【62】
「――どうだ?具合は?」
「…たぶん、もう良くならないと思う」
シュカは「そうか」と答え、ゆっくりと言葉を選ぶような感じで話し始まる。
あの後の事を――。
あれほど長く降っていた雨も上がり、私達は歓声の中、神殿に戻って来た。
でも、私の身体は冷たい雨に晒された為、その夜高熱で意識混濁状態が数日続いたという。
「ねぇ、シュカ。心配した?」
「………」
自分でも意地悪な質問だと思う。
「ねぇ、シュカ。私が居なくなったらどうするの?」
「………」
いずれ来る、そんな日が。その時、シュカは?
「ねぇ、シュカ。私が居なくなっても大丈夫よね?」
「………」
肯定して欲しい。そして否定もして欲しい。
そんな相反する気持ちが私の中で渦巻いている。
コウが居なくなるなんて、耐えられないと――。
コウが居なくなっても、何も変わらないと――。
でも、シュカは何も答えてくれない。
私は話し続ける。
「でも、私は心配だよ」
「………」
「何処にも行かないで欲しい」
「………」
「シュカが居ないと、私は――」
「もう、何も言うな」
私にこれ以上何も喋らせないかのように塞がれる唇。
この想いだけはシュカには告げないと決めていたのに。
常に強くありたいと思っていた。身体が弱い分、心だけでもと。
なのに、この溢れてくる想いは自分でもどうする事も出来なくて。
だからこそ、この限りある時間の中で私に出来る事は。




