【05】
結局、話をしてくれたのはこの見習い巫女のグリンダリア。
私の質問に的確に答えてくれる。
私の事を“アマビト”とは呼ばずに“コウ”と呼んで欲しい、と言うと素直に聞き入れてくれた。
“アマビト”とは、天からやって来るから、そう呼んでるらしい。
そして“アマビト”を召喚出来るのは大巫女だけ。
その大巫女は私を召喚したものの一日勘違いしていたとか…。
召喚するにはそれなりに理由があって、このヴェルドゥール国を救って欲しいとか…。
「ちょっと、私には特別な力なんて無いし、言うほど知恵も無いし、何が出来るかなんてっ…」
「いいえ、大巫女様に選ばれたのです。コウには力が有る筈です!」
きっぱりと言い切られる。
その迫力に私は何も言い返せなくなってる。
ふと、目を手に持つ紙の袋に落とす。
あ、そう言えば、薬、まだ飲んでない。
「ねぇ、グリンダリア。お水欲しいんだけど…」
「お水ですか?」
話が急に変わったので不思議な顔をしてる。
菫色の瞳をより大きくして私を見てる。
薬を口に含み、用意してくれた水で胃の中に流し込む。
「その白い種みたいなのは、何ですか?」
グリンダリアの問いに私は簡潔に答える。
「これは薬だよ」
「クスリ」
「そう、私、病気なんだ」
ずっとこの場に居るエレナは何を考えているのか、静かにお茶を飲んでいる。
こちらの話を聞いてるのか、聞いていないのか。
我、関せず、といった感じ。
グリンダリアは一瞬、菫色の瞳を翳らせたのを私は見逃さなかった。
だから――。
「この薬が有るうちに、元の世界に帰りたいんだけど」
「そ、それは…」
言葉を濁すグリンダリアの瞳は、大巫女に視線を移す。
その視線に気付いたのか、深緋色の瞳をゆっくりこちらに向け、そして、言った。
『貴女次第』と――。