洞穴の先客
「うぅ…くそさむいみょん…」
みょんは正直にドスに感謝していた。ドスの子供を殴るなど普通は即処刑だ。生きているだけでもありがたい。
神はまだ自分を見捨ててはいない。きっとそうだ。現に今生きているのだから。
こんな状況の中でもみょんは慌てていなかった。この冬を乗り切るには他の群れに混ぜてもらうか、洞穴を見つけ、そのまま冬を過ごすかだ。
…とりあえず腹が減った。そこらへんのゆっくりか、夜になればるーみあかなんかがでてくる。そいつらを倒して食べればいいだろう。
そうぼんやりと考えていると洞穴が見えてきた。
「ありがたいみょん。もう暗くなってきたし
今夜はここで休むみょん」みょんは洞穴に入るととりあえず火をつけようとした。すると
「…誰かいるみょん?」
みょんは「はくろーけん」をくわえ洞穴の奥を探った。
そこにはドスほどのおおきさのれみりゃがいた。
髪から所々白髪が見えるところ相当な老ゆっくりであろう。ここまで老いたゆっくりも珍しい。みょんはそう思いながら呆気に取られた表情でれみりゃを見つめていると
「なんじゃ、人の顔ジロジロみて。わしの顔になんかついとるんかいな」
しわがれた、だが威厳のある声でれみりゃは言う。
なんてことだ。ここはこのれみりゃのお家だったのか。だがれみりゃ一匹くらいなら…
みょんはそう思っていると
「安心せえ。わしはお前さん見たいな若い衆はもう食わんわい」
「ほ、本当かみょん?」
「本当じゃわい。年寄りの言うことくらい信じろ、ぼけ」
少しカチンときた
れみりゃは後ろからゴソゴソ何かを取り出すと
「くえ」
みょんに小さい果実を投げた。
「…これは?」
「お前さんは久しぶりのお客さんなんじゃ。少しくらいおもてなしさせろや」
「これに毒とか仕込んでる可能性もあるみょん」
「疑り深いのぉ最近の若い衆は。ま、食いたくなきゃ食わんでええ」
みょんは迷った。この果実に毒が入っていて、今晩の夕食にするつもりなのかもしれない。だが、食欲には勝てなかった。
みょんは静かに果実を齧った。
果実独特の爽やかな甘さがみょんの口内に染み渡る。
みょんはあっという間に平らげた。