「この国貰うことに決〜めた」
半年前。
ザースと呼ばれる世界には簡単に分けると人の国と魔王の国の2種類の国がある。人同士、魔族同士、時には人と魔族の戦争がしばしば起こっている。
そんななか、一番大きな面積を誇るシラユレア大陸が極北西部、絶対王政国家のザグナンド国は僅か一日にして王が倒された。
元々小国だったザグナンドは近頃急激に力を増しており、神々の武器を扱う者までいた。その結果周囲の国家はそれを恐れ同盟を組むだのその条件は飲まないだとかなんだかんだやっているうちに次々と支配されていった。
豊かな土壌であるが重税を課し、豊富な農作物も幾どが持っていかれてしまった。結果民は苦しみ、飢え死にも起こることがあった。税を出し渋るものならば兵士が脅しに来る。それでも出さないと言うのならば一家皆殺しにしていた。
村で抵抗しようしようものならばその村ごと滅ぼされた。
恐怖支配。
国の中では抵抗することは誰もが諦めていた。
新たな芽は出る前に摘まれる。
しかし国の外に居る者は。
この世界にやってきた少年は違った。
ザグナンドに入り、兵が居ない村に来た時にこう言った。
「これからこの国貰うことに決〜めた」
誰もが馬鹿にした。誰もが関わろうとしなかった。
親切に「命あるうちに出国しときなさい」と言う者も居た。
返す言葉は「わかった」でも「それでも」でもなく「僕の命ってあるようでないようなものです」だった。
呆れて声をかけた人は自分の仕事に戻っていった。
少年は嗤った。
□ ■ □ ■ □
翌日。天気は快晴。洗濯日和。
嬉々としながら少年は、人々に哀れむ目で見られながら城に向けて歩き出す。
腰には刀の鞘が一つ、剣が一つで計二本下がっていた。
門番が立つ白昼堂々、単身城に殴り込んでいった。
軽そうな服装に身を包み、歩きながら所持している得物を軽く右、左と叩いた。
門番が不審な目を向ける。距離にしておよそ30m。
少年は立ち止まり、声を上げた。
「あ〜あ〜!聞こえてます?まあ聞こえてなかったらそっちが悪いってことで。今から、この国ください!」
は?
その言葉に門番の2人は一瞬理解に苦しんだが一拍遅れて激昂した。
伝令が走っていった。
「な、なんだ貴様は!ガキだからといってそんな言葉許されるわけではないぞ!」
「命乞いをしたってもう遅いっ!死んで後悔するのだなっ!」
「あ〜あ〜いいよそうゆーの。で、通してもらえます?その方が楽だし・・・っておっと」
素早く距離をつめた2人の兵士は巨大な標準装備のハルバードを振り下ろした。二本の大剣が交差している紋章が先端の鎗の根元部分に描かれている。かなりの威力を誇っており、地面に当たるとそこに大きな亀裂が広がった。軽く避けられているためだ。
少年は避けつつ2人を視た。
ガイア Lv67 マロウス Lv65
ふーん。
少年は落胆した。
「これ避けたんで通してもらえますか?」
返答はブォン!という風斬り音。横薙ぎの攻撃を再び避け、ようやく刀に手をかけた。
「やれやれなぁ・・・スキル発動。【不殺】」
真っ黒なオーラが出てきた。刀も漆黒。中二病じゃないよ?
貫こうとして来る門番のハルバードの軌道を逸らし、踏み込んで刀を鎧ごと突いた。
吹き飛び踏み向き様に後ろに居る門番も切り払った。そして胴をパックリ逝く・・・ことはなく、刀はただ通り抜けただけ。傷跡を残さなかった。突き飛ばされた門番も傷は擦り傷くらいで刀による傷は一切無かった。
ふぅ、とため息をつくと少年は門を蹴り開け、ゆっくりと城の中へと入っていった。
それと同時に怒声が『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』』』』』城中に上がり、城をビリビリと振動させた。
後書きではスキル【】の解説をしたりしなかったりします。
章の終わりでもう一度スキルの解説を行うつもりで居るのでどうぞよろしく。
【不殺】ころさず
封印系
刀にかかった呪いから派生して発生したスキル。
対象は使用者に対してのみ。
発動中はいかなる攻撃を行っても峰打ち状態となり、相手の命を取ることが無い。
さらに傷を負わせずにダメージだけを与えることができる。
死亡以上のダメージを負った場合は強制気絶となる。
そのあとは気絶が覚めるのを待つだけ。