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【31】
『魔獣』
それは遠い昔、当時の大巫女がアマビトの協力を得て封印の神殿に封印したと言う。
突然、この世界に現れた『魔獣』は赤き破壊の炎を操り、この世界を破壊に導くもの。
不死の肉体を持ち、永遠の時を彷徨う。
今、その『魔獣』が私の目の前に居る。
これこそ、私が求める答えを持つ者なのかもしれない。
“不死とは?”
“死なないって、どんなもの?”
私は無意識に一歩踏み出している。
「――っ!?コウ!!」
私の耳にはグリンダリアの叫ぶ声が。聞こえてる、聞こえてるけど…。
「――貴方は、どこから来たの?」
「………」
「どこへ、行くの?」
「………」
何も答えてはくれない。言葉が分からない?
それとも、喋れない?
「死なないって、本当?」
『魔獣』の黄赤色の瞳が僅かに揺れる。
「――我は……過去へ未来へ、時の回廊を彷徨うもの」
「え…?」
「我に死は無い。故に生も無い」
「……そ、それって、どういう意味?」
私はさらに一歩進む。
知りたい!知ってみたい!!
焦る気持ちを抑え、私は『魔獣』の言葉を待った。




