【37】
私の部屋には『魔獣』が居る。
獣姿で部屋の隅で目を閉じて眠っている…?
『魔獣』を封印出来るのは、大巫女のみ。
その大巫女は、今はまだ居ない。
“私が預かる”なんて宣言したからには――。
「ねぇ…」
私は『魔獣』に声を掛ける。
「………」
予想通り、返事は無し。
でも耳はピンっと立って、こっちを向いている。
だから聞いている、聞こえていると思う事にして、もう一度声を掛ける。
「ねぇ“死”が無いのは、まぁ、理解出来ない事もないけど“生”も無いってどういう事?」
「………」
やっぱり、返事は無し。でも続ける。
「生きてないって事はないでしょう?だって、こうしてここに居るんだし」
「………」
ふぅっと息を吐く。
「ねぇ、“契約者”になるにはどうすればいいの?」
「………」
「――何を訊いても、無駄なの…?」
何も答えてくれない『魔獣』。
もしかして、本当に眠っていたりする?
仕方なく、ベッドの上にある毛布を取る。
私は『魔獣』にそっと掛けて上げた。
黄赤色の瞳が薄く開く。
「あ、ごめん、起こしてしまった?」
「――何だ?これは?」
「え?これって“毛布”だけど…」
「………」
折角、掛けて上げたのに、毛布をバサっと落として立ち上がって行く。
私は毛布を拾ってベドに戻す。
「最初の男は“声”」
え?突然、何の話?
「アルスとかいう男は“心”」
だから、何の話なのよ?
「我に与えよ、我の望むものを。さすれば、契約は成立だ」
「え?――で、何が欲しいの?」
「この世の生まれるもの全てが持つものを我に」
「?――何それ?」
「分からなければ、それはそれでいい」
「うっ…!!」
何なのよ~!!なぞなぞ?クイズ?
意味が分かんない!!
もう、嫌になる!!
だって、全然分かんないんだもん!!




