【08】
「本当に、大丈夫ですか?」
と、あれから何度も何度も尋ねてくる白金の髪の見習い巫女。
私は今、この国の国王自らがこの神殿に、しかも私にやって来るというので、神殿内で一番広く豪華な部屋で控えている。
私の前には大巫女エレナ、隣にはグリンダリア。
話なんて聞いた所で、何も出来ないに決まっている。
きっと、とんでもないお願いをされるに違いない。
私にはそんな都合の良い奇跡の力なんて無い。
どうやって断ろうかとそればかり考えを巡らせていた。
しばらくして、5~6人の側近を伴って入って来たこの国の国王陛下。
グリンダリアが、エレナが席から立ち上がる。
私も彼女達に倣って立ち上がる。
勿論、国王様は上座に座り、側近達は後ろに控え定位置に着く。
「どうぞ、お座りになって」
そう言ったのは、この国の王。
女の人だ。だから…この場合“女王陛下”と言うべきかな。
「初めまして、コウ。私は、アトレイシア。宜しくお願いね」
私もきちんと挨拶ぐらいは、と思って女王の方へ顔を上げる。
「っ?!」
え?
そこに居るのは、金茶色の髪に深緋色の瞳を持つ女性。
見比べてしまう。
大巫女と女王の顔を。しかも、交互に見てしまう。
ゴホンっと咳払いをする側近の一人。
あっ!私、なんて失礼な事を!!人の顔をジロジロと!!
でも、だって、同じ顔をした人が目の前に居て――。
「母上、話はされたのですか?」
「う~ん、どうだったかしら~?」
なっ?母上?どう見たって姉妹でしょう?って、言うか双子!!
「コウ、シアちゃんはわたくしの娘なのよ~。若い頃のわたくしにそっくりでしょう~?」
満面の笑顔を浮かべてるエレナ。
額に手を当てているアトレイシア。
小さく溜め息を漏らすグリンダリア。
「ちょ、ちょっと、エレナ!母娘って嘘でしょう?」
いくらなんでも、そんな見え透いた嘘には騙されません!!
私の隣に座っている菫色の瞳を持つ少女が私の袖を引っ張っている。
「本当に親子なんです。大巫女様は女王陛下の母上様です」
「え?だって…」
私一人が興奮して、パニック状態。
だって、有り得ない!!
子供と同じ歳にしか見えない母親だなんて!!