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先生始めました。by勇者  作者: 雨音緋色
生徒、躍動する。
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 再び現れた海蛇の群れは一斉に魔法使い達に襲いかかり始める。対し魔法使い達は迎撃の構えを取り、それぞれ魔法を放つ。しかし、それらは全て直前で消え失せた。


「なっ…魔法抵抗力が高いぞ…っ‼︎」


「いや、違う‼︎あれは完全に消失した‼︎何か仕掛けがあるのか⁈」


飛び交う水弾を回避しつつ狼狽える魔法使い達。だが、その横を凶悪とも言える風の矢が飛んでいき、数匹の海蛇を貫いた。


「どうやら視覚で認識できるものには対応できるみたいね。座標系の魔法か不可視の魔法で対応を」


 その性質に気づいたセルベリアは、周囲の魔法使い達に知らせ自身も魔法を放つ。それに続く様に魔法使い達も其々詠唱を始め、海蛇の腔内を爆砕したり風魔法ですり潰したりと応戦し始めた。


 圧倒的に有利になりつつある戦況。だが、それでもリヴァイアサンに対して良くて五分の戦いを強いられている龍膳、凛音、ミリアムはその顔色に若干の疲労を思わせ始める。だが、そんな3人に対し反撃の兆しとも言える魔法が放たれた。


「戦慄する睡魔、昏睡の誘い。寒気すら覚える眠気に、抗う術は無くひたすらに眠り続ける。五感すら失う凶悪な眠りは、力を奪い心を削り取る。冥府への道程を、全ての命が導かれ歩くだろう。凍てつけ……『生命凍結コールドスリープ』」


 静かに、それでも確かに響いた心菜の詠唱。それに合わせる形で海蛇諸共リヴァイアサンの体は凍結し始める。一瞬でも気を抜けば襲われる睡魔に抵抗するリヴァイアサンは、体を畝り頭を振り絶叫にも近い雄叫びをあげ、何とか乗り切る。だが、周囲の海蛇達は抗う事すら出来ずに体を凍らせ次々に海へと沈んでいった。


『何とも悍ましき……悍ましき魔法だ……』


「一緒に眠れば良かったのですが。……では皆さん後はお願いします。私は魔力を使い果たしたので」


「心菜‼︎……助かったわ……っ‼︎」


 ふらふらと下降していく後輩に感謝を述べるルナ。そして地上に居るシュバルム達に心菜の事を任せ視線をリヴァイアサンに戻したルナは、龍膳をサポートすべく全力で魔法を放った。


 一方、心菜による拘束で大きな隙を見せたリヴァイアサンに対し、大技を叩き込んだ凛音とミリアム。その追撃は未だ止まず、2人が担当している方の頭は既に火傷と裂傷で傷だらけとなっていた。


「まだだ‼︎ミリアム‼︎」


「わかってるわよ‼︎『暴風裂砲バスターウインド』‼︎」


「『炎王蓮舞』‼︎」


 ミリアムの放つ『暴風裂砲』は巨大な高圧の乱気流をその内に秘めた球となり、その周囲を何重もの炎の蓮が埋め尽くす。そしてその圧を最高潮に高めた2人は、一気にリヴァイアサンの頭めがけ放った。


「沈めぇぇぇぇっ‼︎」


『ぐっ…させぬ‼︎』


 その魔法の強さを理解したリヴァイアサンは、反対の頭からこれまた巨大な水弾を放つ。だが、その直後に龍膳は上顎を貫く程の掌底を放ち、海に叩きつける。そして放たれた水弾が2人の魔法に当たる刹那ー


「水生木‼︎『表木ヒョウモク喰水生木ガスイセイモク』‼︎」


「もう一丁‼︎木生火‼︎『表火ヒョウカ延焼盛火エンショウジョウカ』‼︎」


 息の合ったコンビネーションで楓が放たれた水弾を木に変え、桜がそれを燃やし2人の魔法を勢い付けた。

 更に勢いの上がった炎風は、凶悪なまでにリヴァイアサンの頭を覆い、その内部を爆発させ全身の至る所に炎を撒き散らせた。更に、ミリアムは海中でも燃えるように風魔法に酸素を大量に含ませていた為、飛び散った火の粉一つ一つが轟々と燃え続けた。

 まさに火の海となった戦場はリヴァイアサンの巨体を尚も燃やし続け、その身を蝕む炎でその怪物は断末魔とも言うべき声をあげる。まさに、圧勝とも言うべきその様子に、2人は思わずハイタッチを交わしその場から離れようと浮かび上がりー


『憎い……この様に知恵を、仲間を使い強くなり続ける貴様らが憎イッ‼︎‼︎』


「なっー」


「二人共危ない‼︎」


 かつてない威圧感を出したリヴァイアサンは、その口から幾数もの超高圧な水弾を放つ。それらは全て凛音とミリアムに向かいー


「金剛の皮膚、最硬の肉体。何人たりとも通せぬ硬さは、剣を断ち切る巌の体とならん‼︎解放せよ、秘術『金剛羅生コンゴウラショウ』‼︎……ぬぅんっ‼︎」


 2人を守る形で割り込んだ龍膳がその全てを受け止め、弾き、防ぎきる。だがそのダメージは途轍もない様で、その身に纏った鬼気を消滅させ苦笑しながら凛音達を見つめる。


「某はどうやら……ここまでの様だ……っ。後は頼んだ。先に休ませていただ……」


「龍膳先輩‼︎」


 気を失う形で墜落する龍膳。対しミリアムは必死に風魔法でその身を受け止め様とするも、慌ててしまい魔力が上手く練り上げれない。だが、そんな焦燥を他所に龍膳の体は突如消え、代わりに同級生のテレパシーが届く。


『龍膳先輩は大丈夫です‼︎ミリアムさん、凛音さんや会長達と共に‼︎』


「ありがとう、霧雨君……わかってる。絶対に勝つわ……‼︎」


 再び立ち上がるリヴァイアサン。その双頭はしっかりと2人を睨み、同等なる敵として初めて相見えたのか油断の隙は一切なかった。


『若き女子よ……強者の頂きを昇り詰めんとする者よ。貴様らを同等なる敵と認めよう。妬ましきその友と共に、かかってくるがよい……‼︎我はリヴァイアサン‼︎嫉妬を司り、人類に嫉妬し、強き者に嫉妬する魔獣なり‼︎』


「へっ、今頃啖呵を切った所でどうもないわ‼︎貴様は『私達』が殺す‼︎ルナ‼︎鈴蘭、楓、桜‼︎手を貸せ‼︎」


「言われなくてもそのつもりよ。今回はその口許してあげるわ。龍膳君の分返さないとね」


「そうね、可愛い後輩だもの。……いや、龍膳君は可愛いの?」


「そんな変な所で悩まないでください姉様。ちょっとピンクのエプロン姿の龍膳君を想像したじゃないですか」


「楓姉それは酷すぎるのでやめて下さい。珍しくこの桜が真面目モードなのに」


 名前を呼ばれた4人は口はいつも通りだがその眼差しは冷たさを感じる程真剣であり、見つめる先は同じくリヴァイアサンの双眸だった。


「他の方は下がって……イギリスと地上にありったけの防衛魔法を。私もこれより本気を出します」


「わかりました……お願いいたします……っ」


 悔しさを感じさせる表情をしながら周囲の魔法使い達は、セルベリアや地上に居るシュバルム達と共に二次災害への配慮として強固な結界を張り巡らせる。

 完全に守られた空間となった結界内で睨み合う双方。双頭対6人。イギリス近郊をかけた勝負の第2ラウンドが開始された。

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