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結局、あの母親に凄く感謝されてしまった。
“この名前に決めました!”なんて言われてしまう。
私としては、ちゃんと旦那さんと相談してからにして欲しい。
「でも、良い名前だと思いますよ」
そう言ってくれるのは、グリンダリア。気休めでも嬉しかったりする。
「そう?仏語で…」
「フツゴ?」
「えーっと、つまり“avenir”って“未来”って意味なの。あの赤ちゃんに、素敵な未来があるといいなぁっと思って…」
「大丈夫です!きっと、父親もその名前気に入りますよ」
「…だと、いいけど。でも、名前って存在するのに必要なものでしょう?だから、――!!」
この瞬間、私の頭の中のモヤモヤが消えていく。
「どうかしの?コウ?」
「ご、ごめん!ちょっと、急用が!」
そうだよ!どうして気が付かなかったんだろう!
『魔獣』というのが、名前のはず無い!
こんな簡単な事…。
『魔獣』が望んでるものは。
『魔獣』が欲しいものは。
それは“名前”だ!!
私は急いで神殿へ、『魔獣』が居る私室へ戻った。




