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――あの慌てよう。実に愉快だ。彼らのすべては自分の掌の上にあるのだ――
“契鬼”はほくそ笑んでいた。
そして“契鬼”は、点在するコテージの中でも、一際大きなそれの窓の中に、次なる獲物を捕捉した。獲物はコテージの中に篭城してしまったが、“契鬼”にとっては、これもまだ想定の範囲内のこと。殺ろうと思えばどうにでもなる。
――次は奴だ。あの顔が苦悶に歪む姿を、この目で早く見てみたいものだ――
――!
一瞬、“契鬼”はターゲットと目線がかち合ったような気がして、身構えた。
しかし、それはただの勘違いに過ぎなかったようだ。ターゲットは、窓を通してひっそりと“契鬼”に観察されていることなど、知る由もない。
――ああ、早く奴をこの手にかけてやりたい――
血に飢えた“契鬼”はそればかりを考えていた。




