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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
生徒、躍動する。
109/110

11-9

 ー映像が終わり拍手喝采が起こる中ナツメは思わず突っ込んだ。


「おいまて、凛音達より龍膳や心菜の方が活躍してないか?」


「そ、そうね。どちらかといえば……」


 ナツメの突っ込みにルナが苦笑しつつも凛音達を見る。すると、ルナとナツメを睨む様にじっと見つめる2人は不満を露わにしていた。


「け、けどあの怪物にダメージを与えれたのは凛音達が殆どですから……」


「それはそうだが、最後とかはルナの補助ありきだろう。偏に2人のお陰という訳でもあるまい」


「この……馬鹿教師ッ‼︎」


 ルナの必死なフォローを無駄にする一言で、凛音が遂にキレた。ナツメに掴みかかった凛音はいつの間に心得たのか掌に炎をまとわせつつ猫パンチを連打する。それを片手で処理しつつ凛音を何とか抑えつけたナツメに、今度はミリアムが跳び蹴りをかます。だが、その足首を掴まれ逆さに吊るされた彼女は、必死にスカートを抑えながら言葉で抵抗を始めた。


「この鈍感教師‼︎変態‼︎プレイボーイ‼︎‼︎」


「おいその暴言俺の言葉と関係無くないか⁈」


「ちょ、振らないでっ私が悪かったからっやめてっ‼︎」


 ミリアムの言葉に青筋を立てたナツメは、笑顔のままミリアムを振り子の様に振り始めた。今までにない感覚の違和感に何処か恐怖を感じたミリアムは、謝りながら喚き必死に許しを乞うていた。

 結局、ナツメの束縛から解放されたミリアムは凛音同様胴を担がれる形で掴まり、反撃が出来ない様にされた為大人しくなった。


「俺はお前らの担任なんだから生徒を正しく評価してるんだ。確かに常に前線で牽制し止めを刺したお前らは偉い。倒せなければ作戦の完了とは言えないからな。だが、時丸が居なければ龍膳がやられていた。龍膳が居なければお前らはやられていた。心菜が居なければ彼らは全滅していた。3姉妹が居なければルナはやられていた。ルナが居なければお前らが決められなかった。分かるな?」


「それは勿論……」


「お前らだけが活躍した訳ではない。だから、俺は正当な評価をしただけであって、お前らを馬鹿にしてる訳じゃない。分かるな?」


「うん……ごめんなさい」


 漸く落ち着いた2人を降ろし、ナツメが溜め息を吐いたのを見てルナが苦笑する。すると、自分が褒められたのが聞こえたのか心菜がナツメに突撃し、頬擦りを始めた。


「先生が私を褒めていたと聞いて‼︎」


「確かに褒めたがだからと言って寄り付くな‼︎離れんか‼︎」


「キャーッ‼︎久々のこれこれ〜っ‼︎」


 心菜の襲来に合わせてヘッドロックをかましたナツメは、腕の中で歓喜の声をあげる心菜に溜め息を吐く。まるで親戚の兄に遊ばれているかの様な微笑ましい様子に思わずルナが拗ねる。だが、公共の場においてその様な醜態を晒す訳にはいかないルナは、それを表情に出さず必死に我慢していた。


「相変わらず騒がしいメンツだな。良いことだ」


「パシフィスタさん……お疲れ様です」


 そんなルナの横に現れたパシフィスタは、ブランデーの匂いを振り撒きながらルナの横に立つと、特別クラスの騒がしさを見て微笑んだ。


「どの位置に居ても分かるほどの明るさが此処にはある。良い仲間ではないか」


「ふふっ、1ヶ月も一緒に居ると頭痛しますよ。ナツメ先生はさぞ大変かと」


「だろうな。だが、ナツメにはこういった心の安らぎが必要なんだ。自分が認めた人間と戯れる時間がな」


 ナツメの以前の姿を知っているパシフィスタは、呆れながらも楽しそうに戯れる今のナツメを見て微笑んだ。だが、それを知らないルナは首を傾げてパシフィスタにその意味を聞いた。


「……そんなに以前のナツメ先生は酷かったのですか?」


「ああ。魔王を討伐した後のナツメは酷かった。あの姿を知っている者は喜びよりも先にナツメを案じた程だ。仲間を失い、恋人を自ら手にかけた罪悪感がナツメから生気を奪っていたのだよ」


「……えっ」


 その言葉に驚愕したルナを見て、しまったという顔をしたパシフィスタは苦虫を潰した表情をみせた。だが、ルナは好奇心を隠しきれずその詳細を聞いてしまう。


「……そうだったのですね。ナツメ先生が……」


「他の生徒にはナツメが話すまで言うでないぞ。ルナも俺からでは無く偶々耳にしたという事にしておいてくれ」


「分かりました。この事は口外しません」


 パシフィスタの念押しの意味を理解したルナは、不安そうにナツメを見つめながらも頷く。ナツメの自虐的とも取れるほどの献身的な戦闘スタイルは、恐らくその時から出来たのだろうとすぐに理解したルナは小さく呟いた。


「もっと強くならないと……」


「ん?どうした?」


「いえ、なんでもないですっ‼︎」


 どうしてこんな時だけ勘が良いのだろうか。ちらりとこちらを向いたナツメに慌てて首を振りながら否定したルナは、内心溜め息を吐きつつグラスの中のジュースを飲み干した。


 その後、半日程続いた祝勝パーティーは酔っ払ったシュバルムがいつも以上の大声で笑い始め、リリーナに跳び蹴りをくらい失神した辺りで終息を迎えた。


「それじゃ皆、また機会があれば」


「ええ、また会いましょう」


 ぐったりとしたシュバルムを抱えた龍虎、リリーナ、セルベリアはパシフィスタ、ナツメ、生徒一同と挨拶を交わし空港へと向かった。そして残った一同はパシフィスタと別れを告げジェシカの家へと向かい車に乗車する。

 車の中でも騒いでいた生徒達はアメンやナツメに抑えられながらも楽しそうに騒いでおり、ジェシカや太志はそれを見て微笑む。久々に訪れたひと時の平和を誰もが楽しんでいたのであった。

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