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契鬼伝説殺人事件  作者: 東堂柳
第九章 終結
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3

「いつから気付いていたんだ。俺が犯人だって」


 たっぷりの長い溜息の後に、瀬堂はもう言い逃れする気はないとでもいうような、諦念や開き直りの思いの込めた言葉を吐き出した。相変わらず力なく動こうともしないが、もはや下唇を噛むことさえもやめ、落ち着いた眼で俺を見つめている。

 俺もまた彼を見て答えた。


「夕月のコテージでの密室トリックがわかった時だよ。俺が言った、電流を流して鍵をかけるっていうトリックは、あまりにも偶然性が高すぎる。例えば、細い鍵の縁に手首を引っかけた状態で扉を閉めるのだって、かなりのバランスが要求されて大変だし難しい。ちょっと手元が狂えばすぐにやり直しだ。それに電気で筋肉が痙攣する現象は、死んでから時間が経てば経つほど起こりにくくなるから、電流を手首に流しても、そもそも起こらないかもしれない。起こったとしても、そんなうまいこと鍵を閉めるように指先が痙攣する可能性は限りなく低い。このトリックが成立するなんてあり得ないと言ってもいいほどのものだ。にも関わらず、現場にはこれが使われたとしか思えない証拠が残っていた。色々調べても見たけど、あの現場に、他の方法で密室を仕立てあげる方法はなかった。

 ここでちょっと状況を分析してみようと思う。

 俺が考えるに、密室トリックには、大きく分けて四つの種類がある。

 一つ目は、所謂物理トリックと呼ばれる、実際にどうにかして外から内側の鍵をかけて密室を作るというもの。

 二つ目は、物理トリックとは反対の位置にある、心理トリックと呼ばれるもので、実際には鍵がかかっていなくて、密室に見せかけていたというもの。

 三つ目が、遠隔操作や自動殺人トリックを使って、犯人は密室の中に入らずにターゲットを殺すというもの。

 そして四つ目が、犯人は密室の中にずっといたというものだ」


 俺は全員の顔を見回しながら、息継ぎをして先を話した。


「今回の密室をこの四つに当てはめようとしてみると、まず遠隔殺人や自動殺人では、あれほど死体をバラバラにすることはできないから違う。物理トリックは、例の電気のトリックしかないが、これもうまくいくわけがない。心理トリックについても、実際に鍵がかかっているのを確認しているから、これもまた違う。となれば、消去法で四つ目の、犯人が最初から密室の中にいた、というのがこの密室の分類になるんだ。

 被害者が犯人、つまり、自殺だったということも考えられるが、これは死体の状況からあり得ない。そうすると残るのは必然的に、俺たちが中に踏み込んだ時、犯人は生きた状態で、まだコテージの中にいたという可能性になる。

 しかし、あの時部屋に入る前から俺たちは一緒に行動していた。つまり、“生存者”の中に犯人はいない。じゃあ外部の人間かというと、これがあり得ないことは既に橋の炎上や発電機の件で示している。ということは、犯人は“死んだ人間”しか考えられなくなる。

 そもそも、あの時夕月はかなり疑心暗鬼になっていて、生存者全員を怪しんでいた。そんな状況で、俺たちの誰かがコテージを訪ねに行ったところで、中に通したりはしないだろう。でも死んだはずの人間だったらどうだろう。

 あいつら全員がグルだったんだ。俺は死んだ振りで命からがら逃げてきたんだ。その途中で逃げ道を見つけた。一緒に逃げよう。そんな風に言われたら、きっと夕月も扉を開けたんじゃないだろうか。どうだ?」


「ああ、全部お見通しって感じだな」


 首を振って苦笑する瀬堂。自らを嘲笑するような笑いでもある。


「英介が犯人なのだとしたら、密室にする理由もわからなかったからね。だけど、あの時犯人がまだコテージの中にいたのなら、話は別だ。多分、不入斗くんの死体が予想外に早く発見され、想定外なことに、俺たちが夕月のコテージにやってきてしまった。まだその時、お前はあのコテージで、犯行の真っ最中だったんじゃないのか?

 それで、俺たちがやってきていることに気付き、慌てて時間稼ぎに全部の扉と窓の鍵を掛けたんだろう。その時に、電気のトリックを思いついて、英介がそれをやって密室にしたということにしようとしたんだろう。切り取った手首の指先をライターか何かで炙って焦げ跡を点けたりして、俺たちにそのトリックが使われたように見せて、そう推理させようとしたんだ」


「まるで全部見られていたみたいだよ。そこまでずばずば言い当てられたら、気味が悪い」


 瀬堂は顔を歪めて、これでもかと皮肉たっぷりに答えた。

 

「ただ、この密室の謎が解けても、まだ死んだ人間の内の誰がやったのか判然としなかった。それがお前だと疑いをかけることができたのは、不入斗くんの遺してくれたメッセージのお陰だよ」


「メッセージだって? そんなものどこにあったんだ?」


 彼はメッセージという言葉に、強く反応した。そんなものが残されていたとは、露ほどにも思わなかったのだろう。


「あの留守番電話だよ。勿論、不入斗くんはお前に気付かれない様に、かなり遠回しに、そして凛さんにだけ分かるように、メッセージを残していたんだ」


 俺はスマートフォンに録音していた留守番電話を、今一度全員の前で再生させた。

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