【18】
「どうした?ぼーっとして。ま、40も過ぎれば昔の面影無しって事か?それとも、俺の事忘れた?」
「――え?…そ、そんな事…」
「おまえは、ちっとも変わってないな。あの頃のままだ」
「そ、そう?そうかな?あ、ありがとう」
自分でも間の抜けた返事だと思う。
しかも、お礼まで言ったりして…。
大巫女は神殿内に居る限り不老不死だもの。
外見が変わる事は無いし、変わってたりしたら――その方が問題よ。
「それより、今日は何事なの?今まで音沙汰無しだったくせに。いきなり――」
「エレナに報告したい事があってな」
報告?
わたくしが“何かしら?”と思案していると、菫色の瞳を細くしてフっと笑う。
その笑顔も変わらない。昔からロイはそうやって笑う。
「俺、結婚して、子供が一人。女の子で名前はグリンダリア――」
結婚?子供?
ロイはまだ何か話し続けてるけど、もうわたくしの耳には届かない。
息が出来なくなるほど、喉の奥が干からびて……。
「――エレナ?」
「…え?…あ、おめでとう!ロイが結婚ね~。もう、お父さんなのね~」
わたくしは笑顔を見せた。きっと、あの頃と変わってない笑顔だと信じて…。
なのに、一瞬にしてロイの顔から表情が消える。
「相変わらず、エレナは嘘が下手だな」
「……え?」
「エレナは心にも無い事を言っている、と言ってるんだ」
「どういう意味?わたくしは素直に貴方の“報告”に対して祝福の言葉を――」
嘘?嘘ですって?
どうして、そんな事を言うの?
幼馴染みの幸せを喜んでいないとでも言うの?
わたくしは、貴方が幸せなら全てそれでいいと思ってる――そう、思いたいのに…。




