4
“契鬼”はこのコテージ群の中でも、最も大きなコテージの中にいた。
そのコテージの二階の客室の中に。
部屋の中は暗い。しかし、夜目の利く“契鬼”にとっては、行動への支障にはならなかった。
――このままで終わるわけにはいかない。まだ最後の仕事が残っている――
手首にロープを締められ、身動きの出来ない状況。だが、これならば逆に事を運ぶのは容易くなる。
――コトッ。
“契鬼”はびくりと動きを止めた。廊下から物音が聞こえた気がする。息を潜め、耳をそばだてた。ドアを小さく開いて確認する。廊下の明かりはついていないが、誰もいないことはわかる。もうその音も聞こえなかった。
――気のせいか――
“契鬼”はベッドの傍に置かれたスマートフォンを使って、遺書を書き連ねた。
その両の掌でロープを強く握りしめる。
その時――、
扉が勢いよく開かれた。そして、“契鬼”は眩しさに顔を顰め、腕で目を覆った。
部屋の照明が点けられてしまったのだ。
――そんな、バカな――
直後、“契鬼”の身体に、何かがのしかかってきた。突然の出来事に、抵抗する間もなく、身体は倒れていく。床に叩きつけられ、そのまま押さえつけられた。
身動きも取れない。今頃になってようやく身体をねじって脱出しようと試みたが、虚しく終わった。
――ああ、これまでか――
“契鬼”は項垂れた。そして、その眼前に、二本の脚が近寄ってくる。“契鬼”は顔を見ようと見上げたが、首が動かないので下半身しか視界に入らない。
「さて、そろそろこの事件の、本当の解決篇の幕を上げるとしようか?」
それは、“契鬼”には聞き覚えのある声だった。




