【52】
そして、真夜中。
ガバっと起き上がる。
私は夢から覚め、肩で息をしている。
過呼吸になるんじゃないかと思い、意識的に深くゆっくり息をする。
心臓は激しくドクドクと打っている。
いまだ夢の中にいるような感じがして、目だけで周りを確認する。
夢…?本当に今の夢?
私が見た夢は…。
“シュカを殺す夢”
何故?こんな夢を見るの?
シュカは永遠で、私は――そうじゃないから?
それとも、叶わぬ願いを持ってしまったから?
手のひらに目を落として思う。
この両手にはまだ生々しい感覚が残っている。
知らずに涙が溢れてくる。
「――コウ」
暗闇から声が聞こえてくる。人影が揺れる。
声だけで分かる。
「――シュカ」
少し涙声。早くこの涙を止めようと思うのに、なかなか止まらない。
悪夢を見たという恐怖から、悪夢から覚めたという安堵から止め処なく頬を伝う。
近付く影は私を包み込んでくれる。
優しく、まるで壊れ物でも扱うかのように。
「――どうした?」
「な…なんでも…ないの。夢を…夢をね…見たの。情けないよ、夢を見たぐらいで泣くなんて…」
「泣きたいのならば、泣くがいい。コウの思うままに」
「だ、大丈夫!大丈夫だから!」
そう言うと、すっと離れるシュカ。
コポコポと音がする。グラスに水を注ぐ音。
そして、目の前には水の入ったグラス。
「――飲むか?」
「う、うん。ありがとう」
伸ばした手が震えている。とてもじゃないけど持つのは不可能。
私は水を諦める。
「シュカ…、ごめん。やっぱり、要らない」
コトンとサイドテーブルにグラスを置く音。
ただ、何も考える事が出来なくて、闇に浮かぶのは夢の中の映像。
覚めても少しも薄れる事無く鮮明に再現されている。
自分の顎に誰かの手がかかっている事も、顔の向きすら帰られている事に気づいた時には私の喉はコクンと鳴っていた。
え…?
今、私、何か飲んだ?何を飲んだ?
唇に柔らかく触れるもの。口の中に広がる冷たい液体の残り。
えっ?シュカ?
「もっと、飲むか?」
「――っ?!!!!!」




