俺の誕生日
俺の誕生日なんてアニメの声を有名人が担当するぐらいくだらない事だ
俺の周りの人々なんて、俺の誕生日はどっかの知らないパン屋のメロンパンが百万個売れたと同じぐらいのくだらない事件に等しいと俺は思う。
8月8日、この日は俺の誕生日である。
幼稚園から小学校低学年まではパーティーなんど開いちゃって親戚を呼んでほれ金やる、ほれ金やると千円札をどんどん受け取った記憶があるが、これもいい思い出だと思えばいいだろう。
それから俺の誕生日を誰からも気づいてもらえなくなったのは、そんなに時間は経たなかった。
小学校高学年、そのころの俺は反抗期だったのだ。
親に対しても『だまれ』と言っていた自分に誰がハッピーバースデイと言うのだろうか。
そんな時、悲しい事件が発生した。
まさか、俺の誕生日にあんな事が起こってしまったとは。
中学2年の8月8日、その時の俺は金が無くて、毎年誕生日にもらえる祖母の金が嬉しかった。
俺はさっそくばあちゃんちへ。
ばあちゃんは一人座っておもいっきりテレビのみのもんたがクオカードを配っているのを見ていた。
俺がいる事は知っていたが、何も気づいてくれない。俺の誕生日を…。
「あのぅ、おばあちゃん」
「何!!(怒り気味)」
「いや、なんでも」
何でキレるんねん!!俺はジェスチャーで突っ込み家へ帰った。
家へ帰ると、異様に飲み過ぎている父と酒にメチャクチャ弱い母がテーブルに伏せていて、その横に酒を飲まされたのか『ミミズだぞ〜』と言ってクネクネしてる弟。
ハムスターに足でも噛まれたのか片足を持って跳ねている姉。
満足感タップリの顔をしているハムスター。
何なんだ、この一家。
息子の誕生日に家をこんな状態にしているし、弟はもろミミズより蛇に見えるし、姉の左足の親指が妙に赤いし、すごく訳わかんない状況だ。
「ウィ。今丑三つ時かぁ?」
深夜っていえばいいのに、丑三つ時って言葉を言う母が起きてきた。
「おぅーー!!チャップリン!!」
俺チャップリンじゃないよー。よく覚えてねー。
「お化け怖いよー」
訳分からん展開で急に泣き出した弟を見て母が大爆笑して父が寝言で『おらは空なんか飛べるんじょー』意味不明な日本語を吐き散らかして、姉は人形の胸ぐら掴んで人形にケンカを売っていた。
俺はその時、分かってしまった。
こいつら全員、飲んでいる。
酔っている。
飲んでない状態で人形にケンカを売っていたら、俺はタクシーを呼んで精神科に連れていくであろう。
「おい、ウォーリー」
違います。
「だから俺はちげぇって」
「…ゲロッパ!!」
母は両手を上げて叫び、満足気な顔をした。俺ははぁ?と言いたくてたまんなかった。
「おい、ウォーリー。実はよ、あんた家の子じゃないよ」
えーーーーー!?何言うの!?いきなり。
姉が『メロンパンチ』と弟を殴っているのを横目で見て俺のことをウォーリーと呼ぶ母の話を聞いてみることにした。
「実はよ、あんたはあたち(?)の腹の中から出てきたんだよ!!」
はい、家の子決定〜♪なぜか母は涙ぐむ。
「あんたなんか産まなきゃよかったよ」
もし母親が酔っ払ってても母親からその言葉を聞くとどれだけショックか分かるはずだ。
弟から『でてけでてけゲフフ』と笑ってる中、俺は家から出ていった。
その時の持ち物は、電池一個のケータイ。
金(2000円ぐらい)、ばあちゃんの家でもらった和菓子二個。
まああとはチャリもあるし、好きなとこへ行くか。
ピーと、聞きなれた音。
もしや、ポケットからケータイを取り出すと、充電してくださいという表示が…。
俺は崩れた。
もう連絡手段は無しかと、まあいつもケータイは携帯してないしいつもの事だ。でも充電器持ってくればよかった。
俺はチャリを発進させ、近くの公園へと向かった。
その公園、遊園地とか調子乗ってるけど、ブランコ(三台もある)とすべり台とグルグル回るやつとジャングルジムしかない遊園地がどこにある?という話になる。
俺はとりあえずグルグル回るやつの後ろに隠れた。思いっきりバレるけどね。
しばらくしてると、日も暮れていき、カラスも鳴きまくっている。
ここで寝るかと思って寝転がった。
頭に当たる感触は気持ち悪いが、冷たくて気持ちいい。夏にはちょうどいいと俺は思う。
すると、誰かの叫び声がかすかに聞こえてくる。なんなんだ?
「○○〜〜〜!!!!」
俺の名前だ。あれはまさか…。
「○○〜〜〜!!」
父だ。飲酒運転じゃないのか?
弟がまだ酔ってるのか『ヘベロン、ヘベロン』と言いながら窓に体を出している。来るなよ。弟。
俺は父に名前を叫ばれるのも弟に『ヘベロンヘベロン』て言われても困るから俺はいそいそと公園を出て、『俺はここだ!!』と叫んだ。
最終的に家族全員で土下座をし、翌日、2万を封筒に入れて置いてあった。
後でわかった事だが、弟はチューハイを5缶ぐらい飲んだらしい。
なぜ家族全員飲んでたのかわからないまま今に至るのだった。