【09】
私は、エレナに詰め寄る。
のほほんとしたエレナの答えは完全にズレている。天然もここまで来ると記念物モノだ!
「本当にシアちゃんは私の娘なのよ~」とか「姉妹に見えるって?嬉しいわ~」とか。
あのね、そうじゃなくて!
埒が明かないってこういう事?このままじゃ、日が暮れるよ。
それなのに、怒る気が削がれる。
ニコニコ~っとした微笑みには、全くと言っていいほど邪気が無い。
こうなる事が分かっていたのか、アトレイシアが口を開く。
「大巫女は光の神に選ばれし者。この神殿内に居る限り不老不死なのです。よって、容姿も変わらないのです」
――え?今…、なんて?不老…不…死…?
「不死…?」
身体が硬直する。喉がゴクっと鳴る。
だって、この世界に、この異世界に“不死”が存在するなんて。
――信じられない!!
「私は26歳です。母上は私を26の時に産んでいるので――」
「いやン!シアちゃん!わたくしの歳をバラしちゃダメ~~!!」
う、うそ?これで、50は過ぎてるの?
外見はともかく、中身はそれなりにそれらしくしなさいよ!って、それ以前にこれで大巫女だなんていいの?
眩暈がする。座っていても宙に浮かんでいる感じ。
「――コウ!コウ!!大丈夫?しっかりして!!」
誰かが私を呼んでいる。この声はグリンダリア。
「女王陛下!コウは昨夜、倒れているのです!どうか、今日はここまでに!お願いします!!」
「だ、大丈夫だから…」
と、白金の髪の少女に答える。
「で、でもっ!」
すっと、静かに席を立ったのはエレナ。
「ここまでにしましょう、アトレイシア。貴女には悪いけど」
「いいえ…」
同じく、静かに席を立って答えたのはアトレイシア。
結局、本題には触れる事も無く終わってしまった。
きっと、女王は無駄な時間を過ごしてしまったと思ってるに違いない。
でも、私の頭の中には、あの言葉が――。
“不老不死”
私には、、奇跡のような言葉だ。
死ぬ事なんて無いんだよ。何も恐れるものも無く、生き続ける事が出来る。
羨ましい――妬ましい――。
そんな風に考えてしまう私は、浅ましいのだろうか。