表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ちっちゃな恋とかどうですか?

お幸せに。 僕の、初恋の人。

作者: 雨羽 奏

 「駿くん!」


 空の青色が薄くなって、夕焼けが、もうすぐ沈もうとしている時。

 突然後ろから、名前を呼ばれて、振り返る。


 「杏花音、さん……?」


 「お久しぶり!」


 そこには、腰より少し上まで伸びた髪を、ふわりと一つ結びにしている、杏花音さん__僕の、初恋の人が立っていた。こうして会うのは、何年ぶりだろうか。


 「お久しぶり……で……す……」


 「ん? 駿くん?」


 僕は、杏花音さんの薬指にはめられている、キラキラと輝いたそのリングに気付いて、胸が詰まった。


 「あ……えっと……結婚、したんですね……」


 「えへへ、バレちゃったかぁ」


 髪の毛を指に巻きながら、照れ笑いをしている。


 「おめでとう……ございます……」


 「ありがとう! すっごく良い旦那さんなんだよっ」


 なんて、幸せそうに言うから。


 あぁ、僕じゃ駄目だったんだって、初めから、叶うはずがなかったんだって。


 自然と視線が落ちて。


 「……そう、なんですか」


 「ん……どうしたの? 元気ないね」


 「……あはは、そんな事ありませんよ」


 「そっかぁ、良かった!」


 苦しくて、悲しかったけれど。


 今は、貴女の。笑っている顔が、見たいから。

 

 この初恋に、あの日の貴女に、別れを言いたいから。


 僕は笑って、


 「はい。お幸せに」


 って。


 「ふふっ、ありがとう。じゃーねっ!」


 「はい……」


 ぴょこぴょこと、走り去っていく背中を見送りながら。


 その背中に、今までの思い出を振り返って。


 

 __お幸せに。 僕の、初恋の人。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の諦めの中にある、微かな希望にすがりたい気持ちが印象的でした。 面白かったです! [一言] 誤字報告です。 19行目「あめでとう・・・ございます・・・・」 →おめでとう
2017/07/30 23:04 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ