【46】
騒然とする診療所。
当然だ、『魔獣』がやって来たのだから…。
こうなる事は分かっていた。でも、女王陛下の手前騒ぎ立て逃げ惑う事も出来ないって所かな。
そして、奥には病室。
先日、ロイさんがシュカの力で、城を攻めた時に負傷した人達が治療中のはず。
シュカの姿を見た途端、真っ青になり恐怖に震える者も。
ここで、失敗なんて出来ない!
大きく息を吸って、ゆっくり吐く。
目を閉じて、手のひらに気を集中する。周囲から驚きの声が上がる。
私の手のひらには、青き再生の炎が燃えている。
私は怪我をした人の側まで行き「大丈夫だから」と言葉を掛け傷に炎を当てる。
傷は、跡形も無く消えてしまった。
動かす事すら出来なかった傷があったかなんて嘘のよう。
誰もが、何かに化かされているんじゃないかっていう顔をしている。
私は言う。
「これが、このシュカの力です。破壊の力もある。でも、再生の力もある。正しく使いさえすれば…」
私は、アトレイシアの前に立つ。
「お願いです。改めて、シュカの事を私に任せてくれませんか?」
「…そうね、今は他に頼める者も居ないでしょう。コウに託します。良き方向へ進む事を願うわ」
アトレイシアは、少し複雑な表情でシュカを見つめていた。




