定する為にはその人の魔力の特性を掴めないといけないのだが、これ自体が魔力を手足の様に扱えないと正確には掴みきれない。
つまり、人並み外れた制御力があるミリアムだからこそ使いこなせる方法であった。
「見つけました。あちらの方角に2キロ程で一度立ち止まってますね。それ以上は分かりません。」
「十分です。その方角に2キロだと丁度武道館ですね。」
探知を始めてから数分後ミリアムが見つける。その報告を受け、ルナが全員にテレポートで武道館へ行く様号令を出す。
武道館に着くと早速孫兄妹がその先の探知を始める。
この双子が得意とする探知方法は数ミリ単位で地面を揺らし、その振動が進んだ先にある物体から跳ね返ってくる振動を読み取り目標を捉える所謂エコー探知である。
すると、二人は一斉に
「「埋藏在地下‼︎(地下に埋まってる)」」
と答えた。それを聞くや否や龍膳が地踏みをし始める。すると、その中に隠し床が存在しておりその床をずらすと一人がやっと通れる幅の階段が現れた。
「某こういう探し物は得意な故。」
「孫兄妹、龍膳さん、ご苦労様です。
では行きましょう。」
3人を労うと、ルナは自身のオリジナル魔法の属性である、光魔法を使い階段を照らしつつ先行していく。それに続く様に鈴蘭、楓、桜の御堂3姉妹、孫兄妹、龍膳…とどんどん進んでいく。
全員が緊張感を持ったままある程度進むと、今度は三又に分かれた道が現れた。
ここで、今度は鈴蘭が前に出る。
「こういうのは私の出番ですね。ちょちょいと正解を導き出します。」
「鈴姉、その言葉の選択は不正解を導いてます。古いです。」
楓のツッコミに落ち込みつつ、鈴蘭は地面と水平に八卦陣を描き始める。彼女の探知方法であった。
鈴蘭は八卦陣の上に一輪の花を捧げる。すると、その花が花びらを散らしながら『巽』の方向を進んでいった。
「南西方向の道へ行けばナツメ先生が居られると思います。レッツラゴーですね。」
「妹としては姉の進む方向を修正したいです。」
「か、楓ちゃん厳しいよ…。」
死語でノリノリな鈴蘭を尻目に、楓は先へ進む。すると、しばらくはトンネル状になっていた道が今度は周りが空洞の一本道になっていた。また、そこから別の道を進んだ場合の状況が見える様になっており、何も急激な下り坂が見えない底まで続いていた。
「…この先はどうやらトラップなどもあるみたいですね。気をつけましょう。」
ひとつ間違えると命すら失われていた状況に沈黙するも、気を引き締める為に全員に呼びかけるルナ。全員が足下に気を配りつつ、いつ来るかわからないトラップを警戒していると、何かに気づいたのかハルトが先行くルナ達を飛び越えて目の前に巨大な盾を生み出した。
「隠れて‼︎この盾の後ろなら安全だから‼︎」
「⁈あ、あれって…ドラゴン⁈」
ハルトが大声で叫び、全員が盾に身を潜めた瞬間、轟音と共に巨大な竜が現れ、いきなり口から炎を吐き出してきた。
「か、間一髪だった…。ありがと、ハルト君。」
思わず大きく胸を撫で下ろすルナ。しかし、その直後竜は飛び上がり今度は頭上から燃やそうと試みてくる。
「グォォォォォ…‼︎」
「貴様煩いぞ‼︎『炎王咆哮』‼︎」
叫びながら炎を吐き出す竜に対し、いち早く詠唱を終えた凛音が上級魔法で対抗する。凛音の魔法による炎は、竜の吐いた炎とぶつかると覆いかぶさる様に広がっていき、そのまま竜ごと巻き込んで燃え始めた。すると、炎の中から竜の悲鳴にも似た雄叫びが聞こえてきた後、三度炎を吐き出す。
「貴様元気すぎるわ…‼︎」
「大丈夫、私と桜に任せなさい。桜、私に合わせて。」
「楓姉に合わせるのめんどい。けどしゃーなしね。」
「「「水剋火‼︎裏水・水瀑陣‼︎」」」
「なんで鈴姉まで…。」
「だって御堂3姉妹でやった方がカッコよさそうだったから…。」
「桜、こんな人にならないでね。」
鈴蘭を罵りつつも3人が起こした大量の水は、凛音の炎ごと竜の炎を飲み込み、巨大な水圧の塊として竜にのしかかった。そのあまりの重さに耐え切れず、竜は物凄い速度で底深くまで墜落していく。
「ハルト、御堂3姉妹、炎堂の姫。助かりました。ありがとうございます。では先へ進みましょう。」
即断して動いた5人に感謝しつつ、先へ進む。
すると、今度は広場にでたのか、横並びになっても尚広い場所へとたどり着く。
今までの光の強さだとその全貌が見えないのか、ある程度の距離までしか見えていない。なので、ルナは先導の為に使っていた光の塊を空に掲げ、更に広範囲を照らすため強く光らせると…
「これは…闘技場の様な…‼︎」
まさしく、教科書に出てくる様な形をした闘技場が姿を現した。