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「そうか、わかったぞ」
何がわかったというのか。
夕月の次の発言を息を凝らして待つ。そして彼は、とんでもないことを言い出した。
「お前ら全員グルなんだろう」
「はあ?」
予想を超えた言葉に、一瞬呆けたような顔になったしまった。
「考えてみりゃ、俺がコテージにいる間に殺人が起こってるんだからな。そう考えりゃ、全部うまくいく」
「何ですって」
心外だとばかりに不愉快そうに顔を歪めた乃亜が、夕月に盾突こうとしたのだが、彼は聞く耳を持たずに捲し立てる。
「天司や瀬堂を殺して、バラバラにする時間が足りないって言ってたけど、それは一人で解体しようとしたらの話だろう? お前らが全員で分担してやってたら、もっと短時間でできるはずだし、そもそも、瀬堂の時の話なんて、俺は見てないんだから口裏合わせて適当なこと言ってたりするかもしれないしな」
否定しようと思ったのだが、思いの外反論する材料が少なすぎた。彼の疑いを間違いだと示すのは、悪魔の証明なのだ。
それに聞いてみれば成程、彼の言い分も尤もである。理性を失い、もっと飛躍した思考をしているかと思ったのだが、案外彼は論理的に考えていた。
しかし、この場で疑心暗鬼になるのは、やはり問題だ。こういう時こそ、一致団結して犯人から身を守るべきなのだが。
夕月はさらに続ける。
「天司に瀬堂に……次は俺か? ふざけんな。お前ら何かに殺されてたまるか」
不安や焦りが顔に表れていた。口は普段から悪いが、顔は冷静を保っているはずの夕月の額には、大粒の汗が流れていた。俺たちを見る目つきも鋭い。
「助けが来るまで、俺は自分のコテージに篭る。来たらぶっ殺してやるからな」
そう吐き捨てると、反駁の暇さえ与えることなく、彼はそそくさと足早に玄関から出ていった。
「私に言わせれば、あいつのほうがよっぽど怪しいもんだと思うけどね」
乃亜は相変わらず、夕月には手厳しい。
「夕月さんの食事はどうしましょうか」
と凛は両手を揉んで気にしているものの、乃亜はやはりきっぱりと切り捨てた。
「どうせ、私たちを犯人だと疑ってるんだから、こっちから渡したって口にするわけないし、気の済むまで勝手にやらせておけばいいのよ」
それから凛は、他の面々にも朝食について訊いたのだが、誰も食べたいと申し出ることはなかった。本当は空腹であったとしても、周りがそんな雰囲気ではないから、空気を読んでいる者もいるかもしれない。
俺自身は何も口にしたくなかった。正直、あまりに寝覚めが悪かったので、起きたときから食欲など何処へやら。そこにこの騒ぎである。もうすっかりげんなりしてしまっていた。
しかし、明るい昼間のうちにやるべき行動はしておかなければならない。
「じゃあ、俺たちだけでも、手分けして不入斗くんを探そうか」
「い、いや、それはちょっと……」
八逆が難色を示した。不入斗との諍いの件もあり、あまり顔を合わせたくないといったところだろうか。
「別に皆には無理にとは言わないよ。ただ、俺は探しに行くよ。彼が何かを知っているかもしれないし、それ以外にも、色々調べたい場所もあるからね」
「お前がそう言うなら、俺も手伝うよ。もしかしたら、犯人に繋がる手掛かりが見つかるかもしれないしな」
英介は乗ってくれた。さらに乃亜も、
「じゃあ、私も手伝おうかな。どうせ、他に何もすることないから暇なだけだし、明るい今なら、襲われる危険も少ないだろうから」
と賛同すると、ええだのううんだのと唸りながら、八逆は頭を掻いた。そして、仕方がないとばかりに、溜息を一つ。
「……皆してそんなこと言うんじゃ、僕もやらないわけにはいかないじゃないですか」
「いいんだよ? 無理しなくて」
「大丈夫です。やりますよ」
意地悪げに俺はにやにやしながら訊いたが、八逆はもう決めたようだった。
「……まあ、それにその、なんていうか、中学の時の因縁を未だに根に持ってるなんて、子供っぽいですから」
これを機に、過去に踏ん切りをつけたいようだった。
と言っても、何も知らない俺以外の三人は、彼の言っている意味が分からず、ぽかんとしていたが。
「じゃあ、全員で手分けして不入斗くんを探そう」
「ありがとうございます、皆さん」
凛は今まで以上に、深々と頭を下げていた。
そんなこんながあり、俺たちは俺と英介、八逆と乃亜と凛の二グループに分かれて、不入斗の行方を捜索することになったのである。




